文献情報
文献番号
201415090A
報告書区分
総括
研究課題名
胎児・新生児骨系統疾患の診断と予後に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-055
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
澤井 英明(兵庫医科大学 医学部・産科婦人科学)
研究分担者(所属機関)
- 室月 淳(東北大学大学院 胎児医学分野)
- 山田 崇弘(北海道大学大学院医学研究科 総合女性医療システム学講座)
- 堤 誠司(山形大学医学部 産婦人科学)
- 高橋 雄一郎(長良医療センター 産科)
- 佐世 正勝(山口県立総合医療センター 総合周産期母子医療センター)
- 篠塚 憲男(胎児医学研究所)
- 宮崎 治(国立成育医療研究センター 放射線科)
- 芳賀 信彦(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション科)
- 鬼頭 浩史(名古屋大学 整形外科)
- 渡邉 淳(日本医科大学付属病院 遺伝診療科)
- 大薗 惠一(大阪大学大学院医学系研究科 小児科・骨代謝学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
骨系統疾患は重症例では出生後早期に死亡し、整形外科的治療の対象とならない疾患もあり、産科医や小児科医が関わることが多い。各疾患の頻度は少なく、一般医師が多数の症例を経験しにくい一方で、疾患数は456疾患もあり、遭遇する機会は少なくない。骨系統疾患に詳しい医師は極めて少なく、疾患に遭遇しても診断や治療方針、予後の推定などが困難な状態である。この状況を克服する必要から、産科医や小児科医の骨系統疾患への対応方法を示し、患児の予後の改善と家族の支援を行うことが本研究の全体の目的である。
研究方法
1)症例の診断確定と治療方針決定の支援と定期的な研修会等の開催、2)全国を一定の地域に分け、地域の医師に適切な診断と助言を行い、妊婦や患者家族に適切な診療ができる施設を整備、3)ホームページ等を用いた一般の医師や妊婦、患者、家族が情報を得るシステムを構築である。4)疾患頻度を明らかにするため、特定地域を対象としたコホート調査、5)骨格異常を有する胎児を診断し適切な妊娠管理を行うために、胎児超音波検査や胎児CT、遺伝子検査による各診断方法の情報収集、6)胎児期および出生時点での確定診断指針(X線診断や超音波検査、遺伝子検査等)を確立、7)TDの長期生存患者の発育状況について詳細な聞きとり調査を実施。8)2014年度予定の骨系統疾患国際分類の改定に対応した疾患整理、等を実施する。
結果と考察
(1)専門家チームによる骨系統疾患の診断支援(net support):
全国の症例を集めて4000通以上のメールで症例検討を行ってきた。胎児骨系統疾患として診断されたのは、軟骨無形成症、軟骨低形成症、タナトフォリック骨異形成症、低フォスファターゼ症、点状軟骨異形成症、軟骨無発生症、軟骨低発生症、先天性骨幹端異形成症、分節異常骨異形成症、屈曲肢異形成症、骨形成不全症、短肋骨症候群(多指(趾)を伴うもの、伴わないもの)等の疾患を診断した。
(2)全国各地域に診断拠点施設を整備し、実際の診療を支援(real support):
北海道(北海道大学)、宮城県(宮城県立こども病院)、山形県(山形大学)、岐阜県(長良医療センター)、兵庫県(兵庫医科大学)、山口県(山口県立総合医療センター)の診断施設を拠点として指定した。
(3)ホームページ等を用いた一般の医師や妊婦、患者、家族が情報を得るシステムを構築:
すべての骨系統疾患に対応した本研究班のホームページを提供している。www.thanatophoric.com
(4)疾患頻度を調査するため特定地域を対象としたコホート調査:
上記の(2)の拠点診断施設の県内において、全骨系統疾患症例の把握による疾患出生頻度の把握を目的として、全数把握コホート調査を開始した。
(5)骨系統疾患疑い胎児を診断し適切な妊娠管理を行うための、胎児超音波検査や胎児CT、遺伝子検査による診断方法の確立:
胎児超音波検査の児頭大横径、上腕骨、脛骨、腓骨、大腿骨、橈骨、腓骨、腹囲、胸囲等の正常データの統計解析を行った。
胎児CTの被曝量を調査するために全国の胎児CT実施施設に対して、過去3年間に実施した胎児CTの撮影条件を調査した。また、より正確な被曝線量を調べるために、妊婦・胎児模型(ファントム)を作製した。
遺伝子診断については、全国の臨床検査会社や研究所に対して調査を行い、骨系統疾患の遺伝子検査実施可能リストを作成した。
(6)胎児期および出生時点での確定診断指針:
難病の制度改定に合わせて、タナトフォリック骨異形成症の診断指針を作成した。
(7)TDの長期生存患者の発育状況調査:
13例の1年以上の長期生存症例を全国から集め、実際に施設に訪問して主治医や家族から発育状況の聞き取り調査を行った。
(8)骨系統疾患国際分類の改定に対応:
新規の国際分類の改定は論文化されなかったので、翻訳作業は実施しなかった。
全国の症例を集めて4000通以上のメールで症例検討を行ってきた。胎児骨系統疾患として診断されたのは、軟骨無形成症、軟骨低形成症、タナトフォリック骨異形成症、低フォスファターゼ症、点状軟骨異形成症、軟骨無発生症、軟骨低発生症、先天性骨幹端異形成症、分節異常骨異形成症、屈曲肢異形成症、骨形成不全症、短肋骨症候群(多指(趾)を伴うもの、伴わないもの)等の疾患を診断した。
(2)全国各地域に診断拠点施設を整備し、実際の診療を支援(real support):
北海道(北海道大学)、宮城県(宮城県立こども病院)、山形県(山形大学)、岐阜県(長良医療センター)、兵庫県(兵庫医科大学)、山口県(山口県立総合医療センター)の診断施設を拠点として指定した。
(3)ホームページ等を用いた一般の医師や妊婦、患者、家族が情報を得るシステムを構築:
すべての骨系統疾患に対応した本研究班のホームページを提供している。www.thanatophoric.com
(4)疾患頻度を調査するため特定地域を対象としたコホート調査:
上記の(2)の拠点診断施設の県内において、全骨系統疾患症例の把握による疾患出生頻度の把握を目的として、全数把握コホート調査を開始した。
(5)骨系統疾患疑い胎児を診断し適切な妊娠管理を行うための、胎児超音波検査や胎児CT、遺伝子検査による診断方法の確立:
胎児超音波検査の児頭大横径、上腕骨、脛骨、腓骨、大腿骨、橈骨、腓骨、腹囲、胸囲等の正常データの統計解析を行った。
胎児CTの被曝量を調査するために全国の胎児CT実施施設に対して、過去3年間に実施した胎児CTの撮影条件を調査した。また、より正確な被曝線量を調べるために、妊婦・胎児模型(ファントム)を作製した。
遺伝子診断については、全国の臨床検査会社や研究所に対して調査を行い、骨系統疾患の遺伝子検査実施可能リストを作成した。
(6)胎児期および出生時点での確定診断指針:
難病の制度改定に合わせて、タナトフォリック骨異形成症の診断指針を作成した。
(7)TDの長期生存患者の発育状況調査:
13例の1年以上の長期生存症例を全国から集め、実際に施設に訪問して主治医や家族から発育状況の聞き取り調査を行った。
(8)骨系統疾患国際分類の改定に対応:
新規の国際分類の改定は論文化されなかったので、翻訳作業は実施しなかった。
結論
研究終了時に期待される成果としては、従来はあまり検討されてこなかった胎児・新生児の骨系統疾患について、正確な診断に貢献できることである。これによって骨系統疾患の胎児が適切な診断と妊娠管理を受けることができれば、児がより良い状態で出生できる点である。たとえば妊娠中に正確な診断ができれば、予後の予測が容易になり、妊娠継続期間や分娩の際は経腟分娩か帝王切開かの判断に寄与する。NICUのある施設での分娩を事前に決めることも可能となり、NICU入院後に児がどのような経過をたどるのかも明らかになれば、両親の受け入れもスムーズになる。これにより入院期間の短縮や退院後の療育の負担の軽減等が考えられる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
-