LMX1B関連腎症の実態調査および診断基準の確立

文献情報

文献番号
201415050A
報告書区分
総括
研究課題名
LMX1B関連腎症の実態調査および診断基準の確立
課題番号
H26-難治等(難)-一般-015
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
張田 豊(東京大学 医学部付属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 北中 幸子(東京大学 医学部附属病院)
  • 磯島 豪(東京大学 医学部附属病院)
  • 服部 元史(東京女子医科大学 腎臓小児科)
  • 芦田 明(大阪医科大学 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我が国の慢性透析患者数は増加し続けている。巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は腎機能が進行する代表的な慢性糸球体疾患であり、そのごく一部は遺伝子異常を原因とすることが明らかになっているが、多くの場合原因不明である。
 爪膝蓋骨症候群(nail-patella症候群)は爪形成不全、膝蓋骨の低形成、腸骨の角状突起、肘関節の異形成を4主徴とする遺伝性疾患である。約半数は蛋白尿や血尿を呈する腎症を発症、その一部は末期腎不全に進行し、腎予後がQOLに多大な影響を及ぼす。原因はLMX1Bの遺伝子異常である。
 LMX1B変異はnail-patella症候群と同様の腎症を有するが爪、膝蓋骨、腸骨などの変化を伴わない孤発性腎症(nail-patella-like renal disease(NPLRD))や家族性FSGSの原因ともなりうることが最近明らかになった。これまでFSGSや原因不明の腎不全と診断されている症例の中で、LMX1B変異を原因とする症例が一定数いると考えられ、このような腎症全体をLMX1B関連腎症という一つの疾患概念として定義し直す必要がある。
 本研究はLMX1B関連腎症の実態把握を行い、可能な場合には遺伝子解析をあわせて行った。
研究方法
 本研究では遺伝性背景を持つネフローゼ症候群の中で、LMX1を原因とするものの実態を明らかにする目的で、LMX1BB関連腎症の本邦で初めての実態把握を行った。その結果母集団を(1)爪膝蓋骨症候群、(2)LMX1B R246変異、(3)NPLRD(LMX1B変異無しあるいは遺伝子検査無し)、(4) 遺伝性ネフローゼ症候群/家族性FSGS、(5)Collagenofibrotic Glomerulopathyの病型に分類し、それぞれについて解析を行った。またLMX1B遺伝子変異が関係が疑われる症例については実態調査とあわせてLMX1B遺伝子検査を行った。
結果と考察
 腎症を有する爪膝蓋骨症候群は17例登録が有った。腎外症状は多彩であり、なおかつ軽微なものが存在するため、本症候群と認識されておらず、当初FSGSと診断された症例が複数例存在した。腎外症状が軽微なために本症の診断がなされていない腎疾患患者が多数存在する可能性が示唆された。
 LMX1B R246変異による腎症が4例報告された。これらの症例では爪膝蓋骨症候群と異なり、いずれも爪や関節所見が無かった。1例のみに腎組織所見として爪膝蓋骨症候群腎症と同様の基底膜変化を認めている。家族性FSGSと診断された症例にR246変異が見いだされた。腎組織所見で特徴的な基底膜変化が有る場合には本症を考慮することができるが、それ以外の場合には鑑別診断として本症を念頭に置くことは極めて難しい。将来的には網羅的遺伝子解析の適応が広がることによりLMX1B遺伝子の変異も明らかになると予想される。
 爪膝蓋骨症候群と同様のあるいは類似する基底膜病変を有する症例(NPLRD)がLMX1Bに変異が見いだされなかった症例が5例、また遺伝子検査がなされていないが爪膝蓋骨症候群と同様の基底膜病変を有する症例が1例あった。これらの症例は組織所見上は爪膝蓋骨症候群と区別することは困難である。いずれの症例も腎機能低下を認めており、二例(同胞例)で末期腎不全に至っていた。若年で発症した二例で精神運動発達遅滞を合併していた。
 遺伝性ネフローゼ症候群/家族性FSGS14例のうち、網羅的遺伝子解析を施行されているものは3例にとどまっていた。9例については全く遺伝子検査が行われていなかった。
 Collagenofibrotic Glomerulopathy 8例のうち、2例は学童期の発症であった。高齢の症例も多いものの、腎機能が悪化する確率が高く、4例が維持透析を施行されていた。二例の小児期発症例では中枢神経症状を合併していた。爪膝蓋骨症候群の腎症との鑑別については困難ではないと考えられた。
結論
 本研究により本邦におけるLMX1B関連腎症の疫学的側面及び遺伝子背景が明らかとなりつつあり、腎疾患患者の診断・診療の質の向上に貢献しうると考える。今後も本研究活動を通して、LMX1B関連腎症の診断基準の作成など、施策面にも積極的に反映させていきたいと考える。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201415050Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,600,000円
(2)補助金確定額
1,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 249,298円
人件費・謝金 643,552円
旅費 264,500円
その他 73,650円
間接経費 369,000円
合計 1,600,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
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