重症多型滲出性紅斑眼障害の克服に向けた新規医療器具の開発

文献情報

文献番号
201415035A
報告書区分
総括
研究課題名
重症多型滲出性紅斑眼障害の克服に向けた新規医療器具の開発
課題番号
H25-難治等(難)-一般-027
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
外園 千恵(京都府立医科大学 視覚機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 今井浩二郎(京都府立医科大学 医療フロンティア展開学)
  • 角 栄里子(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター)
  • 荻野 顕(京都大学大学院 医学研究科 眼科学)
  • 上田真由美(同志社大学 生命医科学部)
  • 小泉範子(同志社大学 生命医科学部)
  • 手良向 聡(京都府立医科大学 生物統計学)
  • 羽室淳爾(京都府立医科大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
70,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症多型滲出性紅斑は、突然の高熱および全身及び粘膜に発疹とびらんを生ずる急性の全身性皮膚粘膜疾患である。近年はStevens-Johnson症候群(SJS)、その重症型である中毒性表皮壊死融解症(TEN)に分類され、いずれも致死率が高く急性期には全身管理が主体となる。しかし救命しても高度の視力障害とドライアイをきたし、社会復帰が極めて困難となる。角膜移植の予後は不良であり、重症多型滲出性紅斑による視覚障害に有効な治療法は、国際的にも確立していない。
急性期に広範囲の角結膜上皮欠損をきたすと、角膜上皮幹細胞疲弊症を生ずる。その後次第に角膜表面を結膜が覆い、角膜混濁に加えて、眼表面全体に及ぶ不正乱視、癒着が高度視力障害とドライアイの要因となる。そこで申請者らは、独自にデザインした直径13-14ミリのハードコンタクトレンズ(輪部支持型HCL)を開発し、角膜上皮幹細胞疲弊症を対象に臨床研究を行った。平成22-24年度に実施した臨床研究では、対象となった本疾患患者 42例53眼 において、視力改善とQOL改善を認めた。
本研究では、輪部型HCLの薬事承認を目指し、医師主導型治験を実施する。
研究方法
担研究者である角栄里子をスタディマネージャー、今井浩二郎を学内治験システムの整備担当、上田真由美を患者対応、荻野顕及び小泉範子を京都大学の患者対応とし月1-2回の定例会議を行い、以下を進めた。
1. 患者リクルート
2. 治験届
3. CROへの業務委託
4. 治験機器の納入
5. 治験の実施
6. 進捗管理・データ収集(
7. 統計解析:新規医療機器による以下の治療効果を検討する。
① 視力改善
② QOL改善
8. 監査(外部業者)
9. 終了報告書・治験終了届
10. 解析結果作成・総括報告書
 解析については手良向聡が検証、また将来に向けた患者病態把握の可能性について羽室淳爾が検証した。
結果と考察
重症多形滲出性紅斑の眼後遺症に対する輪部支持型ハードコンタクトレンズの医師主導治験を開始、全国より患者紹介を得て、順調に症例登録を行った。予定したスケジュール通りに10例の治験を実施し、解析を終了できた。主要及び副次評価項目ともに有意な改善を得た。
結論
重症多形滲出性紅斑の眼後遺症に対する輪部支持型ハードコンタクトレンズの薬事申請を行う。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201415035B
報告書区分
総合
研究課題名
重症多型滲出性紅斑眼障害の克服に向けた新規医療器具の開発
課題番号
H25-難治等(難)-一般-027
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
外園 千恵(京都府立医科大学 視覚機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 今井浩二郎(京都府立医科大学 医療フロンティア展開学)
  • 角 栄里子(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター)
  • 荻野 顕(京都大学大学院 医学研究科 眼科学)
  • 上田真由美(同志社大学 生命医科学部)
  • 小泉範子(同志社大学 生命医科学部)
  • 手良向 聡(京都府立医科大学 生物統計学)
  • 羽室淳爾(京都府立医科大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 重症多型滲出性紅斑は、突然の高熱とともに全身及び粘膜に発疹とびらんを生ずる急性の全身性皮膚粘膜疾患である。近年はStevens-Johnson症候群(SJS)、その重症型である中毒性表皮壊死融解症(TEN)に分類され、いずれも致死率が高く急性期には全身管理が主体となる。しかし救命しても高度の視力障害とドライアイをきたし、社会復帰が極めて困難となる。角膜移植の予後は不良であり、重症多型滲出性紅斑による視覚障害に有効な治療法は、国際的にも確立していない。
 急性期に広範囲の角結膜上皮欠損をきたすと、角膜上皮幹細胞疲弊症を生ずる。その後次第に角膜表面を結膜が覆い、角膜混濁に加えて、眼表面全体に及ぶ不正乱視、癒着が高度視力障害とドライアイの要因となる。そこで申請者らは、独自にデザインした直径13-14ミリのハードコンタクトレンズ(輪部支持型HCL)を開発し、角膜上皮幹細胞疲弊症を対象に臨床研究を行った。平成22-24年度に実施した臨床研究では、対象となった本疾患患者 42例53眼 において、視力改善とQOL改善を認めた。
 本研究では重症多型滲出性紅斑による眼障害の克服を目的に、新規医療器具すなわち輪部型HCLの薬事承認を目指して医師主導型治験を実施する。
研究方法
 医師主導治験を行う前段階として、平成25年10月に医薬品機構での薬事戦略相談事前面談を行い、指導に従い治験機器概要書及び実施計画書を作成した。平成26年1月23日に医薬品機構の対面助言を受け、京都府立医大と京都大学の二施設で治験を実施すること、目標症例数を10例と決定した。各種手順書を整えて、京都府立医科大学附属病院の治験審査委員会に本治験の実施について申請し、平成26年3月に承認を得た。
 平成26年4月に治験届を提出した。稀少疾患であり、短期に10症例を登録して治験を終了する必要があったため、4月上旬に全国の眼科研修プログラム施設(107施設)に治験協力を依頼する手紙を発送した。また患者会において、本治験の開始について会員への情報提供を行った。
 平成26年6月4日に第1症例の登録を行い、治験を開始した。毎週0-1例を登録できるように予約を行い、平成26年9月3日に京都府立医大の最終症例である第8症例を登録した。京都大学では平成26年9月に2症例の登録と行い、平成26年12月16日に最終症例の治験を終了した。
平成27年1月データ固定を行い、治験の結果について解析した。
 治験の開始前である平成26年3月に京都府立医科大学のシステム監査を受けた。また治験終了後にGCP監査を受けた。治験実施と並行して、京都府立医科大学の臨床研究体制の整備に向けて、支援部門の構築とその活動を開始した。
 早い承認を望むこと、また希少疾患であり企業の収益性が低いことから、希少疾病用医療機器の申請を行なった。
結果と考察
 全国より患者紹介を得て、順調に症例登録を行った。予定通り、10例の治験を実施し、主要及び副次評価項目ともに有意な改善を得た。全10症例のうち、治験を中止した症例はなかった。また重篤な有害事象を生じた症例もなかった。
 希少疾病用医療機器として、平成26年12月に承認を得た。
結論
重症多形滲出性紅斑の眼後遺症に対する輪部支持型ハードコンタクトレンズの薬事申請を行う。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201415035C

成果

専門的・学術的観点からの成果
重症多型滲出性紅斑による視覚障害に有効な治療法は、国際的にも確立していない。本研究に用いた輪部支持型ハードコンタクトレンズは、研究代表者らが独自にデザインした形状であり、重症多型滲出性紅斑の重症眼では癒着を伴うこと、は眼表面が瘢痕化に伴って平坦化することを考慮している。装着すると角膜とレンズのあいだに涙液が入って、角膜表面の凹凸不正を補正して視力が向上する。本研究の医師主導治験でその有用性を確認できたことは意義深く、国際的にも注目されるものである。
臨床的観点からの成果
輪部支持型ハードコンタクトレンズを重症多型滲出性紅斑による眼後遺症を有する10例10眼に装用し、統計学的に有意な視力補正効果を認めた。また輪部支持型ハードコンタクトレンズが涙液の蒸発を抑制し、このため眼痛の軽減においても有意な効果を認めた。さらには心の健康も回復した。視力、眼痛、心の健康が改善する医薬品、医療器具はこれまでに例がなく、臨床的に優れたレンズといえる。
ガイドライン等の開発
本研究の成果を生かすため、重症多型滲出性紅斑の診療ガイドラインに記載した。


その他行政的観点からの成果
本医療機器は企業治験が困難であるため、本研究により医師主導治験を実施し、新規医療機器として薬事承認を得た。本医療機器による視力改善と症状の改善は、医療費の軽減、労働力の増加、社会福祉費の軽減にも結び付くものである。
2015年6月 本研究で開発した新規医療機器[CS-100]を薬事申請
2016年2月 薬事承認
2016年10月 処方販売を開始
2019年6月 市販後調査中
その他のインパクト
2015年3月の成果報告会で発表した。

2016年7月2日 日本コンタクトレンズ学会特別セミナーで、本研究における新規医療機器開発の経緯と今後に関する「特別セミナー」を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
外園千恵、山内直樹、前田宗俊、木下茂.重症多形滲出性紅斑の眼後遺症に対する補助具としてのコンタクトレンズの開発.第68回日本臨床眼科学会、神戸、2014.11.13.
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sotozono C, Yamauchi N, Maeda S, et al.
Tear Exchangeable Limbal Rigid Contact Lens for Ocular Sequelae Due to Stevens-Johnson Syndrome or Toxic Epidermal Necrolysis.
Am J Ophthalmol. , 158 (5) , 983-993  (2014)
10.1016/j.ajo.2014.07.012.

公開日・更新日

公開日
2016-05-26
更新日
2019-06-04

収支報告書

文献番号
201415035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
91,500,000円
(2)補助金確定額
91,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 22,645,561円
人件費・謝金 27,388,926円
旅費 2,512,923円
その他 17,837,590円
間接経費 21,115,000円
合計 91,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
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