周産期(産褥性)心筋症の、早期診断スクリーニング検査の確立と抗プロラクチン療法の有効性の検討を含む、診断・治療ガイドライン作成研究

文献情報

文献番号
201415037A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期(産褥性)心筋症の、早期診断スクリーニング検査の確立と抗プロラクチン療法の有効性の検討を含む、診断・治療ガイドライン作成研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 千津子(独立行政法人国立循環器病研究センター 周産期・婦人科部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 智明(三重大学医学部 産科婦人科学教室)
  • 吉松 淳(独立行政法人国立循環器病研究センター 周産期・婦人科部)
  • 北風 政史(独立行政法人国立循環器病研究センター 臨床研究部・心臓血管内科)
  • 植田 初江(独立行政法人国立循環器病研究センター 臨床検査部病理循環器病理学)
  • 岸本 一郎(独立行政法人国立循環器病研究センター 糖尿病・代謝内科遺伝子解析)
  • 石田 充代(明治大学農学部 生命科学科)
  • 大谷 健太郎(独立行政法人国立循環器病研究センター 研究所再生医療部超音波医学・再生医療)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
周産期心筋症は、産科と循環器科の境界にあり、疾患概念すら周知されていない。息切れ・浮腫などの心不全症状は健常妊産褥婦も訴える症状である上、多くの場合で心不全初診医が産科医や一般内科医となり、診断遅延傾向にある。一方、診断時心機能が予後と相関するため、早期診断による予後改善が見込まれる。そこで、本研究は周産期心筋症の早期診断法を検討し、循環器科だけでなく、産科など関連各科の医療従事者が、簡便に利用できる診断ガイドライン作成を目的とする。患者の1割が死亡(胎児死亡も)もしくは心移植待機となっており、現時点では除外診断にすぎない当該疾患の、ガイドライン作成は急務の事項である。
研究方法
現行の全国多施設共同研究(PREACHER: http:www.周産期心筋症.com、UMIN-CTR ID 000005629)を基盤とし、これまでに構築した学際的ネットワーク基盤体制の下、本研究では、ハイリスク妊婦における早期診断検査研究を実施し、当該疾患の診断ガイドラインを作成する。
①ハイリスク妊婦における早期診断検査研究:
周産期心筋症患者の約半数が複数の危険因子(高齢妊娠、妊娠高血圧症候群、多胎妊娠、子宮収縮抑制剤の使用)を有している。妊娠高血圧症候群や帝王切開後等の妊産褥婦を対象にした心臓超音波研究では、1.7%の症例で収縮能の低下を認めたとの報告がある(古株哲也ら、日本産婦人科学会、2012)。そこで本研究は、危険因子をもつ妊婦を対象に、心臓超音波検査、心不全マーカーである脳性ナトリウム利尿ペプチド、切断プロラクチンや高感度トロポニンT、血管新生阻害因子(sFlt-1, PIGF)などの血液バイオマーカー検査を行い、当該患者における適切なスクリーニング検査とその時期について検討する。目標被検者数は1000例とし、研究期間は3年とする。
②診断ガイドラインの作成:上記結果も踏まえ、自他覚所見・危険因子・家族歴などをスコア化し、点数に応じてスクリーニング検査、心不全精査へと続く診断フローチャートを掲載し、早期診断に結び付くガイドラインを作成する。
結果と考察
①ハイリスク妊婦における早期診断検査研究:2014年8月に国立循環器病研究センター倫理員会の承諾を得た。その後、参加施設毎に協議を行い、研究プロトコールを実行可能な範囲で改善し、多施設共同研究を開始した。データ収集用ホームページを作成し、運用を開始した(https://www.ahit.co.jp/ preacher2/)。

②診断ガイドラインの作成:2014年6月と12月にに周産期(産褥性)心筋症ガイドライン作成のための研究会を開催し、診断ガイドライン作成のアウトラインについて協議を行った。今後関連学会と連携をとり、ガイドライン作成を行っていく。
未曾有の少子化が進む中、安心安全な妊娠出産を実現する医療は非常に重要である。周産期(産褥性)心筋症は、心疾患既往のない健常女性が、妊娠産褥期に心不全を発症する、母体間接死亡原因の上位疾患である。しかしながら、疾患が周知されていないこと、産科と循環器科の境界領域にある希少疾患であること、息切れ、浮腫、体重増加といった心不全症状が、健常妊産褥婦も訴える症状であるため、病的かどうかの判断が付きにくいことなどから、診断遅延傾向にある。そこで、患者の8割が危険因子を有していることに着目し、まずはこのような患者を早期診断する目的で多施設共同研究を開始した。現在11施設の参加が決定している。早期診断法を含む診断ガイドラインの作成は世界初であり、実現すれば、当該疾患の予後向上につながると考えられる。
平成26年度、周産期(産褥性)心筋症の早期診断スクリーニング検査確立のための研究を開始し、ガイドライン作成のための研究班も立ち上げた。計画通りに研究は進んでいる。
結論
本研究班は、平成21年に臨床像を明らかにする目的で、わが国初の周産期心筋症全国症例アンケート調査を実施し、平成22年からは、発症ベースで症例を登録する全国多施設共同研究(PREACHER)を行い、全国規模で当該疾患研究を継続して行ってきた。両研究成果をもとに、本研究は危険因子を持つ妊婦を対象に心機能スクリーニング検査を多施設共同で行い、検査の適切な対象者、時期、方法、費用対効果を検討し、スクリーニング検査を含めた早期診断フローチャートを掲載した診断ガイドラインの作成を行う。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201415037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,400,000円
(2)補助金確定額
1,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 240,079円
人件費・謝金 138,430円
旅費 482,100円
その他 216,863円
間接経費 323,000円
合計 1,400,472円

備考

備考
差額472円は自己資金にて精算済

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-