文献情報
文献番号
201414008A
報告書区分
総括
研究課題名
生命予後に関わる重篤な食物アレルギーの実態調査・新規治療法の開発および治療指針の策定
課題番号
H24-難治等(免)-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森田 栄伸(国立大学法人島根大学 医学部皮膚科学)
研究分担者(所属機関)
- 片山 一朗(大阪大学大学院医学系研究科 皮膚科学 )
- 松永 佳世子(藤田保健衛生大学 医学部皮膚科学 )
- 秀 道広(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 皮膚科学)
- 岸川 禮子(国立病院機構福岡病院 アレルギー科)
- 千貫 祐子(島根大学 医学部皮膚科学 )
- 横関 博雄(東京医科歯科大学 医学部皮膚科学 )
- 相原 道子(横浜市立大学 医学部皮膚科学 )
- 藤枝 重治(福井大学 医学部耳鼻咽喉科学 )
- 塩飽 邦憲(島根大学 理事)
- 福冨 友馬(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター診断・治療薬開発研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、近年本邦にて多発した加水分解コムギアレルギーの実態調査を行うとともに予後調査、治療指針の策定を目的とした。併せて、重篤な食物アレルギーである食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)と口腔アレルギー症候群(OAS)の本邦における診断基準の作成、治療指針の策定を行うことを目的とした。
研究方法
1. 加水分解コムギアレルギーの実態把握と予後調査
日本アレルギー学会「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」と密接に連携し活動した。加水分解コムギアレルギーの診断基準は平成24年度作成の基準を使用し、症例のオンライン登録を継続して行い、日本全国から症例を集積した。島根大学病院、国立病院機構相模原病院、広島大学病院、福岡病院、藤田保健衛生大学病院、横浜市立大学病院、大阪大学病院、東京医科歯科大学病院、国立病院機構福岡病院、兵庫県立加古川医療センター、西神戸医療センターで経過観察した加水分解コムギアレルギー患者の予後調査、予後に関与する要因を調査した。
2. FDEIAの実態調査と診断基準の作成
分担研究者および研究協力者の所属11施設を2009~2011年の間に受診したFDEIA症例を集積し、その実態を把握するとともに、診断基準を作成し感度を調査した。
3. OASの実態調査
分担研究者および研究協力者の所属11施設を2009~2011年の間に受診したOAS症例を集積し、その実態を把握するとともに、診断基準を作成し感度を調査した。
4. 抗原解析および診断法の開発
患者血清を用いた免疫ブロット法、質量分析法による抗原解析を行った。好塩基球活性化に関与する分子の探索を行った。小児のOASのアレルゲンコンポーネント特異的IgE検査の診断における有用性を検討した。
5. FDEIAおよびOASの診療の手引きの作成
成果をもとにFDEIAおよびOASの診療の手引きを作成し、パンフレットにして日本アレルギー学会会員および日本皮膚科学会会員に配布した。
日本アレルギー学会「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」と密接に連携し活動した。加水分解コムギアレルギーの診断基準は平成24年度作成の基準を使用し、症例のオンライン登録を継続して行い、日本全国から症例を集積した。島根大学病院、国立病院機構相模原病院、広島大学病院、福岡病院、藤田保健衛生大学病院、横浜市立大学病院、大阪大学病院、東京医科歯科大学病院、国立病院機構福岡病院、兵庫県立加古川医療センター、西神戸医療センターで経過観察した加水分解コムギアレルギー患者の予後調査、予後に関与する要因を調査した。
2. FDEIAの実態調査と診断基準の作成
分担研究者および研究協力者の所属11施設を2009~2011年の間に受診したFDEIA症例を集積し、その実態を把握するとともに、診断基準を作成し感度を調査した。
3. OASの実態調査
分担研究者および研究協力者の所属11施設を2009~2011年の間に受診したOAS症例を集積し、その実態を把握するとともに、診断基準を作成し感度を調査した。
4. 抗原解析および診断法の開発
患者血清を用いた免疫ブロット法、質量分析法による抗原解析を行った。好塩基球活性化に関与する分子の探索を行った。小児のOASのアレルゲンコンポーネント特異的IgE検査の診断における有用性を検討した。
5. FDEIAおよびOASの診療の手引きの作成
成果をもとにFDEIAおよびOASの診療の手引きを作成し、パンフレットにして日本アレルギー学会会員および日本皮膚科学会会員に配布した。
結果と考察
平成26年10月現在、国内で2111名(女性2025名、男性86名)の患者が確認された。加水分解コムギ含有石鹸の使用中止により患者のほとんどで血清加水分解コムギ特異的IgE抗体価が低下し、平成26年10月時点での予後調査では略値の中央値は65.3ヶ月であることが判明した。一方、重篤な症状を呈した症例およびω-5グリアジン特異的IgEの高値症例は略値しにくいことが明らかになった。
小麦によるFDEIAとOASの診断基準を作成した。それぞれの診断基準の感度は、80.0%、58.1%と算定された。小麦が原因となるFDEIA症例の中には、ω-5グリアジン特異的IgE検査が陰性で、顔面浮腫を示し、イネ科花粉症を合併する第3の小麦アレルギーの存在が示唆された。併せて、診断精度の向上を目指して抗原解析および検査法の開発のための基礎研究を実施した。その結果、モモアレルゲンpeamacleinの同定、新規エビアレルゲンp75 protein、fuructose 1,6-bisphosphoate aldolaseの同定、メタロチオネインを指標とした好塩基球の活性試験の有用性、OASの原因抗原解析における免疫ブロット法の有用性、小児のOASの罹患は10%程度であることが明らかになった。
小麦によるFDEIAの中にイネ科花粉症に合併するFDEIA患者が含まれることが明らかになった。これらの患者は、小麦製品摂取後の運動負荷にて眼瞼の腫脹を来たし、その後に全身の蕁麻疹を生じている。また、通常型の小麦FDEIAではω-5グリアジン特異的IgE検査が高率に陽性になるのに対してこれらの患者は陰性を示し、かつイネ科花粉に対する特異的IgEが著明高値である。従来のFDEIAが腸管感作された病態、加水分解コムギアレルギーは経皮感作された病態と理解すると、これらの患者は経粘膜感作された病態と考えられ、第3の小麦アレルギーとも呼ぶべき病型である。その病態解明は今後の課題として残された。
今後FDEIAおよびOASの根治を目指す新規治療法の開発が望まれる。また、発症予防として食物抗原による経腸管感作、経皮感作、経粘膜感作の予防法も確立する必要がある。
小麦によるFDEIAとOASの診断基準を作成した。それぞれの診断基準の感度は、80.0%、58.1%と算定された。小麦が原因となるFDEIA症例の中には、ω-5グリアジン特異的IgE検査が陰性で、顔面浮腫を示し、イネ科花粉症を合併する第3の小麦アレルギーの存在が示唆された。併せて、診断精度の向上を目指して抗原解析および検査法の開発のための基礎研究を実施した。その結果、モモアレルゲンpeamacleinの同定、新規エビアレルゲンp75 protein、fuructose 1,6-bisphosphoate aldolaseの同定、メタロチオネインを指標とした好塩基球の活性試験の有用性、OASの原因抗原解析における免疫ブロット法の有用性、小児のOASの罹患は10%程度であることが明らかになった。
小麦によるFDEIAの中にイネ科花粉症に合併するFDEIA患者が含まれることが明らかになった。これらの患者は、小麦製品摂取後の運動負荷にて眼瞼の腫脹を来たし、その後に全身の蕁麻疹を生じている。また、通常型の小麦FDEIAではω-5グリアジン特異的IgE検査が高率に陽性になるのに対してこれらの患者は陰性を示し、かつイネ科花粉に対する特異的IgEが著明高値である。従来のFDEIAが腸管感作された病態、加水分解コムギアレルギーは経皮感作された病態と理解すると、これらの患者は経粘膜感作された病態と考えられ、第3の小麦アレルギーとも呼ぶべき病型である。その病態解明は今後の課題として残された。
今後FDEIAおよびOASの根治を目指す新規治療法の開発が望まれる。また、発症予防として食物抗原による経腸管感作、経皮感作、経粘膜感作の予防法も確立する必要がある。
結論
加水分解コムギ含有石鹸による小麦アレルギーのアウトブレイク実態およびその予後を明らかにすることができた。また従来型の小麦FDEIAおよびOASの診断基準の作成を行い、その感度を検定した。今後は、治療指針の策定と精度の高い診断法の開発が課題である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
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