新生児期から高年期まで対応した、好酸球性消化管疾患および稀少消化管持続炎症症候群の診断治療指針、検査治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201415083A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児期から高年期まで対応した、好酸球性消化管疾患および稀少消化管持続炎症症候群の診断治療指針、検査治療法開発に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-048
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
野村 伊知郎(国立成育医療研究センター 免疫アレルギー研究部および、生体防御系内科部アレルギー科)
研究分担者(所属機関)
  • 木下 芳一(島根大学医学部 内科学講座)
  • 千葉 勉(京都大学医学研究科内科学 消化器内科学講座)
  • 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院 消化器内科)
  • 山田 佳之(群馬県立小児医療 センター アレルギ ー感染免疫)
  • 工藤 孝広(順天堂大医 小児科学講座)
  • 藤原 武男(国立成育医療研究センター 成育社会 医学研究部 )
  • 新井 勝大(国立成育医療研究 センター 消化器 科)
  • 大矢 幸弘(国立成育医療研究 センター アレルギー科)
  • 松本 健治(国立成育医療研究センター 免疫アレ ルギー研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
好酸球性消化管疾患(以下Eosinophilic Gastro-intestinal Disorder: EGIDとする)は、日本で増加しつつある。消化管の炎症性疾患であり以下に挙げる3疾患の総称である。
新生児-乳児における
①食物蛋白誘発胃腸炎 (N-FPIES; 日本のFood-Protein Induced Enterocolitis Syndromeの意)
幼児から高年期(高齢者)まで罹患する
②好酸球性食道炎 (EoE) 食道に炎症が限局
③好酸球性胃腸炎 (EGE) 消化管の広い範囲に炎症あり 
N-FPIES~EGEは一連の疾患であり、治療寛解できない場合、N-FPIESはEGEに移行する。治療困難症例は、生涯消化管炎症が持続する可能性が高い。重大な低栄養、消化管穿孔、イレウス、ショック、吐下血からの貧血が見られる。
 日本のphenotypeは欧米と大きく異なる。特にN-FPIESとEGEは日本特有である。消化管が広範囲に障害されるEGEは、EoEよりはるかに苦しみが大きい。
以上の問題点を解決するために、次の6つの課題を設定し、研究を行う。
1.EGID症例集積により正確な疾患概念を確立する
2.医学情報公開により患者を救う;診断治療指針とMinds準拠ガイドラインを公開し、
日本全国で正しい診療が行われるようにする
3. 精度の高い診断法を開発する;消化管組織における、好酸球数の正常値作成を行う。
4.治療法を開発する;6種食物除去を、EGE重症患者で行い、70%が寛解導入可能であった。原因食物の同定も行えつつある。種々の薬物と組み合わせて、最適な治療法を開発する。
5.GWAS, 腸内細菌microbiome。
6.世界のEGIDとの比較を、科学的手法で行う
以上の研究について、倫理審査を受け患者の人権、健康に最大の注意を払いながら遂行する。
研究方法
1.全国患者登録臨床データを蓄積し解析を行う。症例集積研究、疾患コホート研究。臨床症状、検査所見、組織所見、予後、発症因子など評価する。
2.簡明な診断治療指針を作成しWeb上無料公開する。Minds準拠指針作成;論文検索を行い、各論文の構造化抄録を作成、推奨度を決定、AGREE II評価を受ける。
3.正常の消化管組織好酸球を計測する。
4.特に有望な6種食物除去について評価する。 
5.GWAS, 腸内細菌microbiome;他の研究申請で行う。
6.日本と欧米で、症状や炎症が起きる部位が異なるため、システマティックレビューを作成する。

結果と考察
1.全国からのオンライン登録により、264名を新たに得た。合計1000名に到達。N-FPIESの診断が確実な350名について解析が行われた。発症日がクラスター1(嘔吐有、血便有)のグループが有意に早く、寛解も早期である。このタイプは欧米からは報告がない。クラスター1で、消化管穿孔、消化管閉鎖の頻度が高く、一刻も早い治療が必要である。
2.Minds準拠ガイドライン作成会議開催、統括委員が集合し、作成委員を決定、Scopeを確立した。N-FPIES, EoE, EGEの以前からの診断治療指針の改良を行い、発行している。難病助成のシステムも完成した。
3.成人の各消化管組織の好酸球数正常値を確立し得た(Am J. Surg Pathol 2015)。。
4.年長児、および成人のEGE13名について、6種除去を行い、10名で症状寛解を得た。その後原因食物同定が行えており、論文化も行った (Allergology International 2014)。
5.GWAS, 消化管マイクロビオーム。
6.解析の結果、アジア人は白人に対して有意にEGEが多く、EoEが少なかった。2014年度中2つの論文が完成した(Allergology International 2015, J Gastroenterol Hepatol 2015)。

結論
2000名を目指した、詳細な臨床データと、それにリンクした免疫学的なデータが支えあって、高いレベルの事実が明らかになってきたと言える。通常の診断治療指針のブラッシュアップが進み、かつMinds準拠のガイドライン作成が進行している。欧米のFPIES診断治療指針作成グループにも編入され、国際的にも実力をもった研究グループとして認められつつある。研究を続けて、世界中に存在し苦しんでいる患者を救う方策を行ってゆきたい。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201415083Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,800,000円
(2)補助金確定額
20,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,681,843円
人件費・謝金 6,897,415円
旅費 2,111,174円
その他 4,309,568円
間接経費 4,800,000円
合計 20,800,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
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