新しい先天代謝異常症スクリーニング時代に適応した治療ガイドラインの作成および生涯にわたる診療体制の確立に向けた調査研究

文献情報

文献番号
201415082A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい先天代謝異常症スクリーニング時代に適応した治療ガイドラインの作成および生涯にわたる診療体制の確立に向けた調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-047
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 文夫(熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 新宅 治夫(大阪市立大学 大学院医学研究科)
  • 呉 繁夫(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 小国 弘量(東京女子医科大学 小児科学)
  • 大浦 敏博(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 高柳 正樹(千葉県こども病院)
  • 大竹 明(埼玉医科大学 小児科)
  • 山口 清次(島根大学 医学部)
  • 杉江 秀夫(常葉大学 保健医療学部)
  • 深尾 敏幸(岐阜大学 大学院医学系研究科)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 羽田 明(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 西野 一三(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)
  • 青天目 信(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 中村 公俊(熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者名 杉江秀夫 自治医科大学(平成26年4月1日~平成26年8月31日)→常葉大学(平成26年9月1日~平成27年3月31日)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は希少疾患である先天代謝異常症の診療(診断および治療)をガイドラインとして標準化することを目的としている。ガイドラインを作成するとともに、標準化された診療ガイドラインを臨床研究、新薬治験研究に役立てることを目指している。同時に我が国から学会誌・冊子・ホームページ等での情報発信を行うことを目標に掲げている。具体的な作業として、本研究班においては3年間の研究の目標として、先天代謝異常症の 1) 治療ガイドラインの策定、重症度分類へむけた調査研究を進める、2) 成人期の診療体制の整備に向けた調査と方針の立案、を挙げた。
研究方法
対象とする疾患はフェニルケトン尿症、尿素サイクル異常症などのアミノ酸代謝異常症、メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症などの有機酸代謝異常症、脂肪酸およびカルニチン代謝異常症、ケトン体代謝異常症、GLUT1欠損症、ビオプテリン代謝障害、糖原病である。平成26年度の研究では未達成の疾患の
ガイドラインの策定および学会での承認、重症度分類の改訂、移行期医療、成人期の診療体制の整備について研究を行った。
結果と考察
先天代謝異常症はどの疾患をとっても、極めて稀である一方で、疾患数が極めて多い。したがって、エビデンスレベルの高い情報はほとんどない。また、これらの疾患の診療に従事する専門医師の数は少ない。したがって、コンセンサスを共有すべき専門家数が少ない。
このような背景があって、海外における先天代謝異常症のガイドライン作成も、つい最近になって進展を見せている状況である。たとえば、欧州では2012年に尿素サイクル異常症の診断治療基準が、初めて関連する学会の手によって作成された。その診断治療基準において推奨されている内容は専門家のコンセンサスから構成されている部分が多い。これは米国でもほぼ同じ状況である。例えばフェニルケトン尿症は欧米では頻度が高く、患者も多く、多くのデータが積み重ねられている。しかし高いレベルのエビデンスに基づいた治療基準は達成されていない。
代表的な疾患ですらこのような状況なので、さらに希少な疾患の診療においてはその特殊な背景を考え、いかに医学的に妥当性のあるガイドラインを作成するかという基本的な問題がある。ガイドラインの策定では班会議と日本先天代謝異常学会ガイドライン策定委員会が共同して作業を行った。
平成27年2月にパブリックコメントの募集を行い、平成27年4月の日本先天代謝異常学会の理事会において承認された。
重症度分類については、この研究班において研究対象としている疾患について、ガイドラインとともに重症度分類を策定した。平成26年度においては対象とする疾患に共通して適応する重症度分類の策定を行った。この重症度分類の特徴は治療、食事療法、等の状況も評価し、検査値の異常、臓器障害、日常生活の制限などを総合的に評価しようとするものである。これによって、幅広い疾患の横断的な重症度評価が可能になると期待される。今後は個別の疾患に特徴的な判定についての検討をさらに進める。
移行期医療については、成人期に至った患者状況の調査結果を踏まえて、成人患者への診療体制提供の在り方、および生涯にわたる生活支援の在り方についての調査研究を開始した。患者登録については奥山班員と大竹班員が患者会との連携を進め、登録制度の充実に貢献した。
今後は、これまでに策定した学会認定診断基準を普及し、早期診断を実現するためのネットワークを目指しで、全国的に統一された診断を提供することが可能となる。診療の標準化は、専門医がいない地域においてもあるべき診療の方針を普及することで、診療の質の向上と患者の予後の向上につながるものと期待できる。
診断基準と診療ガイドラインの公表は日本先天代謝異常学会のホームページを通して行う。また、全国で利用可能な診断施設を公表し、医師や患者・家族への情報提供を行う。これらの活動で、研究成果の活用が図れると期待する。
結論
先天代謝異常症の疾患数は多いが、これらの多数の疾患の中から、アミノ酸代謝異常症、有機酸代謝異常症、脂肪酸カルニチン代謝異常症、ケトン体代謝異常症、尿素サイクル異常症、GLUT1欠損症、ビオプテリン代謝障害、糖原病を取り上げ、ガイドラインを策定した。これについては日本先天代謝異常学会ガイドライン作成委員会との共同で策定作業を進めた。同学会の委員会承認の後、平成27年2月にパブリックコメントの募集を行い、平成27年4月の日本先天代謝異常学会の理事会において承認された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-07-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201415082Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,400,000円
(2)補助金確定額
10,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,706,766円
人件費・謝金 638,618円
旅費 2,326,464円
その他 1,328,180円
間接経費 2,400,000円
合計 10,400,028円

備考

備考
預金利息28円

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-