IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針の確立を目指した研究

文献情報

文献番号
201415085A
報告書区分
総括
研究課題名
IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針の確立を目指した研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-050
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 勉(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡崎 和一(関西大学 内科学)
  • 下瀬川 徹(東北大学 医学系研究科)
  • 神澤 輝実(がん・感染症センター 駒込病院 内科)
  • 川 茂幸(信州大学 総合健康安全センター)
  • 中村 誠司(九州大学 歯学部・歯科口腔外科学)
  • 三嶋 理晃(京都大学 医学研究科)
  • 井戸 章雄(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 能登原 憲司(倉敷中央病院 病理検査科)
  • 滝川 一(帝京大学医学部 内科・消化器内科学)
  • 金井 隆典(慶応義塾大学医学部 内科学・消化器内科学)
  • 児玉 裕三(京都大学 医学研究科)
  • 三森 経世(京都大学 医学研究科)
  • 住田 孝之(筑波大学医学医療系内科・リウマチ膠原病学)
  • 吉野 正(岡山大学 医歯薬学総合研究科)
  • 赤水 尚史(和歌山県立医科大学内科学第一講座)
  • 川野 充弘(金沢大学医学部付属病院)
  • 田中 良哉(産業医科大学医学部 第一内科学)
  • 高橋 裕樹(札幌医科大学医学部 内科学第一講座)
  • 後藤 浩(東京医科大学眼科学講座)
  • 松井 祥子(富山大学保健管理センター 杉谷支所)
  • 佐藤 俊哉(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
23,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
IgG4関連疾患はわが国で概念が確立された疾患であり国の新しい「指定難病」となる可能性がある。そこで本研究では患者の認定基準を作成する目的で臓器別診断基準の策定を行った。さらに診断基準の精度をあげるため関連遺伝子の同定を行った。また治療指針確立のためにステロイド投与の臨床試験を行った。さらに医療費助成対象患者判定に必要な重症度分類を策定した。
研究方法
1.各臓器別診断基準の策定:各臓器別部会を組織し、臓器別診断基準を策定した。
2.病因病態解明のための遺伝子、蛋白解析:病因病態解明のため遺伝子解析研究拠点(松田班)と連携し、遺伝子、蛋白解析を行った。約900例の患者、京大の長浜コホートから年齢と性をマッチさせた約1000検体を用いた。さらに症例を絞ってプロテオミクス解析を行った。
3.IgG4関連疾患標準治療法の確立:本疾患の標準的治療法は確立していない。そこでステロイドによる標準治療法を確立するため前向き臨床試験を開始した。
4.IgG4関連疾患重症度分類の策定:難病の医療費助成対象患者選定のための重症度分類の策定を試みた。
結果と考察
1.IgG4関連疾患の各臓器別診断基準の策定:「IgG4硬化性胆管炎」、「自己免疫性膵炎」、「IgG4関連涙腺唾液腺炎」、「IgG4関連腎疾患」、の診断基準の再検討を行った。また「IgG4関連眼疾患」「IgG4関連呼吸器疾患」の診断基準を新たに策定した。これらの臓器別診断基準について各関連学会の承認を得た後、指定難病患者の認定用資料として厚労省に提出した。「基本的には、包括診断基準によるものとするが、それが困難な場合は、それぞれの臓器別診断基準により診断する」とした。
2.病因病態解明のための遺伝子、蛋白解析:患者約900例について全ゲノムシーケンシング、候補遺伝子についてダイレクトシーケンシングを行った。その結果、HLA領域、Fcγ受容体IIbに強い相関が認められた。プロテオミクス解析については現在進行中である。
3.IgG4関連疾患標準治療法の確立:自己免疫性膵炎、涙腺唾液腺炎について個別に研究をおこなった。初回投与量0.5-0.6mg/kg/日から開始し、以後漸減、維持量約5-10 mg/日にて1年間継続した場合、80-90%の症例で寛解がえられた。しかしながら治療中断例については1年後には30-50%の症例で再発が見られた。
4.IgG4関連疾患重症度分類の策定:「IgG4関連疾患全体の重症度分類」を策定した。
重症度は基本的に治療開始後に判定する。軽症:治療を要しないもの、中等症:ステロイド治療を必要とするもの、重症:ステロイド治療抵抗性;十分量のステロイド治療でも寛解導入できない場合(初回投与量0.5-0.6 mg/kg/日)、ステロイド依存性:十分量のステロイド治療を行い寛解導入したが、ステロイド減量や中止で再燃し離脱できない場合
臓器障害:当該疾患に罹患している各臓器固有の機能障害が残るもの
今回すでに診断基準が策定されている「硬化性胆管炎」、「自己免疫性膵炎」、「涙腺唾液腺炎」、「IgG4関連腎疾患」に加えて、「IgG4関連眼疾患」「IgG4関連呼吸器疾患」の診断基準を策定した。これら診断基準について各関連学会の承認を得た後、指定難病の認定用資料として厚労省に提出した。これら各臓器の診断基準では、臨床症状、血中IgG4の高値に加えて病理診断で確定することとなっているが、膵疾患や後腹膜繊維症、大動脈炎など組織採取が困難な例がある。そこで「基本的には包括診断基準によるものとするが、困難な場合は、それぞれの臓器別診断基準により診断する」とした。本研究では、これらの診断基準に基づいて、さらに「IgG4関連疾患全体の重症度分類」を策定した。今後、他の指定難病の重症度との整合性について検討をする必要があると思われた。
IgG4関連疾患の病因病態は不明である。そこでIgG4関連疾患約900例について関連遺伝子の検索を行った。その結果、HLA領域、Fcγ受容体IIbに強い相関が認められた。IgG4はFcγR-IIbに親和性が強く、補体結合能がないため、抑制性のIgと考えられている。従ってFcγRIIbの多型がIgG4の結合やその作用にどのような影響があるのか興味が持たれる。
今回ステロイド治療の臨床試験を行ったが、ステロイド抵抗例、再発例の存在が明らかとなった。とくに再発例について、長期ステロイド治療を継続すべきか、免疫抑制薬など他の薬剤に変更すべきか、は解決されるべき問題である。
結論
1.新たにIgG4関連眼疾患、呼吸器疾患の診断基準を策定した。
2.IgG4関連疾患の重症度分類を策定した。
3.IgG4関連疾患の遺伝子解析を行い、疾患関連遺伝子が同定された。
4.ステロイド治療抵抗例、再発例の存在が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-04-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201415085Z