Auditory Neuropathyの診断と治療指針の確立

文献情報

文献番号
201415047A
報告書区分
総括
研究課題名
Auditory Neuropathyの診断と治療指針の確立
課題番号
H26-難治等(難)-一般-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
加我 君孝(東京医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松永 達雄(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 坂田 英明(目白大学 保健医療学部)
  • 神田 幸彦(神田ENT医院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,091,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
後天性あるいは成人期のAuditory Neuropathy(AN)は、1996年にKagaら並びにStarrらが初めて報告したものである。すなわち、純音聴力検査で低音障害、中高音域の障害の少ないクライミング型を示す。これに比し、語音明瞭度検査では50%以下で、言葉の聞き取りが悪い。しかし1対1で会話が可能である。耳音響放射(DPOAE)は正常、ABR無反応、蝸電図で多くは-SPのみでN1を欠くが、低振幅である。この状態の長期追跡研究を行う。
研究方法
純音聴力検査、語音聴力検査、耳音響放射(DPOAE)、ABRによってAN確実症例を対象に追跡研究を行う。同時に平衡機能検査を行い、Vestibular Neuropathyの合併の有無を調べる。補聴器の適合は対象とはならないため、人工内耳手術が対象となる症例の選択と手術後の聴覚回復を研究する。

結果と考察
結果
1)60代になって加齢による難聴が加わる。前庭機能は良好なものも低下しているものもある。
2)われわれが長期追跡してきた17例は補聴器の効果なく、2例が東京医療センターで人工内耳手術を受け、聴覚を再獲得した。
3)難聴遺伝子研究ではOTOF遺伝子陽性のものが少ないが存在し、視覚障害を伴うものでは高頻度でOPA遺伝子が陽性であった。しかし成人症例ではこの2つの遺伝子が見いだされない症例が多く、今後の課題である。
4)目白大学耳科学研究所クリニックから7歳女児が1例を報告された。この症例は先天性のANの可能性もあるが、発音が明瞭であることから後天性の要素も多いことが疑われる。
5)中国の大連から11歳の女子中学生が原因不明の難聴の精査のため紹介された。中国の首都医科大学附属同仁病院の聴覚検査の結果を見るとANが疑われた。われわれの精密聴力検査でも典型的なANであることが判明した。中学校のクラス40人中成績は11番目、趣味は小説を書くことなど高い言語力を示し、後天性と考えられた。

考察
 ANは新生児聴覚スクリーニングが2000年頃からわが国でも導入されて、かつ2008年に米国のコロラド小児病院グループがAuditory Neuropathy Spectrum Disorder (ANSD)、すなわちDPOAE(+)、ABR(-)の新生児を幅広く含める考えを提唱した。それ以後、AN≠ANSDにもかかわらず、AN=ANSDと間違って認識されることが、特に小耳鼻領域で少なくなく、大きな問題である。恐らく成人発症例に出会ったことがないために間違うものと考えられる。
結論
本研究班ではANはすでに確立した特徴のある聴覚障害であり、その診断と治療指針を作成することは意義のあることを強調したい。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201415047C

収支報告書

文献番号
201415047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,200,000円
(2)補助金確定額
1,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 183,400円
人件費・謝金 831,900円
旅費 55,432円
その他 20,268円
間接経費 109,000円
合計 1,200,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
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