神経皮膚症候群に関する診療科横断的検討による科学的根拠に基づいた診療指針の確立

文献情報

文献番号
201415084A
報告書区分
総括
研究課題名
神経皮膚症候群に関する診療科横断的検討による科学的根拠に基づいた診療指針の確立
課題番号
H26-難治等(難)-一般-049
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
錦織 千佳子(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐谷 秀行(慶應義塾大学 医学部)
  • 倉持 朗(埼玉医科大学 医学部)
  • 太田 有史(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 筑田 博隆(東京大学 医学部附属病院)
  • 古村 南夫(久留米大学 医学部)
  • 吉田 雄一(鳥取大学 医学部)
  • 松尾 宗明(佐賀大学 医学部)
  • 舟崎 裕記(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 今福 信一(福岡大学 医学部)
  • 齋藤 清(福島県立医科大学 医学部)
  • 水口 雅(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 金田 眞理(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 森脇 真一(大阪医科大学 医学部)
  • 林 雅晴(公益財団法人東京都医学総合研究所)
  • 上田 健博(神戸大学 医学部附属病院)
  • 小野 竜輔(神戸大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
24,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経皮膚症候群は神経線維腫症1(NF1)、神経線維腫症2(NF2)、結節性硬化症(TSC)、色素性乾皮症(XP)を含むが、いずれも症状が多岐にわたることから診療科横断的な組織的な研究の展開が必要である。本研究班の目的は(1)NF1、NF2、TSCおよびXPの診療科横断的なアプローチと、近年明らかとなった知見を踏まえて、重症度評価を加味した疫学調査を実施して診療指針の改訂の基礎資料を作り、(2)XPの確定診断を進め、患者登録システムの構築と診療指針の策定、(3)神経皮膚症候群に対する診療指針を改訂し、診断技術の向上、臨床治療技術の開発・改良の研究を推進し、患者のQOLの改善に寄与することである。
研究方法
本年度は難病政策の転換を踏まえて、研究班のミッションも診療ガイドラインの策定や重症度分類の改訂作業に関する研究を優先的に行った。診療横断科的に、疾患ごとに班員共同で疫学調査を行い、現行の診断基準ならびに重症度分類の改定あるいは、新規策定などをめざし、各自の研究も平行して進めた。
NF1とNF2の診断基準と重症度分類は既に策定されていたので、それが現在の患者の実情に即しているかどうかの検証作業を行なった。時間的な制限もあるため全国調査は行なわず、各研究分担者の施設での症例を持ち寄り、研究分担者間のメール会議にて頻繁に討議した。一部は近隣の2施設、福岡大学248名と鳥取大学108名を合わせて患者のプロファイルの解析と新しい重症度分類の提案を行なった。古村はNF1におけるカフェオレ斑のレーザー治療について自施設での症例を中心に実態を調査した。NF1の種々の病変の画像診断に関しては、各病態に対する最良のimaging modalityの検討を 倉持が担当した。太田は局限型および分節型のNF1について調査し、一部の分節型NF1患者において重大な合併症を併発するリスクがあることを示した。
NF1の骨の症状については筑田と舟崎は整形外科医の立場から、脊柱の変形や骨変形についての分類の見直しとその基準を明確にしたのち、共通する患者を診ている皮膚科医も交えて、重症度分類の見直しを検討した。筑田は東京大学で脊椎手術をうけたNF1患者の2008年から2013年のDPCデータベースから、神経線維腫症(ICD10 Q850)ついて、年齢、性別、診断、手術内容、手術合併症、在院日数についての情報を抽出し研究対象期間中に、計4749入院が同定された。舟崎は神経線維腫症I型患者28例の骨密度(BMD)、骨代謝マーカー、骨質マーカーを調査し、骨病変あり群となし群で比較した。松尾は、小児科医の立場から、小児NF1患者の中枢神経合併症の実態を明らかにする目的で、臨床調査票を用いた調査研究を行った。
神経線維腫症2型(NF2)の長期予後が不良である原因の一つが、各腫瘍の治療が遅れることであることから、早期治療への方向転換を患者会で提案し、概ね賛意が得られた。2009年-2013年のNF2臨床調査個人票を解析した。
TSCの各臨床症状の程度や頻度は最近の診断技術の進歩に伴い、変化しており、病態解明に伴って新規の治療薬も使用可能となり、TSCを取り巻く環境にも大きな変化が生じてきているため、現在の医学の進歩の合わせ、TSCの診断基準と重症度分類の作成を行った。
錦織・森脇・林・上田・小野とでメール会議により共同して日常臨床に役立つ各診療科横断的な色素性乾皮症(XP)の新規診断基準と重症度分類を含めたXP診療ガイドライン2014(案)を策定し、日本皮膚科学会ガイドライン委員会に申請した。
錦織・森脇の施設に依頼のあったXP疑い患者の診断を進めた。小野は自施設の色素性乾皮症患者の登録システムを構築した。
結果と考察
NF1の初診時の年齢は1歳未満と20-40歳で多く、低身長で痩せ形が多いこと、皮膚腫瘍切除は、受診者の1/3が受けていることがわかった。重症度の解析では、stage 3もしくは4に該当する患者の割合は低く、患者の約3割はstage 5であった。重症度分類の細目が改訂され、stage 3と認定された患者も助成の対象に含まれることとなった。
レーザー治療は整容面での改善にある程度有用であるが、個々の患者の治療反応性,機器や施術者によって差が生じることに注意が必要である。
今回の調査でNF-1では骨密度と独立して骨質劣化例が存在するが、これらと骨病変との相関は観察されないことを明らかにした。
2009年-2013年のNF2臨床調査個人票を解析結果では、全国で807名が登録されおり、5年間に、臨床症状スコアが悪化したのは1/3であった。
結論
本年度はNF1、NF2の重症度の整理、TSCの診断基準と重症度分類の改定、XPの診療ガイドラインの策定を行い、政策に反映できた。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201415084Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
32,200,000円
(2)補助金確定額
32,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 12,725,298円
人件費・謝金 4,235,911円
旅費 3,539,825円
その他 4,268,966円
間接経費 7,430,000円
合計 32,200,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
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