文献情報
文献番号
201412048A
報告書区分
総括
研究課題名
歯周疾患と糖尿病等との関係に着目した歯科保健指導方法の開発等に関する研究
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-019
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森田 学(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野)
研究分担者(所属機関)
- 荻野 景規(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科公衆衛生学分野)
- 和田 淳(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学分野)
- 友藤 孝明(岡山大学病院 予防歯科)
- 江國 大輔(岡山大学病院 予防歯科)
- 安藤 雄一(国立保健医療科学院生涯健康研究部・地域保健システム研究分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
歯周病と糖尿病等との密接な関係が明らかになりつつある。歯周病治療が糖尿病に対する効果について、効果を認める研究もあれば、それを否定する研究もあり一定の結論を得ていない。平成25年度は、糖尿病患者に対して歯科的介入(RCT)に関する論文をレビューした。その結果どの論文においても対象人数が少なく、歯周治療期間中の糖尿病治療の変化についての記載に乏しかった。歯周病および糖尿病の定義も多様であり、一定の傾向はみられなかった。一方、歯周治療でHbA1cが0.4%改善される可能性があることを示唆していた。また、対照群の設定は多様であり、SRPなどの治療を行った場合もあれば、無処置の設定の場合もあった。統計分析が必ずしも適切でない論文があった。
本年度は、そのレビューを参考に、岡山大学病院糖尿病外来患者に対して、歯科保健指導群(プラークコントロール指導のみの群)と歯周治療群(プラークコントロール指導に加えて歯周治療を実施する群)の2群に分けて、全顎的な非外科的歯周治療が終わってから6ヶ月間の介入結果を比較することを目的とした。一方、保健指導を考えるうえで、歯科はさまざまな生活習慣病に対するCommon risk factor approachを実施する環境として適している。日本歯科医師会の開発した新しい成人歯科健診プログラム(生活歯援プログラム)は、このアプローチを実践するための機会のひとつである。そこで、別の社会調査では、糖尿病/Body Mass Index(BMI)と、生活歯援プログラムの口腔保健アセスメント項目およびその回答パターンにしたがって類型化(リスク評価)した口腔保健支援型との関連性を調べることを目的とした。
本年度は、そのレビューを参考に、岡山大学病院糖尿病外来患者に対して、歯科保健指導群(プラークコントロール指導のみの群)と歯周治療群(プラークコントロール指導に加えて歯周治療を実施する群)の2群に分けて、全顎的な非外科的歯周治療が終わってから6ヶ月間の介入結果を比較することを目的とした。一方、保健指導を考えるうえで、歯科はさまざまな生活習慣病に対するCommon risk factor approachを実施する環境として適している。日本歯科医師会の開発した新しい成人歯科健診プログラム(生活歯援プログラム)は、このアプローチを実践するための機会のひとつである。そこで、別の社会調査では、糖尿病/Body Mass Index(BMI)と、生活歯援プログラムの口腔保健アセスメント項目およびその回答パターンにしたがって類型化(リスク評価)した口腔保健支援型との関連性を調べることを目的とした。
研究方法
2014年4月16日から12月1日に岡山大学病院を受診した歯周病を有する2型糖尿病患者のうち、同意の得られた24名を、歯科保健指導群(プラークコントロール指導のみの群、13名)と歯周治療群(プラークコントロール指導に加えて歯周治療を行う群、11名)の2群に乱数表を用いて無作為に分けた。研究の種類・デザインはシングルブラインド・ランダム化比較研究とした。割り付けの結果を知らない3名の歯科医師が歯周検査を実施した。歯周検査項目は、歯周ポケットの深さ、クリニカルアタッチメントレベル、プロービング時出血の有無、歯垢付着の程度(PCR)とした。唾液検査では、Porphyromonas gingivalis (Pg)、Tannerella forsythia (Tf)、Treponema denticola (Td)が占める割合を定量した。血液検査ではHbA1c、随時血糖およびグリコアルブミン、hs-CRPおよびIL-1beta、NOx、Arginase-1、アルギニン、シトルリンおよびオルニチン等を測定した。また、質問票を用いて、生活習慣、口腔衛生習慣および糖尿病治療に関連するQOLを調べた。別に行った社会調査(Web調査)は014年の2月に実施した。対象者はWeb調査会社の登録モニタであり、2型糖尿病のある408名と2型糖尿病のない408名であった。
結果と考察
歯科保健指導群と歯周治療群における歯周病の重症度、脂質代謝、糖尿病慢性血管合併症、薬物治療の内容には大きな差異を認めず、今後の歯科治療介入の有用性を明らかにする上で適切な症例登録が行われつつあると考えた。3か月後の再評価が終了した21名(歯科保健指導群12名、歯科治療群9名)の各群のベースライン時と3か月後の再評価時の各指標の変動を追跡した。主要評価項目であるHbA1cには3か月後の再評価時において、2群に有意な差は認められなかった。一方、歯科保健指導群では12名中6名(50。0%)が上昇したのに対して、歯周治療群では9名中2名(22。2%)が上昇した。PD4mm以上を有する歯の割合は歯科保健指導群では12名中4名(33。3%)が上昇したのに対して、歯周治療群では9名中1名(11。1%)のみが上昇した。Web調査において、糖尿病を目的変数とし、口腔保健支援型とBMIを説明変数としたロジスティック回帰分析を行った結果、全体でも、男女別でもBMI以外に有意差は見られなかった。
結論
再評価が3ヶ月までしか終えていない,また分析対象人数も少ないので,一定の結論を得るには至らないが,歯科的介入,保健指導による糖尿病への効果は今のところ明らかには認められない。また,生活歯援プログラムにおいて糖尿病対策を行う場合,口腔保健支援型という枠組みで糖尿病と歯科疾患とのCommon risk factor approachを模索するのは困難であると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2015-09-11
更新日
-