肺動脈低形成症候群の病態解明、管理、治療に関する研究

文献情報

文献番号
201415043A
報告書区分
総括
研究課題名
肺動脈低形成症候群の病態解明、管理、治療に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中西 敏雄(学校法人東京女子医科大学 医学部循環器小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 朴 仁三(榊原記念病院 小児科)
  • 賀藤 均(国立成育医療センター 循環器科)
  • 小野安生(静岡県立こども病院 循環器科)
  • 白石 公(国立循環器病センター 小児循環器診療部)
  • 山岸敬幸(慶應義塾大学 医学部小児科)
  • 大月審一(岡山大学 医学部小児循環器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肺動脈低形成症候群は、主肺動脈が無いか極めて低形成で、主要体肺側副血管、肺動脈低形成、多発性末梢性肺動脈狭窄を含む。多くは心奇形を合併し、ファロー四徴症、三尖弁閉鎖症、肺動脈閉鎖症、右室低形成症候群、総動脈幹症などが合併することがある。チアノーゼなど多様な臨床症状を呈する原因不明の症候群である。家族発生や、22q11.2点欠失、 7q11.2点欠失など染色体異常を認めることもある。遺伝子異常についてはよく調べられておらず、発症原因は不明のままである。10,000人に2人発生する、希な難治性疾患で、未だ効果的な治療方法は未確立である。心血管疾患は重症で、予後不良である。患者はたとえ生存しても、心不全や発達遅延により生活面への長期にわたる支障を残す。生命予後に深く関わる肺血管疾患に対して、新生児期から個々の症例に適した治療、管理計画を立て、生涯にわたって、臨床症状に基づいた生活指導や治療を続ける必要がある。最良の治療方法は未確立で、病態、最適な手術の組み合わせ、手術時期、手術のリスク、術後の予後について、今までに大規模な調査は行われてこなかった。
肺動脈低形成症候群の患者を登録し、遺伝学的検査、病態把握、自然歴の把握、手術法と手術時期、予後に関するデータ分析を多施設共同で組織的、体系的に行うことである。各施設で行われた手術の成績を検討し、リスクを調べ、心不全治療の有効性を検討する。データに基づいて肺動脈低形成症候群における治療、管理のための指針を作成する。
研究方法
我が国の本症候群患者を診療している主要施設による多施設共同の疫学研究を行う。
結果と考察
 肺動脈低形成症候群で肺動脈閉鎖+心室中隔欠損+主要体肺側副血管の65例、対照として肺動脈閉鎖+心室中隔欠損の89例の集計を行った。心疾患の合併を100%の例に認め、心室中隔欠損、肺動脈弁狭窄、肺動脈閉鎖、肺動脈低形成を合併していた。術後20年の長期生存率は、肺動脈閉鎖+心室中隔欠損+主要体肺側副血管群では71%であったのに比し、肺動脈閉鎖+心室中隔欠損群では86%であり、肺動脈閉鎖+心室中隔欠損+主要体肺側副血管群の方が、術後20年までの生存曲線は有意に低かった。肺動脈閉鎖+心室中隔欠損+主要体肺側副血管群では幼児期—小児期に肺動脈のuniforcalizationが76例においてなされ、8例は手術不能であった。小児期新生児期手術の生存者のうち、49例でRastelli手術が施行された。手術死亡は8%であった。主肺動脈を認めた61例の20年生存率は84%であったのに対し、主肺動脈を認めなかった23例の20年生存率は50%にすぎなかった。
次いで、単心室血行動態疾患について、肺動脈低形成症候群の遠隔期Quolity of lifeを調べた。肺動脈低形成症候群で、三尖弁閉鎖や肺動脈弁閉鎖では、新生児期の短絡術についで、乳児期にはグレン手術が施行され、グレン手術生存者では、1−2歳でフォンタン手術が施行されていた。フォンタン手術到達は全体の80%にすぎなかった。高度の蛋白漏出性胃腸症に罹患した患者も3%に存在した。肺動脈低形成のためにグレン手術でとどまっている患者のQOLは特に悪いことがわかった。肺動脈低形成症候群に於いては肺動脈末梢狭窄に対してカテーテル治療も施行されるが、その成功率は 50−70%で低い結果であった。
結論
今回の研究では、肺動脈低形成症候群に於いては肺動脈末梢狭窄に対してカテーテル治療も施行されるが、その成功の予後は不良であることがわかった。遠隔期成績は、肺動脈低形成例で悪く、肺動脈が無い例では10年で50%の死亡率であった。このデータにもとづいて、治療指針の作成が可能である。指針が作成されれば、本疾患を持つこどもや成人にとって最適な治療法、管理法が施され、疾患克服のために大きく寄与することができる。長期的にも、難病指定などの指針に用いることができる。ひいては小児、成人の医療、保健のレベルの向上につながるものである。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201415043Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,400,000円
(2)補助金確定額
1,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,075,056円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 1,944円
間接経費 323,000円
合計 1,400,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
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