腹腔外発生デスモイド腫瘍患者の実態把握および診療ガイドライン確立に向けた研究

文献情報

文献番号
201415049A
報告書区分
総括
研究課題名
腹腔外発生デスモイド腫瘍患者の実態把握および診療ガイドライン確立に向けた研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-014
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
西田 佳弘(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 川井 章(国立がん研究センター中央病院)
  • 戸口田 淳也(京都大学再生医科学研究所)
  • 生越 章(新潟大学医歯学総合病院 魚沼地域医療教育センタ-)
  • 国定 俊之(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 松延 知哉(九州大学病院)
  • 平川 晃弘(名古屋大学医学部附属病院 先端医療 ・臨床研究支援センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腹腔外発生デスモイド腫瘍に対する診断・治療指針については明らかになっていない。本疾患は良性の腫瘍でありながら治療の中心となってきた手術治療では局所コントロールを得ることが困難であり、術後の機能障害が問題となってきた。稀少疾患であるために施設によっては不適切な治療を受け、QOLを低下させられている例を多く認める。本研究では、本邦における腹腔外発生デスモイド腫瘍患者の発症様式、診断・治療、治療成績の実態を把握し、また診断・各種治療成績におけるβ-カテニンの変異の意義を明らかにし、稀少疾患であるデスモイド腫瘍に対する全国共通の診断・治療のガイドラインを示すことを目的とする。 (i)本邦における発症数、発症年齢、性別、発生部位を含めた臨床実態を明らかにする。(ii)診療を担当する専門施設における診断方法、治療方法の実態を明らかにする。(iii)様々な治療法の実施状況と、その成績を明らかにする。(iv) デスモイド腫瘍の診断・治療におけるβ-カテニンの免疫組織染色の意義、CTNNB1変異型の意義を解析する。(v) 手術やCOX-2阻害剤に抵抗性デスモイド腫瘍に対する低用量抗がん剤治療の日本人における有効性と安全性を評価する。
研究方法
(i)全国骨・軟部腫瘍登録のデータを使用し、2006年から2012年までの7年間に登録されたデスモイド腫瘍症例を抽出し、年度別発生数、年齢、性別、発生部位を調査した。 (ii) 本邦におけるデスモイド腫瘍診療の実態を把握するためのアンケート調査実施をNPO法人骨軟部肉腫治療研究会(JMOG)参加施設に対して実施した。 (iii) 1981年以降、研究分担施設におけるデスモイド腫瘍患者の治療成績を検討した。 (iv)前向きにメロキシカムを投与された症例を対象とし、病理標本にてβ-カテニン免疫組織染色を行った。CTNNB1のエクソン3の変異型を特定した。メロキシカムの治療成績とβ-カテニンの核内染色性およびCTNNB1遺伝子変異型との関連を解析した。 (v) メロキシカム治療に抵抗性デスモイド腫瘍に対して、低用量MTX(30mg/M2)+VBL(6mg/M2)療法の有効性、安全性を評価した。各種臨床因子およびCTNNB1遺伝子変異型とMTX+VBL療法の有効性との関連を解析した。副作用を評価した。
結果と考察
(i) 2006年には37例であったデスモイド腫瘍登録数が、2012年には107例にまで増加していた。7年間で計530例、男性207例、女性323例と女性が多く、平均年齢は44歳であった。発生部位では下肢135例、体幹134例が多かった。(ii) JMOG44施設のアンケートで、生検方法は針生検が多く、β-カテニンの免疫染色による核内蓄積の評価は28施設で実施され、CTNNB1変異の検出の実施は1施設であった。治療方針は、薬物治療と経過観察を合わせると3分の2を占めていた。薬物治療として選択される薬剤はCOX-2阻害剤が18施設、トラニラスト17施設であった。MTXとVBLの併用療法を13施設で実施されていた。 (iii) 初回手術後の再発率は55.0%、四肢発生例における再発率は75%であり、体幹発生例は25%であった。近年では初回治療として手術が行われる症例が減少している傾向がみられた。(iv) β-カテニンの核における強陽性症例は有意にメロキシカム治療に対する反応性が不良であった。CTNNB1変異型と各臨床因子の間に関連を認めなかった。CTNNB1のS45F変異型とメロキシカムへの反応性との間には有意な関連性を認めた。(v) MTX+VBLの治療成績は良好であり、各種臨床因子、治療期間、治療回数、CTNNB1変異型と治療効果との関連を認めなかった。多くの副作用はgrade 1であった。本研究において、日本における腹腔外デスモイド腫瘍患者の実態と診療担当施設の診断・治療方針を明らかにした。研究代表施設のデスモイド腫瘍症例においては、CTNNB1変異型と保存治療であるCOX-2阻害剤に対する効果との関連が認められ、また低用量抗がん剤治療であるMTXとVBLに対する効果とCTNNB1遺伝子変異型との関連は認めなかった。分担施設におけるデスモイド腫瘍を集積してCTNNB1変異解析を進めており、症例数を増やして診断・治療成績とCTNNB1変異型との関連性を解析している。
結論
本邦におけるデスモイド腫瘍患者の発生数を含む特徴を明らかにした。またデスモイド腫瘍診療を担当する施設における診断法、治療方針を調査し、治療成績について解析した。各種治療法に対する成績とCTNNB1変異型との関連性を明らかにし、今後のデスモイド診療ガイドライン構築にCTNNB1遺伝子変異解析が重要であることを示した。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201415049Z