非典型溶血性尿毒症症候群( aHUS )の全国調査研究

文献情報

文献番号
201415051A
報告書区分
総括
研究課題名
非典型溶血性尿毒症症候群( aHUS )の全国調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-016
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
南学 正臣(東京大学医学部附属病院 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 藤村 吉博(奈良県立医科大学)
  • 宮田 敏行(国立循環器病研究センター研究所)
  • 丸山 彰一(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 加藤 秀樹(東京大学医学部附属病院 医学部附属病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は、血栓性微小血管症(TMA)のなかで、志賀毒素による溶血性尿毒症症候群(HUS)やADAMTS13の異常による血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、基礎疾患のある二次性TMAを除いた、補体関連の異常を主な原因とする症候群である。1998年に補体調節蛋白の1つであるH因子の遺伝子異常が原因として報告されてから、本邦においても様々な補体調節因子の遺伝子異常が報告されているが、全国レベルでの発症数、原因遺伝子の頻度、予後に関しては不明である。aHUSの診断には非常に特殊な補体調節因子等の蛋白質学的解析(羊赤血球を用いた溶血試験等)や遺伝学的検査が必要であり、大半の大学病院では実施できず、診断の保険収載もされていない。本研究は、東京大学、名古屋大学においてaHUS疑い症例の診断、治療コンサルテーションを行なうシステムの確立を目指すとともに、従来のaHUS研究を発展させ、その病態および疫学的実態をより詳細に解明し、本邦aHUS患者の実情に即した診断基準、ガイドラインの策定を通じて、aHUS患者の診断・治療の質を高めることを目的とする。
研究方法
平成26年度に本研究の採択を受け、東大病院及び名古屋大学では、これらaHUS解析を引き継ぎ、TMAに含まれる疾患の中で、TTPに関しては奈良県立医科大学輸血部、aHUSに関しては東大腎臓内分泌内科(東日本の解析拠点)と名古屋大学(西日本の解析拠点)、そして遺伝子診断は引き続き国立循環器病研究センター研究所で施行する本邦TMA解析のネットワークシステムを樹立した。
患者血漿を用いた補体調節因子の蛋白質学的解析は、羊赤血球を用いた定量的溶血試験、H因子蛋白量定量、抗H因子抗体検査(ELISA法、ウエスタンブロット)、血漿中のCHHR1とCFHR3蛋白のウエスタンブロット法を用いた半定量を施行した。東大で匿名化した患者血球を国立循環器病研究センター研究所に輸送し、分担研究者である宮田敏行が、既知の原因遺伝子として知られているH因子、MCP、I因子、B因子、C3、THBD、DGKE、CFHR5の遺伝子解析をサンガー法にて行った。なお、一部のサンプルは東大医学部ゲノム医学センターにご協力いただき、次世代シークエンサーを使用したwhole exome解析を実施した。
調査票を各医療機関へ送付し、各主治医に臨床項目、臨床経過、薬剤使用状況などの経過を記載して頂き、得られたデータの集積を行った。
結果と考察
2014年9月より東大病院において本格的にaHUS患者の解析受入れを開始し、2015年3月末までに45件の解析の問い合わせを受けた。そのうち、臨床的に補体関連異常によるaHUSが疑われた症例は16例(男性13例、女性3例)であった。奈良医大輸血部(分担研究者 藤村)で2014年8月末までに集積したaHUS患者は計90例(男性60例、女性30例)であったことから、東大病院で集積した症例と合計すると、計106例(男性73例、女性33例)という本邦最大のaHUSコホートの樹立を成し得た。
溶血試験や抗H因子抗体解析、遺伝子解析の結果、約70%の症例で原因遺伝子と考えられる変異を同定した。さらに今後は、原因遺伝子毎の予後についてのデータを収集することで、現在施行されている血漿交換療法への反応の予測や、補体C5に対するモノクローナル抗体療法の適正使用を目指す。
確たる診断法の実績を作り、保険医療での検査、診断への道筋にしたいと考える。
結論
本研究を通して、本邦におけるaHUSの疫学的側面及び遺伝子背景が明らかとなりつつあり、本邦aHUS患者の診断・診療の質の向上に貢献しうると考える。今後も本研究活動を通して、本邦aHUS患者の疾患背景を明らかにし、aHUS診断基準の改訂など、施策面にも積極的に反映させていきたいと考える。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201415051Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,700,000円
(2)補助金確定額
1,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,312,076円
人件費・謝金 0円
旅費 15,560円
その他 8,640円
間接経費 392,000円
合計 1,728,276円

備考

備考
不足分は自己資金にて補充いたしております。

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-