文献情報
文献番号
201415011A
報告書区分
総括
研究課題名
肝細胞増殖因子による筋萎縮性側索硬化症の新規治療法開発
課題番号
H24-難治等(難)-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
青木 正志(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 浅田 隆太(名古屋医療センター)
- 安達 喜一(クリングルファーマ株式会社 事業開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
387,439,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、難病中の難病といわれる神経変性疾患・筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対して肝細胞増殖因子(HGF)を用いた治療法開発をさらに推進し、第II相臨床試験(医師主導治験)実施要件の整備を終了することを目的とする。研究代表者らの施設では、1993年に初の家族性ALS原因遺伝子として発見されたSOD1に注目し、ヒト変異SOD1導入ラットを新しいALSモデル動物として世界に先駆けて確立した。このモデルを用いることで、薬剤をALS病態の主座である中枢神経系に効率良く到達できる髄腔内投与法によるALS薬剤開発研究が、効率的に行えるようになった。このALSラットに対するヒト組換えHGF蛋白質の髄腔内持続投与は顕著な治療効果を示し、発症期からの投与にもかかわらず約63%の罹病期間延長効果を示した。
研究方法
本邦発の運動ニューロン保護因子HGFの髄腔内投与によるALS治療法開発は平成23~26年度、第I相臨床試験を実施した。本研究では、ALS患者における有効性を確認する第II相臨床試験開始に必須の、(1) 非臨床安全性試験、(2) 原薬製造、(3) 原薬・治験薬関連試験、(4) 投与デバイスの改良、(5) 第II相治験プロトコル作成を実施する。
結果と考察
難治性疾患の象徴であるALSに対して有効性が強く期待できるHGFを用いたALS治療薬開発をさらに推進した。東北大学病院で実施していた第I相臨床試験は単回投与、反復投与を計画通り終了した。反復投与では、単回投与における中用量と高用量の2群において安全性と薬物動態を確認できた。この第I相臨床試験をふまえ、第II相臨床試験の対象基準、除外基準、用法用量、サンプルサイズ、主要・副次評価項目を設定した新規プロトコル案を策定できた。また、非臨床安全性試験(カニクイザルによる慢性毒性GLP本試験、ラットおよびウサギを用いた胚胎児試験、リルゾールとの相互作用試験)、原薬GMP製造、原薬・治験薬関連試験(規格・分析試験、純度試験等)、投与デバイス改良品プロトタイプ作製を実施でき、研究期間終了までに第II相臨床試験を実施するための要件整備が概ね終了した。以上のように、第II相臨床試験で計画中の長期投与に関する安全性データを得ることができ、同試験に要する治験薬の原薬、品質保証データ、さらに、改良投与デバイスプロトタイプを確保できた。HGFのALSに対するproof of concept(POC)を取得するため、第II相臨床試験を計画するとともに、別途、被検候補者を効果的にリクルートするためのレジストリシステム構築研究も進行中である。
結論
ALSを対象としたHGFの第II相臨床試験(医師主導治験)を開始するために必要な要件整備を概ね終了することができた。PMDAとの相談を経てプロトコルを確定し、早期の治験届提出をめざす。世界的にALS創薬が求められている中、本研究は本邦発の運動ニューロン保護因子HGFによる画期的な新規ALS治療薬として世界に発信できると期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
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