アレルギー性気管支肺真菌症の診断・治療指針確立のための調査研究

文献情報

文献番号
201414012A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー性気管支肺真菌症の診断・治療指針確立のための調査研究
課題番号
H25-難治等(免)-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
浅野 浩一郎(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口 正実(NHO相模原病院病院 臨床研究センター)
  • 下田 照文(NHO福岡病院 臨床研究部)
  • 亀井 克彦(千葉大学 真菌医学研究センター)
  • 松瀬 厚人(東邦大学 医学部)
  • 小熊  剛(東海大学 医学部)
  • 今野  哲(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 福永 興壱(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)は、再発を繰り返し、放置すれば肺の線維化から呼吸不全に至る。しかし、環境真菌相や背景疾患の異なる海外での知見がほとんどで、本邦での当疾患に関する体系的検討は行われていない。本研究は、ABPMの疫学、臨床像、血清診断法、真菌学的要因、環境要因、合併症、治療法等を多面的に調査し、本邦の実情に則した診断・治療指針を作成することを目的とする。
研究方法
(1)本邦におけるアスペルギルス抗原感作の地域差を検討するため、主要検査受託機関から約4500万検体のCAP-RASTデータを入手し、県別アレルゲン感作陽性率を算出した。
(2)全国調査でのABPA366症例を対象として、非階層的クラスター分析を行った。
(3)重症喘息コホート(Keio-SARP)研究、北海道COPDコホート研究に登録された重症喘息146人およびCOPD患者268名において、真菌抗原感作の有無と臨床像との関連を解析した。
(4)ABPA(40名)、アスペルギルス感作喘息(99名)、アトピー性皮膚炎合併アスペルギルス感作喘息(38名)、アトピー性皮膚炎(34名)の患者群4群におけるAsp f 1/2/3/4/6特異的IgE抗体価とIgG抗体価を測定した。
(5)慢性肺アスペルギルス症(CPA)合併ABPMの臨床像を明らかとするため、ローゼンベルグの診断基準でABPA確実例、深在性真菌症の診断・治療ガイドラインでCPAと診断された全国調査症例の臨床像を解析した。
(6)全国調査で報告された非アスペルギルスABPMと思われる75例について臨床像と原因真菌を検討した。また、本年度に本研究班で収集したABPM由来の菌株を分離、遺伝子解析同定した。
(7)全国調査においてABPMを合併した重症喘息に抗IgE抗体を使用した症例について各施設担当医と症例検討会を行い、臨床情報を解析した。
結果と考察
(1) 本邦におけるアスペルギルスIgE陽性率は北海道、東北で少なく、西日本、特にその海岸地区で高率であったが、カンジダIgE、ダニIgE陽性率には大きな地域差を認めなかった。
(2)本邦におけるABPMのクラスター解析により、中年発症女性優位型、中年発症男性優位型、高齢発症型の3つのクラスターが同定された。クラスター間で血清総IgE値、喘息頻度などに違いがみられた。
(3)重症喘息患者146名中、真菌抗原感作例は35人(24%)であり、喘息コントロール不良、経口ステロイド薬の使用頻度が高い、呼気NO濃度が高い、などの臨床的特徴を示した。一方、真菌抗原感作COPD患者は登録時の呼吸機能が良好であり、気道可逆性に乏しく、CT肺気腫スコアが低値であった。
(4)ABPA群においてAsp f 1/2/3の陽性率が高く、83%(n=33)でAsp f 1と2のどちらか一方に対して陽性反応を示した。Asp f 1/2/3/4/6-IgGの陽性率は各群で有意差はなく、診断的な有用性を認めなかった。
(5)慢性肺アスペルギルス症合併ABPM9例は全例男性で、ABPAとCPAの同時発症またはCPA先行が8例であり、1例のみがABPA先行であった。原因真菌は不明の1例を除き、全例からAsp属が培養された。
(6)非アスペルギルスABPMの原因として同定された真菌の種類は、スエヒロタケ15例が最も多く全体の20%を占め、続いてカンジダ属が10例、ペニシリウム3例、ムコール属3例等であった。ABPM/MIB症例と判断された症例のうち、アスペルギルス以外で多かったのは真正担子菌(いわゆるキノコ)であった。
(7)全国調査においてABPMでオマリズマブが投与された32例中、4ヶ月以上継続された24症例では自覚症状は87%、画像所見は50%、肺機能は38%で改善が認められた。12/17例(71%)で経口ステロイド剤減量、8/12例(66%)で抗真菌薬投与中止が可能であった。

以上より、ABPAに複数の臨床病型が存在し、その一部は従来の診断基準では適切に診断できないこと、我が国の実情に合った血清診断カットオフ値の設定が必要であること、本邦症例ではほぼ全例で実施されているCT画像診断が有用な診断根拠となりうることが明らかとなった。
結論
本邦におけるアレルギー性気管支肺真菌症の実態を明らかにするための基礎データが集積しつつある。来年度中にA)疫学、B)臨床的診断基準、C)血清学的診断基準、D)合併症、E)治療、F)予後、などからなるABPM診断基準(案)を作成し、学会発表、ホームページ等での普及を図る予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201414012Z