先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド持続皮下注療法の有効性・安全性に関する研究

文献情報

文献番号
201415025A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド持続皮下注療法の有効性・安全性に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-070
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
依藤 亨(大阪市立総合医療センター 小児代謝・内分泌内科)
研究分担者(所属機関)
  • 横谷 進(国立成育医療研究センター 生体防御系内科部)
  • 緒方 勤(浜松医科大学 医学部 小児科)
  • 有阪 治(獨協医科大学 医学部 小児科)
  • 長谷川 行洋(東京都立小児総合医療センター 内分泌代謝科)
  • 増江 道哉(木沢記念病院 小児科)
  • 西堀 弘記(木沢記念病院 放射線科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
14,834,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性高インスリン血症の内科的治療としてはジアゾキサイド内服のみが保険適用で、それに反応不良な場合は中枢神経後遺症を避けるため膵亜全摘が行われてきたが、術後大部分の症例に医原性のインスリン依存性糖尿病を発症した。本研究は、膵亜全摘を極力さけるため、ジアゾキサイド不応性先天性高インスリン血症に対してオクトレオチド持続皮下注療法の医師主導臨床研究を日本小児内分泌学会の協力を得て行い、最終的な保険承認を目指すための研究である。本研究では平成24年度に我が国での使用例を後方視的に調査し、オクトレオチドの臨床的効果について、予備的検討を行ない、一部症例では本治療により膵亜全摘が回避されることを確認している。また、研究に遺伝子診断・18F-DOPA PET診断も組み込み、最新の治療体制とするとともに18F-DOPA PET診断に関する臨床的検討も並行して行った。
研究方法
医薬品医療機器総合機構での対面助言の上、プロトコルの作成を行った。その結果、先進医療として行う少数の前向き介入試験と観察研究としてのレジストリ研究を組み合わせて研究を行い、本療法の有効性・安全性を確認したうえで保険承認を目指すこととした(依藤、横谷、緒方、長谷川、有阪)。レジストリ研究は平成25年8月に開始し、目標15例のところ14例を登録してデータ登録中である。また、介入試験は先進医療Bとして行うこととなり、先進医療会議の承認を得て、平成26年1月1日より開始した。また、治療にあたり後遺症のない膵部分切除で治癒する可能性がある膵局所型先天性高インスリン血症を診断するため、遺伝子診断(依藤)と18F-DOPA PET診断を行い、また18F-DOPA PETのより良い施行方法を検討した(増江、西堀、緒方)。
(倫理面への配慮)
臨床試験、遺伝子診断、18F-DOPA PETともHelsinki宣言と関連ガイドラインに準拠した倫理面への配慮を行い、所属施設倫理審査委員会の承認の上、施行した。
結果と考察
当初の予定症例数、レジストリ研究15例以上、介入試験5例に対し、実際に期間内にエントリーできたのはレジストリ研究13例、介入試験4例であった。レジストリ研究では評価可能な11例中10例が臨床的に有効、介入研究では平均血糖50mg/dL以上の上昇とする当初の有効性項目の設定は達成できなかったが、そこに及ばない血糖 上昇であった4例中2例が臨床的に有効で輸液を離脱した。重篤な有害事象はみられなかった。研究期間を1年間延長して目標症例数をリクルートする予定である(依藤、横谷、緒方、長谷川、有阪)。18F-DOPA PETについては、その診断的意義、限界を検討した。局在性病変では極めて有用な局在診断方法であることが確認できたほか、一部の症例ではびまん性、局所性の鑑別が困難であることも明らかになった(増江、西堀、緒方)。平成27年3月時点で、まだ症例集積中であるが、ジアゾキサイド不応性の先天性高インスリン血症の多くの症例に対して、オクトレオチド皮下注射、持続皮下注射が有効で、一部症例では外科手術を回避できることが確認された。18F-DOPA PETは局所性病変の同定に極めて有用であるが、診断が困難な場合もあり、遺伝子診断、臨床所見と合わせた総合的判断が必要と考えられる。
結論
ジアゾキサイド不応性の先天性高インスリン血症に対してオクトレオチド皮下注射、持続皮下注射の有効性安全性を確認するための臨床試験を行った。予定症例数に不足しているが、大部分の症例に対して有効で、重篤な有害事象なく、輸液離脱して外科手術を回避できた。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201415025B
報告書区分
総合
研究課題名
先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド持続皮下注療法の有効性・安全性に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-070
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
依藤 亨(大阪市立総合医療センター 小児代謝・内分泌内科)
研究分担者(所属機関)
  • 横谷 進(国立成育医療研究センター 生体防御系内科部)
  • 緒方 勤(浜松医科大学 医学部 小児科)
  • 有阪 治(獨協)
  • 長谷川 行洋(東京都立小児総合医療センター 内分泌代謝科)
  • 増江 道哉(木沢記念病院 小児科)
  • 西堀 弘記(木沢記念病院 放射線科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性高インスリン血症の内科的治療としてはジアゾキサイド内服のみが保険適用で、それに反応不良な場合は中枢神経後遺症を避けるため膵亜全摘が行われてきたが、術後大部分の症例に医原性のインスリン依存性糖尿病を発症した。本研究は、膵亜全摘を極力さけるため、ジアゾキサイド不応性先天性高インスリン血症に対してオクトレオチド持続皮下注療法の医師主導臨床研究を日本小児内分泌学会の協力を得て行い、最終的な保険承認を目指すための研究である。研究に遺伝子診断・18F-DOPA PET診断も組み込み、最新の治療体制とするとともに18F-DOPA PET診断に関する基礎的、臨床的検討も並行して行った。
研究方法
(臨床試験)平成24年度に我が国での使用例を後方視的に調査し、オクトレオチドの臨床的効果について、予備的検討を行った。引き続き、より詳細に前方視的に有用性・安全性を確認するための臨床研究をデザインし、医薬品医療機器総合機構での対面助言の上、プロトコルの作成を行った。その結果、先進医療として行う少数の前向き介入試験と観察研究としてのレジストリ研究を組み合わせて研究を行い、本療法の有効性・安全性を確認したうえで保険承認を目指すこととした(依藤、横谷、緒方、長谷川、有阪)。また、治療にあたり後遺症のない膵部分切除で治癒する可能性がある膵局所型先天性高インスリン血症を診断するため、遺伝子診断(依藤)と18F-DOPA PET診断を行い、また18F-DOPA PETのより良い施行方法を検討した(増江、西堀、緒方)。
(倫理面への配慮)
臨床試験、遺伝子診断、18F-DOPA PETともHelsinki宣言と関連ガイドラインに準拠した倫理面への配慮を行い、所属施設倫理審査委員会の承認の上、施行した。
結果と考察
当初の予定症例数、レジストリ研究15例以上、介入試験5例に対し、実際に期間内にエントリーできたのはレジストリ研究13例、介入試験4例であった。レジストリ研究では評価可能な11例中10例が臨床的に有効、介入研究では平均血糖50mg/dL以上の上昇とする当初の有効性項目の設定は達成できなかったが、そこに及ばない血糖 上昇であった4例中2例が臨床的に有効で輸液を離脱した。重篤な有害事象はみられなかった。研究期間を1年間延長して目標症例数をリクルートする予定である(依藤、横谷、緒方、長谷川、有阪)。18F-DOPA PETについては、核種のより良い合成方法を確立するとともに、その診断的意義、限界を検討した。局在性病変では極めて有用な局在診断方法であることが確認できたほか、一部の症例ではびまん性、局所性の鑑別が困難であることも明らかになった(増江、西堀、緒方)。ジアゾキサイド不応性の先天性高インスリン血症の多くの症例に対して、オクトレオチド皮下注射、持続皮下注射が有効で、一部症例では外科手術を回避できることが確認された。18F-DOPA PETは局所性病変の同定に極めて有用であるが、診断が困難な場合もあり、遺伝子診断、臨床所見と合わせた総合的判断が必要と考えられる。
結論
ジアゾキサイド不応性の先天性高インスリン血症に対してオクトレオチド皮下注射、持続皮下注射の有効性安全性を確認するための臨床試験を行った。予定症例数に不足しているが、大部分の症例に対して有効で、重篤な有害事象なく、輸液離脱して外科手術を回避できた。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201415025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
先天性高インスリン血症に対するオクトレオチド持続皮下注射療法の臨床的有用性を、初めての前向き介入研究としてバイアスのかからない試験で検討した。有効で、ブドウ糖輸液から離脱できた症例があった半面、2例の無効例も経験した。3例の有効例はいずれも治療を継続し、本報告の時点までに治癒により治療終了した。無効例は、従来最も問題とされていたKATPチャネル変異の劣性遺伝型、局所型ではなく、片アリル変異の優性遺伝性ないしKATPチャネルに変異のない症例であったところが興味ある結果であった。
臨床的観点からの成果
ジアゾキサイド不応性の先天性高インスリン血症に対してオクトレオチド持続皮下注射療法が、有用であることが明らかになった。また、レジストリ研究も合わせて、重篤な有害事象が見られなかった点も、本療法の有用性を支持する結果であった。平成28年7月末を主たる解析時点として先進医療総括報告書をまとめ、またEndocr J誌に投稿、採択された。
ガイドライン等の開発
平成28年度に、日本小児内分泌学会、日本小児外科学会の合同ワーキンググループによって、Mindsの手順に沿った本症の診療ガイドラインを作成し、両学会の承認を得たうえで、それぞれのホームページに公開したほか、Mindsのガイドラインライブラリ―にも掲載された。さらに日本小児内分泌学会ガイドライン集の一部として出版された。また、成果を国際的に公表するため、同一の内容を英文化してClin Pediatr Endocrinol誌に投稿し採択された。
その他行政的観点からの成果
新生児の超希少疾患では、どの施設に症例が発生するか不明で、また患者の移動も困難なため、企業治験は困難である。本研究はこういった疾患に学会主導で前向き臨床研究を行う道筋のひとつを示したものであり、新生児医療を本来の保険診療の道筋の乗せるモデルケースといえる。成果をもって、未承認薬保険適応外薬検討会議に迅速化スキームで申請し、有用性が認められて企業に開発要請が出された。
その他のインパクト
日本小児内分泌学会、日本小児科学会、未熟児新生児学会において周知をはかったことにより本症に対する小児科医の認知度を向上させた。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
7件
新生児低血糖、先天性高インスリン血症に関するもののみ抜粋
その他論文(英文等)
1件
新生児低血糖、先天性高インスリン血症に関するもののみ抜粋
学会発表(国内学会)
9件
新生児低血糖、先天性高インスリン血症に関するもののみ抜粋
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
増江道哉、西堀弘記、高田勲矢他
先天性高インスリン血症の18F-DOPA PETによる局在診断と治療予後
日本小児科学会雑誌 , 118 , 1342-1349  (2014)
原著論文2
Yorifuji T
Congenital hyperinsulinism: current status and future perspectives.
Annals of Pediatric Endocrinology and Metabolism. , 19 , 57-68  (2014)
原著論文3
Yorifuji T, Masue M, Nishibori H.
Congenital hyperinsulinism: Global and Japanese perspectives.
Pediatrics International , 56 , 467-476  (2014)
原著論文4
158. Yorifuji T, Horikawa R, Hasegawa T et al.
Clinical practice guidelines for congenital hyperinsulinism.
Clin Pediatr Endocrinol. , 26 , 127-152  (2017)
原著論文5
159. Hosokawa Y, Kawakita R, Yokoya S et al.
Efficacy and safety of octreotide for the treatment of congenital hyperinsulinism: a prospective, open-label clinical trial and an observational study in Japan using a nationwide registry.
Endocr J , 64 , 867-880  (2017)

公開日・更新日

公開日
2016-05-26
更新日
2019-06-03

収支報告書

文献番号
201415025Z