乳児特発性僧帽弁腱索断裂の病態解明と治療法の確立に関する総合的研究

文献情報

文献番号
201415055A
報告書区分
総括
研究課題名
乳児特発性僧帽弁腱索断裂の病態解明と治療法の確立に関する総合的研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-020
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
白石 公(独立行政法人国立循環器病研究センター 小児循環器部)
研究分担者(所属機関)
  • 武田 充人(北海道大学医学部・小児科)
  • 中西 敏雄(東京女子医科大学・循環器小児科)
  • 賀藤 均(国立成育医療研究センター・循環器科)
  • 山岸 敬幸(慶応義塾大学医学部・小児科)
  • 安河内 聰(長野県立こども病院・循環器科)
  • 森崎 隆幸(独立行政法人国立循環器病研究センター・分子生物学部)
  • 市川 肇(独立行政法人国立循環器病研究センター・小児心臓外科)
  • 宮本 恵宏(独立行政法人国立循環器病研究センター・予防検診部)
  • 黒嵜 健一(独立行政法人国立循環器病研究センター・小児循環器部)
  • 北野 正尚(独立行政法人国立循環器病研究センター・小児循環器部)
  • 坂口平馬(独立行政法人国立循環器病研究センター・小児循環器部)
  • 池田善彦(独立行政法人国立循環器病研究センター・病理部)
  • 檜垣高史(愛媛大学病院小児総合医療センター・小児循環器部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳児特発性僧帽弁腱索断裂とは、生来健全な乳児に突然の急性呼吸循環不全が発症し、診断と早期の外科治療が遅れると死に至る疾患である。ほとんどが日本人で、生後4-6ヶ月に発症が集中するという特徴を持つ。基礎疾患として川崎病、抗SSA抗体、弁の粘液変成、ウイルス心内膜炎等などが示唆されるが詳細は不明である。乳児特発性僧帽弁腱索断裂の病因および臨床経過および臨床検査所見を詳細に調査し、本疾患の早期診断および的確な内科的および外科的治療法を早急に確立する。
研究方法
乳児特発性僧帽弁腱索断裂と診断された乳児。発症年齢、基礎疾患の有無、発症様式、血液生化学所見、画像所見、手術所見、病理組織所見、予後、転帰などについて調査。サンプルが得られた症例では、全血および血清サンプルの凍結保存、尿、弁、咽頭拭い液からのウイルス分離、弁置換を行った症例では弁組織の凍結保存やホルマリン固定病理組織標本の免疫組織科学的検討を行い、腱索断裂のメカニズムを解明研究する。
結果と考察
平成22年度より行った全国調査から、過去16年間に発症した95例について臨床所見を要約。発症は生後4~6ヶ月に集中し(85%)、やや男児に多く(53:42)、春から夏の頻度が高かった(66%)。全体的に近年増加傾向にある。基礎疾患として、川崎病10例、抗SSA抗体陽性2例、細菌性心内膜炎1例が認められた。CRPの上昇は軽度で、外科治療は弁形成が52例(55%)、人工弁置換が26例(27%)に行われた。死亡例は8例(8.4%)で、中枢神経系後遺症は10例(11%)認められた。これらの結果は、2014年9月に米国心臓協会(American Heart Association)の公式雑誌(Circulation. 2014;130:1053-1061)に論文として掲載された。また、本年度は血液からウイルスが分離された症例はなく、凍結された弁および腱索組織が得られなかったにで、来年度以降にこれらの検索を押し進め、病因解明と治療法の確立に役立てる。
 今回の研究で病因および病態がかなり明らかになったので、今後研究を継続して、早期発見および的確な治療法を早急に確立する。また基礎研究と疫学調査を継続して行い、病因解明に向けた努力を行う。生来健康な乳児に突然発症する本疾患を重篤な合併症を残すことなく的確に診断治療することは、小児の保健・医療・福祉の向上に不可欠である。
結論
弁形成もしくは弁置換により外科手術が成功すれば、左室の収縮機能は比較的短期間に改善する。また症例によっては、腱索形成術後に別の腱索が新たに断裂することがあり、術後も断層心エコーおよびドプラー断層により僧帽弁閉鎖不全の増悪に十分留意する必要がある。ショック状態で搬送された症例では、低血圧もしくは低酸素による中枢神経系障害を合併することがあるので、術直後より頭部エコー検査や頭部CT検査を実施して、脳浮腫や頭蓋内出血などの中枢神経系障害の出現に留意する。
死亡例が8名(8.4%)、人工弁置換症例が26例(27.3%)、呼吸循環不全に伴い発症した中枢神経系後遺症が10例(10.5%)に認められ、生来健康な乳児に発症する急性疾患として見逃すことのできない疾患である。病因を明らかにし適切な治療法を確立することが急務である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201415055Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,900,000円
(2)補助金確定額
1,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 618,140円
人件費・謝金 0円
旅費 355,100円
その他 488,760円
間接経費 438,000円
合計 1,900,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
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