文献情報
文献番号
201414015A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫疾患に対する有効な治療法の確立に関する研究
課題番号
H25-難治等(免)-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田中 栄(東京大学医学部附属病院 整形外科)
研究分担者(所属機関)
- 岡 敬之(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
- 門野 夕峰( 東京大学医学部附属病院 整形外科 )
- 安井 哲郎(帝京大学溝口病院 整形外科)
- 大橋 暁(国立病院機構相模原病院 整形外科)
- 飯室 聡(東京女子医科大学 先端生命研究所)
- 松平 浩(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
- 吉村 典子(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 関節疾患総合研究講座)
- 田中 良哉(産業医科大学医学部 第一内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
免疫疾患の中でも、本邦での有病者数が70万人と推定される関節リウマチ(RA)患者の有効な治療法の確立は喫緊の課題である。メトトレキサート(MTX)や生物学的製剤など分子標的薬の登場により多くのRA患者は病勢がコントロールされつつあるが、一方で関節破壊が抑制できずに薬物でのコントロールに難渋する例も散見されており、全てのコースのRA患者治療を的確かつ効率的に規定するアルゴリズムの確立が求められている。治療アルゴリズムを確立するためには、まずRA診断の標準化が必要とされるが、RAの評価に使用される評価ツールは煩雑で臨床での使用が難しいものも多く、簡易かつ信頼性の高い評価ツールの普及が望まれる。
研究方法
1)RA患者における構造学的評価用の医用画像定量計測ICT(information and communication technology)ツールの臨床応用(X線/CT/MRI)、2)EDC(Electronic Data Capture)による即時性・信頼性を向上させたデータサンプリング、3) RA患者臨床評価における統計学的検討(疼痛遷延化のスクリーニングツールの開発)、をサブテーマに、新たな評価法の確立に向けた臨床応用を行う。また整形外科を中心とした研究グループの特性を生かし、4)RA患者外科治療における機能改善を評価のための工学的アプローチ、を考案しておりPreliminaryな検討を行う。更には、 評価法の信頼性を確認するため、5)一般住民コホートを用いたRA関連指標の疫学的検証、を行うとともにMTXと生物製剤の併用療法にも拘らず、約1割の症例で関節破壊が進行するという現状を顧みてTNF阻害薬使用下に於いても骨軟骨破壊進行に寄与する危険因子を同定するため、6) 治療にもかかわらず関節破壊が進行するRA患者の危険因子、を検討する研究を行う。
結果と考察
構造学的評価用の医用画像定量計測ICTツールは膝・股関節・脊椎・手のX 線自動評価ソフトウエア精度検証も終了し、EDCによるX線画像収集も進み、X線画像データベース(臨床情報を含む)を用いて、RAの専門医による読影とソフトウエアによる検出を比較して検討を行った結果、スクリーニングツールとしての有用性が確認できた。CTでは有限要素法がRA患者へのPTH製剤の効果判定に有用であること、MRI画像においてはRAとOAでは軟骨量の低下する部位に違いがあるという興味深い知見を得ており、症例を蓄積し詳細な解析予定である。RAの疼痛遷延化のスクリーニングツールとして、言語的に妥当な翻訳がなされた日本語版Start Backスクリーニングツール及びGenericスクリーニングツールが完成し、日常診療における簡易な評価法として導入が可能となった。工学アプローチでは、RA患者の歩行時のElevation angle の時系列データを、主成分分析を用いて解析しRA患者では、第2 主成分が健常者と異なることが示された。Elevation angleは簡易なセンサーシステムでも計測可能であり、今後簡易な計測法への導入を予定している。疫学的検証では抗CCP抗体陽性2.0%、リウマチ因子陽性7.4%という疫学指標が明らかになり、今後この一般住民コホートを用いて、医用画像を詳細に検討予定である。RA関連指標としてMBDAスコアは、疾患活動性指標の代用マーカーとして有用であるのみならず、関節破壊の進行を従来のDAS28ESR以上に良好に予測する因子であること、14-3-3ηはRAの疾患活動性、関節破壊とも関連する可能性があることが示唆された。今後疾患活動性指標、血清学的マーカー、医用画像所見を比較評価するべく症例を蓄積中である。
結論
新たな評価法の確立に向けたValidationを行い実用段階現在までの検討を行うともに、住民コホートによる検証の準備と、治療難治例に関して危険因子を同定することが出来た。本研究を推進することにより、RA診断の標準化が図られ、診断から寛解導入に至るまでの時期や著しい増悪時、さらには急速進行の高リスク群、重症難治例には専門的な対応をリウマチ診療の専門機能を有する医療機関が行い、病状の安定している時期あるいは寛解導入後の治療にはかかりつけ医が診療するという治療アルゴリズムを構築することが可能となる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
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