文献情報
文献番号
201413002A
報告書区分
総括
研究課題名
IgA腎症新規バイオマーカーを用いた血尿の2次スクリーニングの試み
課題番号
H24-難治等(腎)-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 祐介(順天堂大学 腎臓内科)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 仁(順天堂大学 腎臓内科)
- 川村 哲也(東京慈恵会医科大学 臨床研修センター 腎臓・高血圧内科)
- 藤元 昭一(宮崎大学 腎臓内科)
- 井関 邦敏(琉球大学 医学部附属病院)
- 今田 恒夫(山形大学 内科学第一(循環・呼吸・腎臓内科学)講座 )
- 坂本 なほ子 (順天堂大学 公衆衛生学)
- 松崎 慶一(京都大学 環境安全保健機構 健康科学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(腎疾患対策研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
19,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
IgA腎症は、世界で最も頻度の高い原発性糸球体腎炎である。初発症状は血尿で、本邦における発見機転は健診時の血尿が約70%と大半を占める。IgA腎症は早期診断、早期治療介入できれば、寛解誘導が可能な治療が最近報告されている一方で、未だ膨大な医療費がIgA腎症由来の透析患者に使用されており、検尿システムが発達している本邦でさえ、いかに診断・治療時期を逸したIgA 腎症患者が多いかが窺われる。
我々は糖鎖異常IgA、特にヒンジ部のGalactoseが欠損したIgA1(GdIgA1)およびその糖鎖異常部位を認識する自己抗体との免疫複合体(GdIgA-IC)が病因と深く関わり、疾患活動性ともよく相関することを見出した。さらに、それらバイオマーカーを用いた高い診断率を有する診断方法を確立した。
この背景をふまえ、複数の健診センターで健診・人間ドック受診者を対象に、上記バイオマーカーを用いた診断スコア法を用いて1次スクリーニングでの尿潜血陽性者における潜在的IgA 腎症患者の割合を明らかにし、将来的にIgA 腎症の早期診断・治療介入の礎とすることを本研究の目的とした。
平成26年度の研究目的は、都内と宮崎県の1年目の登録者から得られた昨年度の中間解析結果(母比率0.9)を、沖縄、山形の新規9健診施設で検証を完了させる一方で、平成25年度から行っている判定が確定した研究参加者の臨床的転帰を追跡することとした。
我々は糖鎖異常IgA、特にヒンジ部のGalactoseが欠損したIgA1(GdIgA1)およびその糖鎖異常部位を認識する自己抗体との免疫複合体(GdIgA-IC)が病因と深く関わり、疾患活動性ともよく相関することを見出した。さらに、それらバイオマーカーを用いた高い診断率を有する診断方法を確立した。
この背景をふまえ、複数の健診センターで健診・人間ドック受診者を対象に、上記バイオマーカーを用いた診断スコア法を用いて1次スクリーニングでの尿潜血陽性者における潜在的IgA 腎症患者の割合を明らかにし、将来的にIgA 腎症の早期診断・治療介入の礎とすることを本研究の目的とした。
平成26年度の研究目的は、都内と宮崎県の1年目の登録者から得られた昨年度の中間解析結果(母比率0.9)を、沖縄、山形の新規9健診施設で検証を完了させる一方で、平成25年度から行っている判定が確定した研究参加者の臨床的転帰を追跡することとした。
研究方法
健診および人間ドックを受診し、検尿検査が施行され尿潜血陽性を示した15~50歳を対象者とし、同意書を得た上で、1次スクリーニング施設の健診・人間ドック時の残血清を匿名符号化し、順天堂大学医学部腎臓内科(センター施設)に送付、解析しスコア判定を行う。
結果と考察
適切な研究体制が整備・運営され都内、宮崎県の8協力施設に加え、沖縄、山形県の9協力施設からも登録が順調に進み、平成26年度12月までに2747名の登録が完了し、その結果は全て参加者にフィードバックした。都内、宮崎県の施設ではフォローアップ研究が開始され、約600名の追跡解析が進んでいる。IgA腎症の可能性の高いB判定者と、可能性の低いA判定者はそれぞれ13.3%と47.5%であった。一方、1年目の登録が完了し高同意率の宮崎県施設血尿陽性者1843名の解析上、尿潜血陽性率は7.3%、スコア法によるIgA腎症の潜在的陽性者の母比率は0.8%と推定され、昨年とほぼ同様な結果を得た。また、追跡研究では1年以上を経ても個人のスコアの変動が少ないことも確認された。
本年度も登録数およびリクルート率・同意率の地域差を認めた。昨年度の報告と同様で、参加協力施設の年間健診受診者の総数は、都内4施設と宮崎県4施設で大差はないが、1年間の登録数は都内(289):宮崎(1142)=1:4と、都内施設が低い結果となった。これは、都内健診施設が契約している健保組合や学校施設が多岐にわたり、健診施設渉外担当者による契約成立が複雑で、研究の説明・案内・同意が非常に難しい点が、要因の一つとしてあげられる。都内での患者同意率が宮崎に比べて非常に低いことも、被験者意識の違いを色濃く反映していると考えられた。本年度同時期より参加した山形県、沖縄県の協力施設でも、山形(185):沖縄(1131)= 1:6と登録数に大きな差が生じた。これは、参加施設の過去の疫学研究への協力に関する経験量の違いや、県民性などを反映した可能性が考えられた。
各地域の参加者の平均年齢は40~42歳と変わらなかった。しかし、本研究参加者のスコアを高値群(B判定:13.3%)、低値群(A判定:47.5%)、中間群(C判定:39.2%)の3群に分け、地域別に解析すると、スコア高値のB判定群が、宮崎県で10.7%、東京都17.6%、沖縄県13.0%、山形県で11.9%と、参加者の人数に差はあるものの陽性者の比率に若干の地域差が示唆された。都内でB判定者が多い原因として、都内では研究同意者が少ない一方で、逆に参加同意した者は長年持続性の血尿陽性者を多く含んでいた可能性が考えられた。
今回の母比率は我々の想像以上に多い結果となった。GWAS解析に基づく大規模な遺伝子解析から想定されるIgA腎症の疾患感受性マップが最近報告され、明確な人種・地域差があることが判明し、特に東アジア、それも日本人にIgA腎症の感受性が非常に高いことが示された。その点で、今回の結果は、きわめて興味深い。
本年度も登録数およびリクルート率・同意率の地域差を認めた。昨年度の報告と同様で、参加協力施設の年間健診受診者の総数は、都内4施設と宮崎県4施設で大差はないが、1年間の登録数は都内(289):宮崎(1142)=1:4と、都内施設が低い結果となった。これは、都内健診施設が契約している健保組合や学校施設が多岐にわたり、健診施設渉外担当者による契約成立が複雑で、研究の説明・案内・同意が非常に難しい点が、要因の一つとしてあげられる。都内での患者同意率が宮崎に比べて非常に低いことも、被験者意識の違いを色濃く反映していると考えられた。本年度同時期より参加した山形県、沖縄県の協力施設でも、山形(185):沖縄(1131)= 1:6と登録数に大きな差が生じた。これは、参加施設の過去の疫学研究への協力に関する経験量の違いや、県民性などを反映した可能性が考えられた。
各地域の参加者の平均年齢は40~42歳と変わらなかった。しかし、本研究参加者のスコアを高値群(B判定:13.3%)、低値群(A判定:47.5%)、中間群(C判定:39.2%)の3群に分け、地域別に解析すると、スコア高値のB判定群が、宮崎県で10.7%、東京都17.6%、沖縄県13.0%、山形県で11.9%と、参加者の人数に差はあるものの陽性者の比率に若干の地域差が示唆された。都内でB判定者が多い原因として、都内では研究同意者が少ない一方で、逆に参加同意した者は長年持続性の血尿陽性者を多く含んでいた可能性が考えられた。
今回の母比率は我々の想像以上に多い結果となった。GWAS解析に基づく大規模な遺伝子解析から想定されるIgA腎症の疾患感受性マップが最近報告され、明確な人種・地域差があることが判明し、特に東アジア、それも日本人にIgA腎症の感受性が非常に高いことが示された。その点で、今回の結果は、きわめて興味深い。
結論
新規バイオマーカーを用いたスクリーニングスコア法により、1次健診母集団ならびに血尿陽性者における潜在的IgA腎症患者の規模が把握され、同時にそのスクリーニング方法の有用性が示された。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
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