文献情報
文献番号
201415062A
報告書区分
総括
研究課題名
副腎ホルモン産生異常に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H26-難治等(難)-一般-027
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
柳瀬 敏彦(福岡大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 高柳 涼一(九州大学大学院 医学研究院)
- 成瀬 光栄(国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター)
- 西川 哲男(独立行政法人労働者健康福祉機構横浜労災病院)
- 笹野 公伸(東北大学大学院 医学系研究科)
- 長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部)
- 田島 敏広(北海道大学大学院 医学研究科)
- 勝又 規行(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所)
- 棚橋 祐典(旭川医科大学 医学部)
- 岩崎 泰正(高知大学 教育研究部 )
- 宗 友厚(川崎医科大学 医学部)
- 柴田 洋孝(大分大学 医学部)
- 山田 正信(群馬大学大学院 医学系研究科)
- 武田 仁勇(金沢大学 附属病院)
- 曽根 正勝(京都大学大学院 医学研究科)
- 佐藤 文俊(東北大学病院)
- 上芝 元(東邦大学 医学部)
- 方波見 卓行(聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院)
- 三宅 吉博(愛媛大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
12,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
副腎ホルモン産生・作用異常症の実態把握と病態の解明により、適切な診断・治療法を提示する。具体的には、各種副腎疾患の診断基準、重症度分類、診療指針等の作成を行い、必要に応じてその改訂を行う。
研究方法
1.副腎不全症の診療指針の作成:本班と内分泌学会が連携し、委員会討議等を経て原案を作成した。その後、班員による査読、パブリックコメントを反映した修正案の作成、日本内分泌学会理事会承認等の過程を経て最終案を提示した。2.各種副腎疾患の診断基準、重症度分類の作成:班員間のメール会議、また班会議を通じて、過去の診断基準を見直し、修正の上、作成した。また、幾つかの疾患に関しては重症度分類も討議を経て作成した。3.全国疫学調査研究:平成11-15年当時、集積された副腎偶発腫瘍3,678例の10年後予後調査を行い、最終的に有効回答症例として回収率66.5%にあたる2,443例の報告を基に最終解析を行った。4.個別臨床研究:個々の施設で幾つかの施設内臨床研究が行われた。
結果と考察
1. 厚労省副腎班と日本内分泌学会が連携して「副腎クリーゼを含む副腎皮質機能低下症の診断基準と治療指針」を作成した(学会HPに公開)。また、副腎不全症の先天性副腎皮質酵素異常症(先天性副腎過形成症を含む)、先天性副腎低形成症、アジソン病の3疾患が、指定難病110疾患の中に先行選定(それぞれ、指定難病81,82,83)されたことを受けて、上記診療指針を反映させた形で、3疾患の診断基準と重症度分類を作成した。同様に副腎不全症を呈する疾患として指定難病に追加選定された副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)不応症に関しても診断基準を作成した。2.褐色細胞腫・パラガングリオーマの診断基準2012年版を再検討後、承認し、新たに重症度分類を作成した。原発性アルドステロン症(PA)は「PAの診断治療ガイドライン2009」を現時点ではそのまま踏襲し、新たに重症度分類を作成した。また、偽性低アルドステロン症、グルコルチコイド不応症に関しても過去の診断基準を見直し、修正の上、診断基準を作成し、新たにこれらの重症度分類も作成した。3.副腎偶発腫の長期予後調査の結果、非機能性副腎腫瘍から機能性腫瘍や副腎癌へと診断変更される例が判明し、特に副腎癌のリスクを考慮すると、経過観察期間は3年以上、可能であれば10年間は行うべきと考えられた。また、副腎偶発腫に脳・心血管障害を合併する頻度は高く、早期よりの積極的な疾患管理が必要と考えられた。4.施設臨床研究:(1) PAにおける副腎分葉内支脈採血を用いた診断精度は、ACTH負荷後アルドステロン(Ald)値>14000pg/mlでAld過剰分泌を診断する方法が最も診断精度が高いこと (2)微小アルドステロン産生腺腫(APA)でもKCNJ5の体細胞変異を有する例があること (3)APA、特発性アルドステロン症(IHA)におけるPAC日内変動の検討からACTH以外にもAldの概日リズムの制御因子が存在し、その作用がIHAとAPAで異なる可能性 (4)1mgデキサメサゾン抑制試験(DST)の血中コルチゾール(F)値3μg/dl相当する0.5mgDSTの同値は4μg/dlであること、21時血中F値5μg/dl以上は23時の同値との比較からサブクリニカルクッシング症候群(SCS)の診断上、有用であること (5)SCS患者において、早朝コルチゾール、骨代謝マーカー、血清カルシウムが、動脈硬化(血管石灰化)の予測因子となる可能性があること (6) 在胎28週以降の新生児の尿中THAldは血中Aldと有意に相関し、在胎28-36週の早産児において尿THAldによりAld分泌能の推測がある程度可能であること (7) 健常男性158例の血中ステロイドのLC-MS/MS法による解析からACTHはより上流の中間ステロイド生成物と強く相関し、酵素活性と負の相関性を認めることから生理的feedback機構の存在が示唆されること (8)副腎癌における良悪性の鑑別や予後規定因子として重要なKi67陽性率の計測方法に関して、臨床的予後やWeissの基準の観点から、種々の方法による比較検討がなされ、一例としてhot spotはaverage法より臨床的予後やWeissの基準認定とより有意な相関性を認めることなどの研究成果が報告された。
結論
策定された各種副腎疾患の診断基準、重症度分類、診療指針等は、該当指定難病の行政的施策の遂行上、重要であると同時に、普及によりこの分野の診療の質の向上をもたらすと期待される。また、今後、必要に応じて、様々な臨床研究の成果を反映させた形で、診断基準、診療指針、重症度分類等の作成、改訂を考慮していく。
公開日・更新日
公開日
2017-03-31
更新日
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