造血幹細胞移植ドナーの安全性確保とドナーの意向を尊重した造血細胞の利用の促進並びに相互監査体制の確立

文献情報

文献番号
201415007A
報告書区分
総括
研究課題名
造血幹細胞移植ドナーの安全性確保とドナーの意向を尊重した造血細胞の利用の促進並びに相互監査体制の確立
課題番号
H26-難治等(免)-一般-101
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院 造血細胞移植センター)
研究分担者(所属機関)
  • 日野 雅之(大阪市立大学大学院医学研究科)
  • 田中 淳司(東京女子医科大学血液内科学講座)
  • 上田 恭典(倉敷中央病院血液内科)
  • 西田 徹也(名古屋大学医学部付属病院血液内科)
  • 熱田 由子(一般社団法人日本造血細胞移植データセンター)
  • 高梨 美乃子(日本赤十字社血液事業本部)
  • 飯田 美奈子(愛知医科大学医学部造血細胞移植振興寄附講座)
  • 大橋 一輝(がん・感染症センター都立駒込病院血液内科)
  • 室井 一男(自治医科大学附属病院輸血・細胞移植部、無菌治療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,539,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 高梨美乃子 日本赤十字社血液事業本部 中央血液研究所(平成25年4月1日~平成25年12月31日) →日本赤十字社血液事業本部(平成26年1月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」の成立により、国、地方公共団体、医療関係者は、ドナーの人権と安全性の確保及び造血幹細胞の品質管理を通じ、わが国の患者に平等に最善の時期に最適な移植ソースを利用した移植を受けることができるよう努めることになった。本研究では、骨髄・末梢血幹細胞移植ドナーの安全性の確保をメインテーマとし、臍帯血を含めた、ドナーリクルート、造血幹細胞採取の安全性の向上・標準化を行う。合わせて、ドナーの人権、安全性を担保したうえでの造血幹細胞採取の効率化、造血幹細胞産物の凍結、品質管理、国際交換、細胞治療への応用、ドナー・レシピエントDNAバンクのための調査およびシステム作りを行う。1年目に本邦および各国の現状について調査し、課題を明らかにする。
研究方法
① ドナー安全情報の収集・解析・現場への情報発信を、日本造血細胞移植データセンター(JDCHCT)とともに行う形を作り上げる。
② 造血幹細胞採取の安全性確保・標準化のためにガイドラインを検討し、造血幹細胞数測定の標準化のための手順書を作るなど採取関係の技術の標準化を行う。造血幹細胞採取の効率化・適正化のためには、ドナーの安全に留意した上での、G-CSFの外来投与、入院期間の短縮に努めドナーの負担を軽減するとともに、凍結についての適正な形を作る策などを検討する。
③ 相互監査システム(日本・アジア版FACT/JACIE/ACTA)の確立のために「院内における血液細胞処理に関する指針」など、各種造血幹細胞移植に関わる基準・指針の遵守が行われているか検証するシステムを作る
④ 細胞治療の基盤整備を行う。
⑤ 血縁者間における患者、ドナーのDNA等試料を利用した研究は、本邦における移植成績の向上に大きく貢献した。遺伝的なバックグラウンドが少ない血縁者間のペアのDNAバンクは、本邦のみならず世界の移植に貢献できることが期待される。
結果と考察
平成26年度は班員の会議を4月、7月に行い、本邦および各国の現状について訪問調査、文献調査、アンケート調査などを行い、課題を把握した。血縁ドナー登録については、日本造血細胞移植学会で行っていたものを、新たに発足した日本造血細胞移植データセンター(JDCHCT)に引き継ぐ作業を開始した。ワークショップをアフリカで開催し、WHOの参加のもと、ドナー安全についても討議を行った。造血幹細胞提供の最適化のために、造血幹細胞移植支援機関が行う役割を公表し議論を行った。適切な末梢血幹細胞採取方法の実施計画書を作成するとともに、凍結に関するアンケートを輸血・細胞移植学会の意見も聞き作成した。「院内で行われる血液細胞処理のための指針」についての、国内施設での遵守状況について発表し、現在改訂版を作成している。「第三者末梢血から樹立したCMV-CTL療法の臨床研究」として、非血縁者造血幹細胞を利用した細胞障害性T細胞治療についての臨床研究を開始した。本邦におけるドナー・レシピエントDNAバンクの設立のために米国CIBMTRのResearch Samples Repositoryの調査を行うとともに、骨髄バンク検体保存事業との統合について議論した。
主治医が重篤と判断するドナー有害事象は、骨髄採取で0.5%、末梢血幹細胞採取で1.3%と、この10年間減少していない。ドナー安全は移植医療における最重要な基盤であり、これを0にするために、日本造血細胞移植学会、骨髄バンクが連携を緊密にし、情報収集並びに発信の一元化と医療安全の視点からの対応が望まれる。すなわち、ドナー有害事象の緊急報告制度の確立、原状復帰のための支援、原因究明と防止対策作成の一連の流れを管理する一つのシステムが必要である。合わせて、自家移植における造血幹細胞採取における安全性の把握についても検討が望まれる。また、効率的な造血幹細胞提供はドナー安全の見地からも必要であり、造血幹細胞数測定の標準化、凍結の手順書、採取方法の適正化については引き続き、多方面とのコンセンサスを得ながら進めていくことが望まれる。これらのことに加え、DNAバンク、細胞治療への利用などドナーへの説明と理解を得る努力は、本邦の細胞治療の発展に必須である。さらに、欧米のような監査システムを早急に開始することがドナー安全、品質管理のために必須であり、来る国際間の細胞製剤の交換に必要になると予想される。
結論
ドナー安全という移植医療の根幹をなす課題について、現在ある問題点を洗い出すことができた。ドナーソース別に異なる安全情報の管理、対策作成の一元化が課題である。造血幹細胞採取方法の適正化、相互監査の推進は、ドナー安全の見地からだけでなく、移植成績の向上に必要であり、さらには今後発展していく細胞療法を本邦から発信していくために必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201415007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,200,000円
(2)補助金確定額
7,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 942,816円
人件費・謝金 365,283円
旅費 2,071,102円
その他 2,169,041円
間接経費 1,661,000円
合計 7,209,242円

備考

備考
不足分は
自己資金 9,228円
利息    14円
合計   9,242円を換算してあります。

公開日・更新日

公開日
2016-08-16
更新日
-