文献情報
文献番号
201412050A
報告書区分
総括
研究課題名
血中自己抗体検出と新規炎症マーカーを用いた急性冠症候群予知因子および治療標的の探索
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-026
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
西 英一郎(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
- 木村 剛(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)
- 日和佐 隆樹(千葉大学大学院医学研究院 遺伝子生化学)
- 尾野 亘(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)
- 妹尾 浩(京都大学大学院医学研究科 消化器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
51,910,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、急性冠症候群発症(ACS)の予知を可能にするバイオマーカーを開発すること、そしてACSによる死亡の大半を占める、突然死をふくむ院外死を抑制することにある。将来的に治療薬の開発につながるよう、病因論的にも重要で、病態の本質を反映するマーカーの同定を目指す。予知マーカー探索にあたり、我々は血中自己抗体およびメタロプロテアーゼ、ナルディライジン(NRDc)に注目した。本研究では、ACS患者血清の①自己抗体発現パターンの解析、②血清NRDcの解析を並行して行っている。さらに疾患モデルマウスを用いて、ACSおよびNASHにおけるNRDcの意義を検討した。
研究方法
1) ACS患者血清の自己抗体発現パターンの解析:一次スクリーニングで抽出した33種類、およびタンパク質アレイに含まれていなかった候補タンパク質11種類に対する血清自己抗体測定系を、Alpha (Amplified Luminescence Proximity Homogeneous Assay) LISA法を用いて構築した。同測定系を用いて、二次スクリーニングおよび三次スクリーニングを行った。
2) ACS患者血清NRDc濃度の解析:独自に開発したヒト血清NRDc高感度ELISA(測定感度50pg/ml)を用いて、ACS入院症例の血清NRDcを測定し、同時に測定したCK, TnTなどと比較検討した。
3) 炎症性疾患におけるNRDcの病態生理学的意義の解明:3-1) ACS:野生型と心筋特異的NRDc強発現マウスを、左冠動脈前下行枝結紮によるACSモデルに供し、心筋病変部位の組織学的検討、遺伝子発現様式および血清NRDcの検討を行った。
3-2) NASH:野生型とNRDc欠損マウスを、コリン欠乏食、高脂肪食によるNASHモデルに供し、肝臓の組織学的検討、遺伝子発現様式および血清肝逸脱酵素の検討を行った。
2) ACS患者血清NRDc濃度の解析:独自に開発したヒト血清NRDc高感度ELISA(測定感度50pg/ml)を用いて、ACS入院症例の血清NRDcを測定し、同時に測定したCK, TnTなどと比較検討した。
3) 炎症性疾患におけるNRDcの病態生理学的意義の解明:3-1) ACS:野生型と心筋特異的NRDc強発現マウスを、左冠動脈前下行枝結紮によるACSモデルに供し、心筋病変部位の組織学的検討、遺伝子発現様式および血清NRDcの検討を行った。
3-2) NASH:野生型とNRDc欠損マウスを、コリン欠乏食、高脂肪食によるNASHモデルに供し、肝臓の組織学的検討、遺伝子発現様式および血清肝逸脱酵素の検討を行った。
結果と考察
1) ACS患者血清の自己抗体発現パターンの解析:プロテインアレイによる一次スクリーニングで抽出した33種類、およびアレイに含まれていなかった候補タンパク質11種類の抗原タンパク質について、健康成人93例、及び、ACS症例67例の血清を用いて二次スクリーニングを行った。その結果、18種類のタンパク質に対する抗体価がACS症例群で有意に上昇していた。 二次スクリーニングで選別した18種類の候補タンパク質について、引き続き健康成人192例、ACS症例380例、非ACS心疾患症例196例の血清を用いて三次スクリーニングを行ったところ、8種類のタンパク質に対する抗体価が、二群のコントロールと比較してACS症例で有意に上昇していた。
2) ACS患者血清NRDc濃度の解析:ACSを心筋壊死(心筋トロポニンの上昇)の有無により心筋梗塞と不安定狭心症に分類し、それぞれ発症後の時系列採血による検討を行った。その結果、TnT陰性、CK陰性の不安定狭心症群においてもTnT陽性、CK陰性の心筋梗塞群と同等に上昇していることが明らかになった。
3) 炎症性疾患におけるNRDcの病態生理学的意義の解明:
3-1) ACS: マウスACSモデル(冠動脈結紮)における免疫染色法を用いた検討から、虚血にさらされた心筋部位において、壊死に至る前の非常に早い段階(冠動脈結紮後1.5時間)から、NRDcの有意な発現低下を認めた。冠動脈結紮後の経時的採血の結果、血清NRDcは1.5時間後にすでに上昇していることが明らかになった。
3-2) NASH: マウスNASHモデル(コリン欠乏食、高脂肪食)を用いた検討で、NRDc欠損マウスにおける肝臓の脂肪沈着は、野生型と比較して軽微ながら、経時的に増強した。一方、NRDc欠損マウスでは血清中の肝逸脱酵素の上昇、肝線維化の進行はほとんど認めなかった。
2) ACS患者血清NRDc濃度の解析:ACSを心筋壊死(心筋トロポニンの上昇)の有無により心筋梗塞と不安定狭心症に分類し、それぞれ発症後の時系列採血による検討を行った。その結果、TnT陰性、CK陰性の不安定狭心症群においてもTnT陽性、CK陰性の心筋梗塞群と同等に上昇していることが明らかになった。
3) 炎症性疾患におけるNRDcの病態生理学的意義の解明:
3-1) ACS: マウスACSモデル(冠動脈結紮)における免疫染色法を用いた検討から、虚血にさらされた心筋部位において、壊死に至る前の非常に早い段階(冠動脈結紮後1.5時間)から、NRDcの有意な発現低下を認めた。冠動脈結紮後の経時的採血の結果、血清NRDcは1.5時間後にすでに上昇していることが明らかになった。
3-2) NASH: マウスNASHモデル(コリン欠乏食、高脂肪食)を用いた検討で、NRDc欠損マウスにおける肝臓の脂肪沈着は、野生型と比較して軽微ながら、経時的に増強した。一方、NRDc欠損マウスでは血清中の肝逸脱酵素の上昇、肝線維化の進行はほとんど認めなかった。
結論
本研究の目的は、1) ACS発症の予知が可能で、かつ2) 病因論的にも重要で治療標的になり得る新たなACSマーカーを同定することだが、平成26年度に得られた成果から、NRDcがそれらの条件を満たす可能性がさらに示唆された。一方、血中自己抗体の網羅的スクリーニングも順調に進んでおり、今後後ろ向きコホート試験(長浜コホートとの提携)を行い、NRDcおよび新規候補タンパク質のACS予知能検証を行う。
公開日・更新日
公開日
2015-09-11
更新日
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