文献情報
文献番号
201414009A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期の食物アレルギーの新しい診断法・管理法の確立と治療法の開発に関する研究
課題番号
H24-難治等(免)-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院臨床研究センター アレルギー性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
- 近藤 直実(岐阜大学/平成医療短期大学)
- 柘植 郁哉(藤田保健衛生大学小児科)
- 伊藤 浩明(あいち小児保健医療総合センター)
- 今井 孝成(昭和大学医学部小児科学講座)
- 玉利 真由美(理化学研究所 統合生命医科学研究センター 呼吸器・アレルギー疾患研究チーム)
- 松本 健治(国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー研究部)
- 丸山 伸之(京都大学大学院農学研究科)
- 藤澤 隆夫(国立病院機構三重病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
小児期の食物アレルギー(FA)の新しい診断法・管理法の確立と治療法の開発”を行うことを目的とした。
研究方法
FAの管理と患者のQOL向上に寄与すべく積極的な治療法(経口免疫療法:OIT)の開発研究を中心に活動した。
結果と考察
H26年度までに相模原病院でアナフィラキシーを呈する327名(急速法:卵87、牛乳119、小麦44、ピーナッツ31、少量導入法:卵13、牛乳15、小麦9、ピーナッツ9)にOITを実施し長期経過をフォロー中である。卵と牛乳の急速法の国内多施設研究と相模原単独の成績でも卵は2年経過で60%以上の寛解率が得られたが、牛乳では寛解率は低く、相模原での検討では3~4年でも無症状になっている割合は20%台に留まった。治療反応性事前予測因子について検討した結果、治療開始後1年半までに耐性化した群では、治療開始前の卵白・オボムコイド・ミルク・カゼイン特異的IgE値は非耐性化群と比し有意に低いことが判明した。難治性の牛乳アレルギー患者ではα-S1カゼイン部に2つの特徴的なIgE結合エピトープが存在することも判明した。コンプライアンス改善と副作用軽減の為に始めた少量導入法(目標量:卵3/128個、牛乳3ml、小麦〈うどん〉2g、ピーナッツ0.5g)で1年以上観察した26名(卵6、牛乳12、小麦3、ピーナッツ5)の1年後の成績は少量への耐性化だけではなくそれ以上に摂取できる症例も多く見られ、即時型の副作用も大幅に改善した。多施設で緩徐OITを実施しているが、摂取量の多少(100% vs 25%)による耐性獲得率は中間解析の時点では統計学的有意差を認めなかった。以上のことからOITにおいては免疫応答を変化させる十分量を継続的に摂取することが重要である。アレルゲンコンポーネントを利用した新規診断技術の開発に関して多施設共同研究でゴマ、ソバ、大豆に関して有用なコンポーネントが見つかった。H26年度調査で日本小児科学会の専門医研修施設中326病院で食物経口負荷試験が実施されており情報を食物アレルギー研究会HPで公開した。
結論
FAの初期対応、管理、診断、治療に関する各分担研究は3年目も予定通り研究成果を得ることができた。OITに関しては今後も引き続き安全性/有効性の追跡調査が必須である。3年間の研究成果は病診連携に焦点を当てつつ改定した「食物アレルギーの診療の手引2014」にもれなく反映させることができた。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
-