文献情報
文献番号
201415101A
報告書区分
総括
研究課題名
VHL病及び多発性内分泌腫瘍症の診療標準化と患者支援,新たな治療法開発の研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-066
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
執印 太郎(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門(泌尿器科学))
研究分担者(所属機関)
- 櫻井 晃洋(札幌医科大学 医学部遺伝医学)
- 福嶋 義光(信州大学 医学部遺伝医学・予防医学)
- 鈴木 眞一(福島県立医科大学 医学部甲状腺内分泌学)
- 内野 眞也(医療法人野口記念会野口病院)
- 小杉 眞司(京都大学 大学院医学研究科健康管理学)
- 岡本 高宏(東京女子医科大学 内分泌外科)
- 今井 常夫(愛知医科大学 乳腺・内分泌外科)
- 篠原 信雄(北海道大学 大学院医学研究科腎泌尿器外科)
- 矢尾 正祐(横浜市立大学 大学院医学研究科泌尿器分子遺伝学)
- 菅野 洋(横浜市立大学 医学部脳神経外科)
- 宝金 清博(北海道大学 大学院医学研究科脳神経外科学分野)
- 西川 亮(埼玉医科大学 国際医療センター脳神経外科)
- 夏目 敦至(名古屋大学 大学院医学系研究科脳神経外科)
- 倉津 純一(熊本大学 大学院生命科学研究部脳神経外科学)
- 米谷 新(埼玉医科大学 医学部眼科)
- 福島 敦樹(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門(眼科学))
- 石田 晋(北海道大学 大学院医学研究科眼科学分野)
- 西森 功(西森医院)
- 伊藤 鉄英(九州大学 大学院病態制御内科学)
- 田村 和朗(近畿大学 理工学部生命科学科遺伝医学)
- 長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部小児科学)
- 齊藤 延人(東京大学 医学部脳神経外科)
- 中村 英二郎(京都大学 医学研究科メディカルイノベーションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL)は優性遺伝性希少難治疾患で幼児期より一生涯で腎腫瘍、副腎褐色細胞腫、膵神経内分泌腫瘍と中枢神経系に腫瘍・嚢胞を発症する。多発性内分泌腫瘍症(MEN)は優性遺伝性の希少難治疾患で副腎褐色細胞腫、甲状腺髄様癌、副甲状腺機能亢進症、下垂体腫瘍、膵臓消化管内分泌腫瘍などを生涯に多数発症し、両疾患とも治療により生涯のQOLが悪い。本研究では共通特徴を持ち多彩な病態を示すVHL、MENで診断基準や重症度分類、診療ガイドライン(GL)を作成・改良し、登録症例のデータ解析を行い、一般医療者・市民にこれらの普及する活動を行い、VHL、MENの医療水準の向上を目的とした。
研究方法
1.重症度分類の作成・公開・改訂
VHL:日本人患者の臨床像の解析結果を踏まえ、日本の医療体制に則した診断治療指針、重症度、治療アルゴリズムを改訂した。
MEN: データベースで得られた日本人患者特有の臨床所見や海外からの論文報告の内容を反映させた本症の重症度分類を作成するため、原案を作成し、模擬患者で試験評価を行った。さらに日本内分泌学会および日本内分泌外科学会の評価部会で査読を受けて修正をした。
2.VHLでは難治例に対しての遺伝相談、診療と経過観察を行った。
3.MENでは患者の遺伝子変異データベースを更新・充実するため、新規患者や血縁者の遺伝学的検査を引き続き推進した。全国の専門医に、学会や研究班ホームページ(HP) (http://men-net.org) を通じて症例登録を行った。登録症例の症状や性差解析を行った。
4.両疾患について市民公開講座を行い、病気の概要、診療GL、重症度分類の普及に努め、新聞報道などで疾患の国民への理解に努めた。
VHL:日本人患者の臨床像の解析結果を踏まえ、日本の医療体制に則した診断治療指針、重症度、治療アルゴリズムを改訂した。
MEN: データベースで得られた日本人患者特有の臨床所見や海外からの論文報告の内容を反映させた本症の重症度分類を作成するため、原案を作成し、模擬患者で試験評価を行った。さらに日本内分泌学会および日本内分泌外科学会の評価部会で査読を受けて修正をした。
2.VHLでは難治例に対しての遺伝相談、診療と経過観察を行った。
3.MENでは患者の遺伝子変異データベースを更新・充実するため、新規患者や血縁者の遺伝学的検査を引き続き推進した。全国の専門医に、学会や研究班ホームページ(HP) (http://men-net.org) を通じて症例登録を行った。登録症例の症状や性差解析を行った。
4.両疾患について市民公開講座を行い、病気の概要、診療GL、重症度分類の普及に努め、新聞報道などで疾患の国民への理解に努めた。
結果と考察
VHL
腎腫瘍、褐色細胞腫、膵神経内分泌腫瘍、内耳リンパ嚢腫で診断基準・診療GL及び鑑別疾患を改訂・追加した。重症度分類の一部を改定した。特に診断基準、診療GL、重症度分類について稀な病態の癌という記述は全て腫瘍の記述に変更した。症例の解析、データベース登録を継続した。
(VHL)疫学調査では、各病態は良性の特徴を示し、他臓器転移、リンパ節転移は殆どない。そのため、診断基準、診療GL・重症度分類で「癌」という記述は「腫瘍」に変更した。これより、定期的な経過観察によりある大きさまでは悪性化はないことが理解でき、医師、患者ともに負担が少なくなり経過観察が容易となる。内耳リンパ嚢腫では記載に不十分な点を最新の物に変更した。患者対象の勉強会は2回行った。VHL病の患者データベースは前年に続けて定期的に更新した。
MEN
1.重症度分類の作成・公開・改訂
最終的にMEN1およびMEN2の重症度分類を確定し、MEN研究コンソーシアムHP (http://men-net.org)、日本内分泌学会HP (http://square.umin.ac.jp/endocrine/)に公開した.グレード(G)は未発症者をG-I、最重症群をGV-Iとして 6段階に分類した。
2.遺伝学的検査と機能解析を実施した。米国の診療GL、データベースを参照した。
3.登録データで性差の解析、下垂体腺腫や副甲状腺機能亢進症などの性差や、発症症状の解析を行った。家族歴、MEN1遺伝子変異の有無に性差はなかった。MEN1の病態では下垂体腺腫の視野障害、副甲状腺機能亢進症の尿路結石、胸腺神経内分泌腫瘍の有病率で性差を認めた。
VHLとMEN共通で患者・家族会と密な連携や支援を行い、HP運営や患者手帳作成を達成した。大阪市・札幌市で患者・家族向けの勉強会やシンポジウムを開催した。
(MEN)MEN1・2の重症度分類を作成した。こうした評価ツールは国内外に過去には存在せず、本重症度分類は診療の標準化や質の向上に貢献できた。「診療」ネットワーク(NW)では、診療実態調査とともに、地区ごとの診療のハブ&スポーク化を進めた。「研究」NWでは、患者末梢血より細胞株を樹立し、研究者の利用を進めた。変異陰性例の全ゲノム解析で新規原因遺伝子探索を開始した。「人材」NWでは患者・家族のNW化支援を行った。さらに患者会の活動の支援、一般市民も対象とした勉強会などを開催し、本症の認知度を向上に努めてきた。
本研究の活動は今後も継続が必要である。
腎腫瘍、褐色細胞腫、膵神経内分泌腫瘍、内耳リンパ嚢腫で診断基準・診療GL及び鑑別疾患を改訂・追加した。重症度分類の一部を改定した。特に診断基準、診療GL、重症度分類について稀な病態の癌という記述は全て腫瘍の記述に変更した。症例の解析、データベース登録を継続した。
(VHL)疫学調査では、各病態は良性の特徴を示し、他臓器転移、リンパ節転移は殆どない。そのため、診断基準、診療GL・重症度分類で「癌」という記述は「腫瘍」に変更した。これより、定期的な経過観察によりある大きさまでは悪性化はないことが理解でき、医師、患者ともに負担が少なくなり経過観察が容易となる。内耳リンパ嚢腫では記載に不十分な点を最新の物に変更した。患者対象の勉強会は2回行った。VHL病の患者データベースは前年に続けて定期的に更新した。
MEN
1.重症度分類の作成・公開・改訂
最終的にMEN1およびMEN2の重症度分類を確定し、MEN研究コンソーシアムHP (http://men-net.org)、日本内分泌学会HP (http://square.umin.ac.jp/endocrine/)に公開した.グレード(G)は未発症者をG-I、最重症群をGV-Iとして 6段階に分類した。
2.遺伝学的検査と機能解析を実施した。米国の診療GL、データベースを参照した。
3.登録データで性差の解析、下垂体腺腫や副甲状腺機能亢進症などの性差や、発症症状の解析を行った。家族歴、MEN1遺伝子変異の有無に性差はなかった。MEN1の病態では下垂体腺腫の視野障害、副甲状腺機能亢進症の尿路結石、胸腺神経内分泌腫瘍の有病率で性差を認めた。
VHLとMEN共通で患者・家族会と密な連携や支援を行い、HP運営や患者手帳作成を達成した。大阪市・札幌市で患者・家族向けの勉強会やシンポジウムを開催した。
(MEN)MEN1・2の重症度分類を作成した。こうした評価ツールは国内外に過去には存在せず、本重症度分類は診療の標準化や質の向上に貢献できた。「診療」ネットワーク(NW)では、診療実態調査とともに、地区ごとの診療のハブ&スポーク化を進めた。「研究」NWでは、患者末梢血より細胞株を樹立し、研究者の利用を進めた。変異陰性例の全ゲノム解析で新規原因遺伝子探索を開始した。「人材」NWでは患者・家族のNW化支援を行った。さらに患者会の活動の支援、一般市民も対象とした勉強会などを開催し、本症の認知度を向上に努めてきた。
本研究の活動は今後も継続が必要である。
結論
本研究では生活基盤と医療水準の向上を目的とし関連学会の支援を受け、診療指針や重症度分類の作成・改定を行い、症例登録と解析を進めた。本症の啓発のためシンポジウム開催や、患者及び市民を対象の市民公開講座を開催した。これらの努力により両疾患が国内で理解を得て予後が改善され、日常生活がおくれると考えられる。本研究は今後の継続が必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
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