慢性炎症を基盤とする心血管病態モニタリングマーカーの開発と臨床導入の実現ー慢性炎症の制御に着目した創薬のための新たなバイオマーカー開発ー

文献情報

文献番号
201412049A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性炎症を基盤とする心血管病態モニタリングマーカーの開発と臨床導入の実現ー慢性炎症の制御に着目した創薬のための新たなバイオマーカー開発ー
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-025
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 亨(東京大学医学部附属病院循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 相澤 健一(東京大学医学部附属病院循環器内科 )
  • 石田 純一(東京大学医学部附属病院循環器内科 )
  • 澤城 大悟(東京大学大学院医学系研究科 ユビキタス予防医学講座)
  • 藤田 大司(東京大学安全衛生部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、心血管系の慢性炎症を基盤とする組織リモデリングを反映するバイオマーカーを開発し、臨床における病態モニタリングの実現を主な目的とする。具体的には、慢性炎症が基礎病態である動脈硬化性冠動脈疾患、心臓線維化・心不全、大動脈瘤・解離を主な対象疾患とする。慢性炎症・臓器リモデリングのモニタリング用バイオマーカーの開発において、最重要であるのは比較対象となる臨床情報(画像診断所見や臨床イベント)の集積・管理とその解析である。
研究方法
心血管系の慢性炎症・臓器リモデリングを反映するバイオマーカーの確立を目的に、申請者が開発した心血管バイオマーカーの他に、既知または新規開発・導入マーカーや組み合わせの有用性を検討する。各疾患病態の最多症例数を有する施設と協力し、臨床検体や症例データの集積・管理の有機的な連携を通した、コア施設を中心としたネットワーク体制で進める。技術面では、複数マーカーを同時に検討するためのプラットフォーム開発を課題とし、病態診断・検査の効率化も図る。さらにバイオマーカーを通して新規病態機序(鍵となる新規蛋白・酵素等)を明らかにし、新たな治療戦略も考案する。
結果と考察
平成26年度は、大動脈瘤・解離に関しては、マウスモデルでの大動脈解離発症メカニズムの解析ならびに明らかとなったメカニズムに基づいたバイオマーカー探索また治療法開発を継続した。本研究により炎症性サイトカインである顆粒球マクロファージ増殖刺激因子(GMCSF)が大動脈解離の発症に重要であること、同因子が新規バイオマーカーとして有用である可能性及び大動脈解離の新規治療法の標的となることを明らかにした。一方、臨床症例を対象とした大動脈疾患の革新的バイオマーカー探索においては、東京大学医学部附属病院ならびに川崎幸病院での倫理申請を終了し、症例データや臨床サンプルの集積並びに解析を進める協力体制とスキームを確立した。また海外大規模レジストリーとの協力研究としてアメリカ国立衛生研究所(NIH)主導のGenTAC(遺伝素因を基とした胸部大動脈瘤及び心血管病態のレジストリー)研究での臨床サンプルの解析を進めており、新規炎症性因子のバイオマーカーとしての有用性を確認中である。心臓線維化・心不全に関しては、心臓線維化・リモデリングの病態における役割が注目されているインターロイキン33の受容体ST2を中心にヒトの血液検体を用いて測定を行い、心臓線維化・リモデリング反応との関連性を示した。冠動脈疾患・動脈硬化に関しては、我々が開発したバイオマーカー(BNP断片比)が、冠動脈病変全般の診断に有用であること、さらにそのメカニズムも明らかにした。
結論
心血管系の慢性炎症に対してのバイオマーカーを開発し、臨床現場において有効な診断・治療支援につなげ、さらには創薬はじめ新しい治療戦略開発の糸口とすることを最終目標とする。慢性炎症制御に着目した診断・創薬のための新たなバイオマーカー開発を中心とした橋渡し研究と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201412049Z