文献情報
文献番号
201415074A
報告書区分
総括
研究課題名
ホルモン受容機構異常に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H26-難治等(難)-一般-039
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
赤水 尚史(和歌山県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 山田 正信(群馬大学大学院 医学系研究科)
- 廣松 雄治(久留米大学 医学部)
- 大薗 惠一(大阪大学大学院 医学系研究科)
- 杉本 利嗣(島根大学 医学部)
- 岡崎 亮(帝京大学 ちば総合医療センター)
- 片桐 秀樹(東北大学大学院 医学系研究科)
- 小川 渉(神戸大学大学院 医学研究科)
- 福本 誠二(徳島大学 藤井節郎記念医科学センター)
- 橋本 貢士(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
13,760,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 福本誠二
東京大学(平成26年4月1日~平成26年11月30日)→徳島大学(平成26年12月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
本調査研究は、ホルモン受容機構異常に起因する疾患の病態を解明し、それらの疾患の診断基準や治療指針を策定することを目標としている。当研究班は、甲状腺部会、副甲状腺部会、糖尿病部会の3部会からなるが、これらの領域では、発症頻度が稀で患者実態や診療指針に関して不明や未確立な疾患が多く存在する。特に本研究班では、甲状腺中毒性クリーゼ、悪性眼球突出症、粘液水腫性昏睡、甲状腺ホルモン不応症、バセドウ病再燃再発、副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、ビタミンD依存症(くる病・骨軟化症)および、ビタミンD抵抗性くる病・骨軟化症、低Ca血症性疾患、インスリン抵抗症(インスリン受容体異常症 A型,B型,亜型)について、実態把握、診断基準・重症度分類・治療指針を策定していく。
研究方法
日本内分泌学会、小児内分泌学会、日本甲状腺学会、日本骨代謝学会、日本糖尿病学会などと連携し専門部会会議を行う。その会議内容を踏まえ、全国疫学調査を実施し、更に、その解析結果および海外を含む最新の知見をもとにして、ホルモン受容機構異常に起因する上述の疾患の頻度や臨床的特徴の実態を把握する。それと並行して各疾患の診断基準および治療指針の草案作成を開始する。作成した診断基準・治療指針は、各学会での承認を経て、専門医や一般医家に周知と理解を深めるために学会ホームページや刊行物を通じて公表する。研究全般において、被験者保護の観点を踏まえ、人を対象とする医学研究に関する倫理指針にのっとり実施する。
結果と考察
(1)甲状腺中毒性クリーゼ
『甲状腺クリーゼの診断基準(第2版)』を基に、診断と治療を包括した診療ガイドラインを作成した。従来の治療法の記載では欠けていた重症度や病態の視点を取り入れ、具体的な治療内容について記載されている。今後、前向きに予後調査を行い、エビデンスを集積し改訂していく。
(2)悪性眼球突出症
2011 年に公表した「バセドウ病悪性眼球突出症(甲状腺眼症)の診断基準と治療指針」を改訂し、関連学会の承認を得た。ステロイドパルス療法を受けた症例の9%に肝障害を認め、ウイルス肝炎の存在、ステロイドの投与量、BMIがリスク要因であった。今後、前向き研究を継続し治療指針を検証する。
(3)粘液水腫性昏睡
診断基準の第3案までを公表した。今後、治療ガイドライン策定にあたっては、「甲状腺ホルモン静注製剤」の国内常備が必須であり、策定と並行して厚労省「未承認薬・適応外薬」検討会議に、甲状腺ホルモン静注製剤の国内常備を申請する必要がある。
(4)甲状腺ホルモン不応症
第1次指定難病110疾患の1つに指定された。推計患者数3000人。甲状腺ホルモン不応症の診断基準、診断のためのアルゴリズム、重症度基準を策定し、日本甲状腺学会のホームページに公表した。
(5)バセドウ病再燃再発
バセドウ病の再発症例において、白血球中のSiglec1 mRNA レベルが、有意に高値を示し、高精度でバセドウ病の再発(再燃)が予測できることが示唆された。今後、Siglec1を用いたバセドウ病の再燃再発予測基準を策定していく。
(6)副甲状腺機能低下症
第2次指定難病196疾患の候補疾患であり、推計患者数900人。副甲状腺機能低下症の診断基準、鑑別のフローチャート、重症度基準を策定した。
(7)偽性副甲状腺機能低下症
第2次指定難病196疾患の候補疾患であり、推計患者数400人。偽性副甲状腺機能低下症の診断基準案、重症度基準を作成した。
(8) ビタミンD依存症(くる病、骨軟化症)および、ビタミンD抵抗性くる病・骨軟化症
第2次指定難病196疾患の候補疾患となった。診断フローチャートを日本内分泌学会のホームページに公表した。併せて、診断基準案や、重症度分類の策定も進めている。
(9)低Ca血症性疾患
低Ca 血症の鑑別フローチャート、PTH 不足性副甲状腺機能低下症の鑑別フローチャートを含む「低Ca血症の鑑別診断の手引き」を日本内分泌学会ホームページに公表した。
(10) インスリン抵抗症
インスリン受容体異常症(インスリン抵抗症)の治療実態調査を行ったところ、過去5年間に、少なくともA型インスリン抵抗症45例(疑い4例、近縁疾患の妖精症3例を含む)、B型インスリン抵抗症49例(疑いを含む)の治療実績があった。
インスリン抵抗症の診断基準には平成7年度版が存在するが、現在の診療実態に合致しない点も多く残されている。今後、治療薬反応性や重症度などの情報を収集し、診断基準やガイドラインの改定を行う。
『甲状腺クリーゼの診断基準(第2版)』を基に、診断と治療を包括した診療ガイドラインを作成した。従来の治療法の記載では欠けていた重症度や病態の視点を取り入れ、具体的な治療内容について記載されている。今後、前向きに予後調査を行い、エビデンスを集積し改訂していく。
(2)悪性眼球突出症
2011 年に公表した「バセドウ病悪性眼球突出症(甲状腺眼症)の診断基準と治療指針」を改訂し、関連学会の承認を得た。ステロイドパルス療法を受けた症例の9%に肝障害を認め、ウイルス肝炎の存在、ステロイドの投与量、BMIがリスク要因であった。今後、前向き研究を継続し治療指針を検証する。
(3)粘液水腫性昏睡
診断基準の第3案までを公表した。今後、治療ガイドライン策定にあたっては、「甲状腺ホルモン静注製剤」の国内常備が必須であり、策定と並行して厚労省「未承認薬・適応外薬」検討会議に、甲状腺ホルモン静注製剤の国内常備を申請する必要がある。
(4)甲状腺ホルモン不応症
第1次指定難病110疾患の1つに指定された。推計患者数3000人。甲状腺ホルモン不応症の診断基準、診断のためのアルゴリズム、重症度基準を策定し、日本甲状腺学会のホームページに公表した。
(5)バセドウ病再燃再発
バセドウ病の再発症例において、白血球中のSiglec1 mRNA レベルが、有意に高値を示し、高精度でバセドウ病の再発(再燃)が予測できることが示唆された。今後、Siglec1を用いたバセドウ病の再燃再発予測基準を策定していく。
(6)副甲状腺機能低下症
第2次指定難病196疾患の候補疾患であり、推計患者数900人。副甲状腺機能低下症の診断基準、鑑別のフローチャート、重症度基準を策定した。
(7)偽性副甲状腺機能低下症
第2次指定難病196疾患の候補疾患であり、推計患者数400人。偽性副甲状腺機能低下症の診断基準案、重症度基準を作成した。
(8) ビタミンD依存症(くる病、骨軟化症)および、ビタミンD抵抗性くる病・骨軟化症
第2次指定難病196疾患の候補疾患となった。診断フローチャートを日本内分泌学会のホームページに公表した。併せて、診断基準案や、重症度分類の策定も進めている。
(9)低Ca血症性疾患
低Ca 血症の鑑別フローチャート、PTH 不足性副甲状腺機能低下症の鑑別フローチャートを含む「低Ca血症の鑑別診断の手引き」を日本内分泌学会ホームページに公表した。
(10) インスリン抵抗症
インスリン受容体異常症(インスリン抵抗症)の治療実態調査を行ったところ、過去5年間に、少なくともA型インスリン抵抗症45例(疑い4例、近縁疾患の妖精症3例を含む)、B型インスリン抵抗症49例(疑いを含む)の治療実績があった。
インスリン抵抗症の診断基準には平成7年度版が存在するが、現在の診療実態に合致しない点も多く残されている。今後、治療薬反応性や重症度などの情報を収集し、診断基準やガイドラインの改定を行う。
結論
公表したガイドラインが甲状腺クリーゼ、悪性眼球突出症の診療に利用され、迅速かつ的確な診断・治療により本症の予後改善に寄与することが期待される。また、現在着手している他の疾患の診断・治療指針も早期の策定が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
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