危険因子を同定する検診制度導入によるリウマチ制圧プロジェクト

文献情報

文献番号
201414002A
報告書区分
総括
研究課題名
危険因子を同定する検診制度導入によるリウマチ制圧プロジェクト
課題番号
H25-免疫-指定-018
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 正人(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
研究分担者(所属機関)
  • 広畑 俊成(北里大学 医学部)
  • 松原 司(松原メイフラワー病院)
  • 萩野 浩(鳥取大学 医学部)
  • 西本 憲弘(東京医科大学 医学総合研究所)
  • 若林 弘樹(三重大学 医学部附属病院)
  • 川人 豊(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 岸本 暢将(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 大出 幸子(聖ルカ・ライフサイエンス研究所 臨床疫学センター)
  • 六反田 諒(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 土師 陽一郎(宏潤会大同病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健診受診者に対する抗体スクリーニング検査によって、未診断関節リウマチ患者の拾い上げを行うとともに数年以内に関節リウマチを発症するリスクの高い個々の患者を同定し 発症時の早期受診を促すことによって、発症早期からの治療介入による治療反応性の改善、および医療費の削減の可能性を検討する。抗CCP抗体は関節リウマチに特異度の高い自己抗体であり、発症の5年前に約40%の患者で陽性となり、その陽性率は経年的に上昇する。また逆に、抗CCP抗体陽性の無症候者における関節リウマチの発症率(陽性的中率)は16%と報告されており、リウマトイド因子の4%を大きく上回ることから、スクリーニング検査として推奨し得る。関節リウマチ有病率は全人口1%弱程度と報告される。近年は有効性の高い薬剤の開発により疾患の予後の改善が認められているが、医療経済的な負担の増加は将来的に大きな問題となる。また、症状発現から受診までの遅延が指摘されており、12週間以内に治療を開始することにより比較的安価な従来の経口抗リウマチ薬に対する治療反応性の向上が得られることから、早期からの治療介入は患者の予後の改善だけでなく、医療コストの削減も期待できる。
研究方法
健診施設において被験者の同意の後、他の健診用検体とともに血清検体を採取し、リウマトイド因子および抗CCP抗体を測定する。陽性の被験者に対しては、通知にて受診を促す。抗体陽性者が研究関連施設を受診した際には、リウマチ科医の診察により、1.新規RA群:関節リウマチと診断のつく群、2.Pre-RA群:関節リウマチに進展しうる関節症状を有する群(30分以上の朝のこわばり、圧痛などが関節リウマチ分類基準における対象関節において認める)、3.Non-RA群:無症候群に区別し、新規RA群に対しては、リウマチ科医によるガイドラインに則った治療を行う。Pre-RA群においては、関節症状悪化時における早期受診の重要性を指導し、3か月ごとの定期外来受診の対象とする。フォロー中に関節リウマチを発症した場合には、早期RA群と同様にガイドラインに則った治療を行う。Non-RA群においては、Pre-RA群と同様に関節症状悪化時における早期受診の重要性を指導する。
結果と考察
当該年度に6319名において抗CCP抗体を測定し、前年度分と合わせて計11758名のリウマチ健診測定結果を解析した。スクリーニング者のうちRF陽性は1271 (10.8%), 抗CCP抗体陽性は154名(1.3%)、両抗体ともに陽性であったのは98例(0.83%)であった。報告書作成時点では、計156名の健診リウマチ検査陽性者が当科を受診し、うち6名は初診時に新たに関節リウマチと診断され、初診後のフォローアップ期間中に2例が新規に関節リウマチを発症し、計8例が関節リウマチの診断となった。抗体別による内訳はRF単独陽性1例、抗CCP抗体単独陽性1例、両抗体陽性6例であった。最終受診時点までに1例がフォローアップから脱落したが、残り7症例中5例が経口DMARDs の治療を継続中、2例は寛解のため経口DMARDs投与を中止しておりSDAI, 血清CRP値, ESR1時間値の平均値はそれぞれ1.15±1.87、 0.04±0.00 mg/dL、8±3.6 mm/1hrであった。SDAIに基づく疾患活動性評価では寛解6例、低疾患活動性1例であった。最終受診時点では経過中に生物学的製剤導入を要した例は一例も認めなかった。抗CCP抗体スクリーニングはRFスクリーニングと比較しての偽陽性率が低く、健診における抗CCP抗体測定はRF測定よりも有用である可能性が示唆された。また、健診スクリーニングによりRA診断に至った例は疾患活動性が低く、治療反応性良好であり、早期診断による予後改善が得られたと考えられる。
結論
健診におけるリウマチスクリーニングの有用性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201414002B
報告書区分
総合
研究課題名
危険因子を同定する検診制度導入によるリウマチ制圧プロジェクト
課題番号
H25-免疫-指定-018
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 正人(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
研究分担者(所属機関)
  • 広畑 俊成(北里大学 医学部)
  • 松原 司(松原メイフラワー病院)
  • 萩野 浩(鳥取大学 医学部)
  • 西本 憲弘(東京医科大学 医学総合研究所)
  • 若林 弘樹(三重大学 医学部附属病院)
  • 川人 豊(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 岸本 暢将(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 大出 幸子(聖ルカ・ライフサイエンス研究所 臨床疫学センター)
  • 六反田 諒(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 土師 陽一郎(宏潤会大同病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健診受診者に対する抗体スクリーニング検査によって、 未診断関節リウマチ患者の拾い上げを行うとともに数年以内に関節リウマチを発症するリスクの高い個々の患者を同定し、発症早期からの治療介入による治療反応性の改善、および医療費の削減の可能性を検討する。関節リウマチ有病率は全人口1%弱程度と報告される。近年は有効性の高い薬剤の開発により疾患の予後の改善が認められているが、医療経済的な負担の増加は将来的に大きな問題となる。また、症状発現から受診までの遅延が指摘されており、12週間以内に治療を開始することにより比較的安価な従来の経口抗リウマチ薬に対する治療反応性の向上が得られることから、早期からの治療介入は患者の予後の改善だけでなく、医療コストの削減も期待できる。抗CCP抗体は関節リウマチに特異度の高い自己抗体であり、発症の5年前に約40%の患者で陽性となり、その陽性率は経年的に上昇する。また逆に、抗CCP抗体陽性の無症候者における関節リウマチの発症率(陽性的中率)は16%と報告されており、リウマトイド因子の4%を大きく上回ることから、スクリーニング検査として推奨し得る。
研究方法
健診施設において被験者の同意の後、他の健診用検体とともに血清検体を採取し、リウマトイド因子および抗CCP抗体を測定する。陽性の被験者に対しては、通知にて受診を促す。抗体陽性者が研究関連施設を受診した際には、リウマチ科医の診察により、1.新規RA群:関節リウマチと診断のつく群、2.Pre-RA群:関節リウマチに進展しうる関節症状を有する群(30分以上の朝のこわばり、圧痛などが関節リウマチ分類基準における対象関節において認める)、3.Non-RA群:無症候群に区別し、新規RA群に対しては、リウマチ科医によるガイドラインに則った治療を行う。Pre-RA群においては、関節症状悪化時における早期受診の重要性を指導し、3か月ごとの定期外来受診の対象とする。フォロー中に関節リウマチを発症した場合には、早期RA群と同様にガイドラインに則った治療を行う。Non-RA群においては、Pre-RA群と同様に関節症状悪化時における早期受診の重要性を指導する。
結果と考察
計11758名のリウマチ健診測定結果を解析した。スクリーニング者のうちRF陽性は1271 (10.8%), 抗CCP抗体陽性は154名(1.3%)、両抗体ともに陽性であったのは98例(0.83%)であった。報告書作成時点では、計156名の健診リウマチ検査陽性者が当科を受診し、うち6名は初診時に新たに関節リウマチと診断され、初診後のフォローアップ期間中に2例が新規に関節リウマチを発症し、計8例が関節リウマチの診断となった。抗体別による内訳はRF単独陽性1例、抗CCP抗体単独陽性1例、両抗体陽性6例であった。最終受診時点までに1例がフォローアップから脱落したが、残り7症例中5例が経口DMARDs の治療を継続中、2例は寛解のため経口DMARDs投与を中止しておりSDAI, 血清CRP値, ESR1時間値の平均値はそれぞれ1.15±1.87、 0.04±0.00 mg/dL、8±3.6 mm/1hrであった。SDAIに基づく疾患活動性評価では寛解6例、低疾患活動性1例であった。最終受診時点では経過中に生物学的製剤導入を要した例は一例も認めなかった。抗CCP抗体スクリーニングはRFスクリーニングと比較しての偽陽性率が低く、健診における抗CCP抗体測定はRF測定よりも有用である可能性が示唆された。また、健診スクリーニングによりRA診断に至った例は疾患活動性が低く、治療反応性良好であり、早期診断による予後改善が得られたと考えられる。
結論
健診におけるリウマチスクリーニングの有用性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201414002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は大規模に関節リウマチ(RA)健診の有用性を評価した初の研究であり、世界的にも他に類を見ない。リウマトイド因子を用いたRAの健診スクリーニングは我が国で広く行われているが、今回の研究結果からは抗CCP抗体がより有用である可能性が示されており、今後のRA健診を検討するうえで極めて重要な研究成果である。 また一般人口における年齢性別ごとのリウマトイド因子、抗CCP抗体の陽性率が明らかとなり、 今後の関節リウマチの診断およびスクリーニングに必要とされる学術的に重要な基礎的データが得られた。
臨床的観点からの成果
健診研究を契機に新規RAと診断された例は一般的な新規RA症例と比較して骨破壊所見を欠き、疾患活動性が低く、治療に対する反応性が良好で、短期間で高い寛解を示し、Drug freeへ至る例も認められている。以上の結果より一般診療と比較して、RAスクリーニング健診では早期でより疾患活動性が低く治療反応性の良い時点に治療介入を行うことで可能であると考えられる。国際的に関節症状発症後の早期RA診断に関する研究はあるが、無症候者からのスクリーニングが可能でより効果的な事を示す意義のある研究と考えられる。
ガイドライン等の開発
関節リウマチ健診に対する研究は本研究以前にはほぼ皆無であり、故にガイドライン等は現在存在していない。本研究結果から従来のリウマトイド因子を用いたスクリーニングに抗CCP抗体を導入することにより、効率的なスクリーンングが可能となることが示された。 今回のスクリーニングによってRA発症のハイリスクと考えられた群を今後数年フォローすることにより、ガイドラインの作成が可能となると考えられる。
その他行政的観点からの成果
抗CCP抗体を用いたRAスクリーニング健診の普及により早期又は疾患活動性が低い時点より治療介入を行うことが可能となる。比較的安価な従来の経口抗リウマチ薬に対する治療反応性の向上が得られる事から、早期からの治療介入は患者予後の改善と医療コストの削減が期待できる。抗CCP抗体はリウマトイド因子に比して、偽陽性率が低い。抗CCP抗体の陽性率は一般に1.3%であり医療経済的効率が課題だが、リウマトイド因子検診での陽性者では陽性率が7.7%であることから、現実的なスクリーニングとして利用可能と考えられる。
その他のインパクト
今後市民講座、論文作成などを通じて一般国民への研究成果の普及を行っていく。また全国の健診施設において抗CCP抗体スクリーニング働きかけを行う。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
1件
六反田諒 「早期診断におけるACPA・リウマトイド因子」第60回日本リウマチ学会総会・学術集会 (2016年4月23日)
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-25
更新日
2018-05-21

収支報告書

文献番号
201414002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,200,000円
(2)補助金確定額
9,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,338,016円
人件費・謝金 277,020円
旅費 481,372円
その他 5,013,667円
間接経費 2,100,000円
合計 9,210,075円

備考

備考
収入「(2)補助金確定額」と支出「合計」の差額内訳と出所は、預金利息:40円、自己資金:10,035円である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-