文献情報
文献番号
201415040A
報告書区分
総括
研究課題名
発作性運動誘発性舞踏アテトーゼ(PKD)の重症度評価及びQOLに 関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H26-難治等(難)-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
黒滝 直弘(長崎大学 大学院医歯薬総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 吉浦 孝一郎(長崎大学 原爆後障害医療研究所)
- 斎藤 加代子(東京女子医科大学 遺伝子医療センター)
- 齋藤 伸治(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
- 白石 裕一(長崎大学医学部医学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、発作性運動誘発性舞踏アテトーゼ(PKD)の診断基準及び、重症度分類を確立することである。2009年、申請者は厚生労働省科研の代表となり、PKDの疫学調査、及び発症メカニズムの解明に取り組んだ。中国からPKDの原因遺伝子はPRRTであることが報告された(Chen et al, 2011)。その後、PKDは良性家族性乳児けいれんとアレル病であること(Ono et al, 2012)が報告され、一方ではPRRT遺伝子の変異が熱性けいれんや、片側麻痺性片頭痛の症例でも同定された。これらのことからPRRT2遺伝子は、他の発作性の神経疾患でも大きな関与を及ぼしていることが示唆され、てんかん学の分野では極めて大きな発見であると2年連続してNature Review Neurologyでコメントされるに至った。現況で、私達は前回の疫学調査を発展させ、PKDの合併症の有無を中心とした臨床データを詳細に収集し、診断基準への一里塚を得ることが極めて重要であると考え、本計画を実施した。
研究方法
本研究遂行の研究体制は日本神経学会、日本小児神経学会の認可および日本精神神経学会の推薦を受けた。1)全国の神経内科医、小児神経科医からの臨床情報の収集及び、血液検体の採取(黒滝、白石、斎藤加代子、斎藤伸二)、2)収集した症例の臨床評価(黒滝、白石、斎藤加代子、斎藤伸二)、3)診断に結びつく可能性のある遺伝疫的学解析(吉浦、黒滝担当)とする。また遵守すべき研究に関係する指針に従い、疫学研究は長崎大学医歯薬学総合研究科(医学系)倫理委員会(承認番号14121243)の元で、また遺伝解析は長崎大学ヒトゲノム遺伝子解析研究倫理審査委員会(承認番号1404072792)の元、実施される。発作性運動誘発性舞踏アテトーゼ(PKD)の疫学や原因遺伝子解析から発症メカニズムを解明し有効な治療方法を構築することを目的として全国の神経内科(4952名)および小児神経(1051名)を専門とされる先生方(計6003名)に記銘式調査票を郵送にて配布し回答と返却をご依頼した。また今後の遺伝子変異解析を考慮し血液検体の収集の可能性も各医師にお聞きした。
結果と考察
回答を得られたのは2382名で、全体の39.7%であった。それぞれの内訳は、神経内科専門医1633名で33.0%、小児神経専門医481名で45.8%である。問1は発作性運動誘発性舞踏アテトーゼ(PKD)の認知度についてである。聞いたことはないと回答した人が全体では232名、4.1%であった。聞いたことはあるが症状など詳しい病態については知らないと回答した人が全体では1161名、20.5%で、詳しい病態についても知っていると回答した人が全体では1011名、17.8%であった。問2においては、治療経験のある医師は929人で、治療対象者となっていた患者は2102人であった。問3から、回答者の現在、担当している医師は311名でPKDの総患者数は426名で、うち合併症を有する患者は治療中147名であった。
本研究で注目した147名の合併症の中では、全合併症のうち乳児の一過性のけいれん、てんかん、が計45%であった。従来よりPKDは良性家族性乳児性けいれん(BFIC)との合併が知られており、興味深いことにPKDの原因遺伝子PRRT2はBFIC単独の原因であることも報告されている。本研究ではBFICをあくまでPKDの合併症として把握しているが単独での疫学調査も望まれると考えるゆえである。内訳は、全身性強直性けいれん、小児てんかん、良性後頭葉てんかん、局在関連てんかん、等である。いずれも9割以上の症例でカルバマゼピンが使用され、5名がフェニトインで治療されていた。PRRT2遺伝子変異がこれらの多様な原因となっている可能性を示唆するものである。
本研究で注目した147名の合併症の中では、全合併症のうち乳児の一過性のけいれん、てんかん、が計45%であった。従来よりPKDは良性家族性乳児性けいれん(BFIC)との合併が知られており、興味深いことにPKDの原因遺伝子PRRT2はBFIC単独の原因であることも報告されている。本研究ではBFICをあくまでPKDの合併症として把握しているが単独での疫学調査も望まれると考えるゆえである。内訳は、全身性強直性けいれん、小児てんかん、良性後頭葉てんかん、局在関連てんかん、等である。いずれも9割以上の症例でカルバマゼピンが使用され、5名がフェニトインで治療されていた。PRRT2遺伝子変異がこれらの多様な原因となっている可能性を示唆するものである。
結論
国内の日本神経学会、日本小児神経学会の会員の先生方が現在、治療中のPKD患者さんの合計は425名である。その中で小児けいれんやてんかん、精神発達遅滞等の合併症を有する患者さんは147名である。PKDは単に発作のコントロールだけではなく合併症の治療に留意する必要がある。なお、本研究は、平成26年度厚生労働科学研究委託業務、難治性疾患等実用化研究事業、「発作性運動誘発性舞踏アテトーゼ(PKD)の発症メカニズムの解明及び新規治療薬の開発に関する研究」(26310301)と関連している。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
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