文献情報
文献番号
201412054A
報告書区分
総括
研究課題名
栄養管理サービスの将来予測評価に基づく管理栄養士の人材育成システム構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-循環器等(生習)-指定-020
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
木戸 康博(京都府立大学 大学院生命環境科学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部)
- 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
- 坂井堅太郎(広島女学院大学 人間生活学部)
- 下岡 里英 (広島女学院大学 人間生活学部)
- 石川みどり(国立保健医療科学院・公衆栄養学・栄養教育 )
- 幣 憲一郎(京都大学医学部附属病院疾患栄養治療部 )
- 菅野 丈夫(昭和大学病院栄養科)
- 中川 幸恵(独立行政法人地域医療機能推進機構JCHO札幌北辰病院栄養管理室 )
- 土居 幸雄(龍谷大学 農学部)
- 河原 和枝(川崎医療福祉大学 医療技術学部)
- 田中 弥生(駒沢女子大学 人間健康学部)
- 小林 ゆき子(京都府立大学 大学院生命環境科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,370,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
管理栄養士は、生活者の最も身近なところで、人々の栄養・食生活支援を行っており、人口構造や社会・経済状況の変化に伴い、期待される役割は益々増大すると考えられる。しかし、これらのニーズに適合した管理栄養士配置や人材育成のあり方を系統的に検討した研究はこれまで行われていない。そこで本研究では、管理栄養士数の需給の予測に基づく高度専門知識を有した管理栄養士の育成システムを構築すること目的とした。
研究方法
行政分野では、行政栄養士の職位課題別のコンピテンシーを検討するグループワークを実施した。行政栄養士の経験年数とコンピテンシー領域を枠組みとしたワークシートにコンピテンシー項目を記載・整理した。医療分野では、病院管理栄養士とNSTの業務実態について、質問紙調査を行い、その結果をDPC データと施設レベルで連結させて分析し、さらに個別病院訪問により事例検討した。また、病棟常駐配置に必要な管理栄養士の人材育成に焦点をあて、そのためのコンピテンシーモデルを開発し、教育プログラムを例示した。学校・食育分野では、保育所における栄養管理業務のリスト化と3歳未満児に対する栄養管理業務の実態調査を行い、保育所における管理栄養士の必要性と人材育成の方向性を検討した。研究教育分野では、国際的に見ても独自性の高い日本の管理栄養士制度に適した管理栄養士の人材育成システム構築について検討した。福祉分野では、管理栄養士が栄養管理業務を積極的に実施している介護保健福祉施設を対象にインタビューを行い、給食管理と栄養管理を実施するための促進因子を検索した。
結果と考察
行政分野では、各種研修制度や研究事業を組合せ、かつ、自治体ワーキンググループを立ち上げ、政策・施策とのつながりの視点で、目指す方向性について、職位に応じた能力の目安を位置づけることを提案した。医療分野では、NST加算の算定病院はNST 稼働病院の約半数で、算定量が些少な病院も多いことが明らかとなった。DPC データと、NST 及び管理栄養士の業務実態に関する質問紙調査を連結させて200 病院を分析した結果、効率的で積極的な対象症例抽出システムを病院レベルで運用していることが加算算定を促進し得ると結論した。また、インタビュー調査及び文献レビュー等から管理栄養士による効率的な栄養管理プロセスの概念図を提案した。病棟に管理栄養士が常駐することにより、入院当初から個別の患者情報の収集や介入が行え、時間に関係なく他職種と情報交換が行えるいわゆるレゴ型の連携システムが効果的であることを明らかにした。週5日以上常駐体制(2病棟3名の管理栄養士)の施設では、初期栄養プランについて多職種で意見を出し合い医師に提案、入院中は毎日病棟にて全患者の栄養状態をチェックし、患者のモニタリングを行う等、高度専門職としての能力を十分に発揮していることが明らかとなった。管理栄養士の病棟常駐配置施設における教育方法は、実践教育(OJT)であり、いわゆる「屋根瓦方式」の教育であった。時間軸を考慮した教育研修プログラムにコンピテンシーモデルを追加し、教育研修プログラム案を提示した。学校・食育分野では、グループワークで得られたニーズのある栄養管理業務内容に基づきアンケート調査を行った。その結果、0歳児、1-2歳児に対する栄養管理業務として、食物アレルギー児への対応、給食経営管理、哺乳・離乳食支援、児の栄養評価と栄養管理が挙げられた。また、管理栄養士未配置施設への管理栄養士の配置の必要性が示された。研究教育分野では、高度な専門性をもつ質の高い管理栄養士を養成するためには、大学院を卒業した管理栄養士の活用が必要と考えられた。福祉分野では、管理栄養士が栄養管理業務を積極的に実施している介護保健福祉施設へのインタビュー調査を行った。その結果、管理栄養士を各ユニットに配置し、介護業務に携わりながら栄養管理業務を行っている施設では、食べる様子、排泄、皮膚状態等をモニタリングし、栄養管理を行っていた。多くの施設が、栄養管理の効果として、QOLの向上、ADLの向上、要介護度の維持、リハの効果、使用経腸栄養剤の削減、褥瘡の軽減、寝たきりの軽減、低栄養の軽減、感染症の軽減、認知症への移行の軽減等に期待していた。
結論
様々な施設、地域等で働く管理栄養士の現状が初めて明らかとなり、それに基づき課題の整理を行った。これらの成果に基づき、効果的・効率的な医療や介護サービスの実施という観点から医療機関(特にDPC病院)、保育所や介護保険施設を中心に、管理栄養士の積極的な活用(例:各病棟への固定的配置)等、新たなニーズとそれに応えるために必要な管理栄養士の能力を整理した。また、医療・福祉・行政・教育等における栄養管理サービスの評価に基づく管理栄養士の人材育成システム構築について提案した。
公開日・更新日
公開日
2016-06-20
更新日
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