文献情報
文献番号
201415017A
報告書区分
総括
研究課題名
結節性硬化症の皮膚病変に対する有効で安全性の高い治療薬の開発と実用化
課題番号
H24-難治等(難)-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
金田 眞理(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 片山 一朗(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
- 玉井 克人(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
- 中村 歩(大阪大学医学部付属病院)
- 齋藤 充弘(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
112,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
結節性硬化症(TSC)はmTORの活性化の結果、全身に過誤腫を生じる遺伝性疾患で、精神発達遅滞、てんかん、自閉症などの神経症状と全身の腫瘍を特徴とする。頻度は1/6,000で本邦推定患者数は1.2~1.5万人で、未成年者の割合も高い。TSCの顔面の血管線維腫などの皮膚腫瘍は、出血や二次細菌感染、痛み、機能障害を引き起こし、整容的には社会生活のQOLを低下させ患者や介護者にとって大きな問題である。しかしながら、現時点の治療法は外科的な対症療法のみで、乳幼児の患者や重症患者には有効な治療法が無い。最近mTOR阻害剤のラパマイシンの全身投与により、皮膚を含む全身の腫瘍の抑制が報告されたが、全身投与では副作用が問題となりリスクファクターの高い重症患者には使用しがたい。そこで安全性の高い本症皮膚病変に対する治療薬として、ラパマイシンの外用治療薬を開発し、治療法のない患者に新規の治療薬を提供することが必要と考えられた。本研究の最終目的は、結節性硬化症(TSC)患者にとって最も苦痛の強い顔面の血管線維腫を含む、TSCの皮膚病変に対して有効で安全な外用薬を製造し、薬事申請、承認を得て、外用薬を市販化し、患者が必要に応じて、いつでもどこでも本外用薬を使用できる様にすることである。そのなかで、2012年から2014年の3年間の研究の目的は,前述の目的のために、医師主導治験を施行し、本外用薬のPOCを取得する事である。今年度は昨年度から開始した医師主導治験を終了し、総括報告書を作成し、POCを取得し、企業に譲渡し薬事申請、市販化に向ける。
研究方法
現薬GMPを輸入し、GLPを遵守する当院薬剤部でGMPレベルの外用薬を製造し、その安定性の検証をおえた。さらにGLPレベルの前臨床の動物試験も施行した。これらの結果を基に、ICH-GCP準拠の治験実施計画書と治験薬概要書をそろえて2013年10月に治験届をPMDAに提出し、2013年12月より小児18人、成人18人、計36人を対象とした、医師主導治験「結節性硬化症に伴う顔面皮膚病変に対するOSD-001 の安全性と有効用量を推定する投与量ごとにプラセボ対照二重盲検無作為化並行群配置とする群増量試験(第1/2 相)」を開始した。2014年度は、2013年12月から開始した、医師主導治験を2014年7月に終了し、データを解析し,医師主導治験総括報告書を作成した。重篤な副作用も認められず、有効性に関しても結果は極めて良好で、POCの取得に問題は無いと考えられる。今後、2013年度に契約を締結した研究協力企業による、オーハンドラッグの申請と同時に、今回の結果が極めて良好であったので、この医師主導治験の結果を持って薬事申請の承認を得る目的で、PMDAの対面助言を計画し、本薬剤の薬事申請、承認、市販を目指す。同時に、2014年度中に、本医師主導治験終了後の企業への以降を迅速、順調に行うための企業への技術移行も大部分終了している。また、本試験中に本外用薬の新規作用が発見されたため、本薬剤の適応拡大も検討中である。
結果と考察
結果は、重篤な副作用は認められず、有効性に関しても、プラセボと有意差が認められ、本薬剤は安全で、極めて有好であることが確認でき、POCの取得に問題は無いと考えられる。本試験でラパマイシン外用薬の安全性と有効性が確認でき、本薬剤により、治療法のなかった患者に新規の治療を提供でき、患者の要望も強いため、本医師主導治験の結果を持って薬事申請の承認を得る目的で、PMDAの対面助言をおこない、早期の実用化を目指す。また、本外用薬の新規作用を含め、本薬剤の適応拡大、グローバルな展開も検討中である。
結論
ラパマイシン外用薬は、TSC患者の血管線維腫に対する、安全で有効な薬であり、早期の実用化が期待されている。
公開日・更新日
公開日
2017-03-31
更新日
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