小児心臓移植医療の社会的基盤に関する研究

文献情報

文献番号
201415003A
報告書区分
総括
研究課題名
小児心臓移植医療の社会的基盤に関する研究
課題番号
H25-難治等(免)-一般-102
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中西 敏雄(学校法人 東京女子医科大学 医学部循環器小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 市田 蕗子(富山大学 医学部小児科)
  • 賀藤 均(国立成育医療センター 循環器科)
  • 小川 俊一(日本医科大学 小児科)
  • 山岸 敬幸(慶應義塾大学 医学部小児科)
  • 土井 庄三郎(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 住友 直方(埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)
  • 犬塚 亮(東京大学 医学部小児科)
  • 白石 公(国立循環器病センター 小児循環器診療部)
  • 朴 仁三(榊原記念病院 小児科)
  • 小野 安生(静岡県立こども病院 循環器科)
  • 丹羽 公一郎(聖路加国際病院 循環器内科)
  • 佐地 勉(東邦大学医療センター大森病院 小児科)
  • 岡田 芳和(東京女子医科大学 医学部脳外科)
  • 日沼 千尋(東京女子医科大学 看護学部)
  • 福嶌 教偉(大阪大学 大学院医学系研究科重症臓器不全治療学寄附講座)
  • 中川 聡(国立成育医療研究センター 手術集中治療部)
  • 清水 直樹(東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部)
  • 山崎 健二(東京女子医科大学 心臓血管外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)小児心筋症患者の登録システムを構築し、小児心筋症の内科管理と予後についての調査研究を施行し、心臓移植が必要な患者数を把握すること、2)我が国の小児脳死患者数と臓器提供できる体制についての調査を行うこと、3)国内外の小児心臓移植実施施設についての調査をおこなうことである。
研究方法
[レシピエント]本研究では、小児心筋症患者の登録システムを構築し、小児心筋症の内科管理と予後についての調査研究を施行し、移植が必要な患者数を把握する。18歳以下の小児心筋症患者の病態、治療、遺伝子解析を入力する登録システムを作成する。後方視的研究では、各分担研究施設において、過去20年間(1992-2012)の患者を登録する。以上の調査により、小児心筋症の病態と予後を調べ、移植が必要な患者数を把握する。(25-27年度)
[ドナー] H26年度も引き続き、我が国の小児脳死患者数と臓器提供できる体制について、関連学会の会員にアンケート調査を行う。小児の脳死判定体制、施設内各種委員会の設置、脳死下臓器移植のオプション呈示の体制、施設内での脳死下臓器提供の体制整備など、小児の臓器提供のための環境整備についての実態調査を行う。環境整備にインセンティブをつけていく方法について、国外の調査も行う。(26年度)
結果と考察
1.心筋症小児患者の病態
18歳以下の拡張型心筋症(特発性、心筋炎後)、肥大型心筋症、拘束型心筋症、左室緻密化障害、心内膜線維弾性症を診療している主要施設による多施設共同の疫学研究としてスタートした。各分担研究者は、所属する施設の小児心筋症患者を登録し、病態、治療、予後などに関するデータを収集した。全国で、711例の臨床データの収集を行った。拡張型、拘束型心筋症の予後が悪かった。
小児(18歳未満)心筋症 711例を集計
小児の拡張型心筋症:220例
死亡ないし移植回避率は5年で 65%、10年で 60%。年齢による有意差はなし
小児のRCM:54例
死亡ないし移植回避率:5年で40%
小児の肥大型心筋症:277例
死亡ないし移植回避率:10年で90%

中西により遺伝子解析を行った。本研究開始後に、18歳以下で発症した心筋症患者77例の臨床データを集計した。さらに全例で、βミオシン重鎖(βMHC)、ミオシン結合蛋白(MyBPC)、トロポニンT (TNT),トロポニンI (TNI),トロポミオシン(TPM1)、ミオシン軽鎖(MYL2, MYL3)、αアクチン(ACTC)の8個の遺伝子変異の有無をダイレクトシーケンス法で調べた。心筋症の内容は、肥大型53例、拡張型14例、拘束型5例、左室緻密化障害5例であった。
 遺伝子変異は、βミオシン重鎖(βMHC)16例、ミオシン結合蛋白(MyBPC)6例、トロポニンT (TNT)3例,トロポニンI (TNI)3例,トロポミオシン(TPM1)1例、ミオシン軽鎖(MYL2, MYL3)1例、重複した変異4例であった。拡張型、拘束型心筋症の予後は悪かったが、遺伝子変異による予後の差は認めなかった。トロポニンT変異の家系に突然死を認めた。
2.移植必要患者数
年間の小児移植適応患者数は、約50名の新規患者が発生している。そのうち、3名が死亡している。
3.心臓移植患者数
2014年までに施行された小児心臓移植14例のうち、ドナーが10歳未満で、レシピエントも10歳未満は、2例のみである。
4.小児ドナー数
18歳未満のドナーは8例のみである。
5.我が国での小児心臓移植施設
11歳未満に移植可能なのは、大阪大学、国立循環器病研究センター、東京大学。東京女子医科大学の4施設である。11歳以上に移植可能なのは、上記に加え、東北大学、九州大学、北海道大学、埼玉医科大学、岡山大学の9施設である。
6.我が国での小児心臓移植施設基準
外科医の基準として、1)心臓移植経験者、外国において Transplantation Fellow または心臓移植実施施設 でSurgical (Clinical) Fellow の経験を有する者、またはこれに相当する経験を有する者が複数名、常勤していること。 2) 心臓外科医 チーム内に以下の条件を満たす常勤の心臓外科医(前項の心臓移 植経験者と重複可)か5 名以上いること。3)心臓外科医チーム内に小児の先 天性心疾患を専門とする心臓外科医か 2 名以上いることとなっている。我が国の多くの小児病院にとって、1)と2)の条件を満たすことは困難な状況である。
結論
小児心筋症の予後は、遺伝子型によらず不良である。心臓移植しか生存する方法がない予後不良の小児患者が存在するが、我が国では依然小児ドナーは少なく、今後、小児移植医療の発展と小児心臓移植体制の確立が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2015-08-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201415003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,060,000円
(2)補助金確定額
8,060,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,151,126円
人件費・謝金 120,000円
旅費 836,602円
その他 92,272円
間接経費 1,860,000円
合計 8,060,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-08-16
更新日
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