文献情報
文献番号
201412034A
報告書区分
総括
研究課題名
身体活動・不活動量、運動量の実態とその変化が生活習慣病発症に及ぼす影響と運動介入支援の基盤構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 秋三(九州大学 基幹教育院)
研究分担者(所属機関)
- 清原 裕(九州大学 医学研究院)
- 眞崎 義憲(九州大学 基幹教育院)
- 山津 幸司(佐賀大学 文化教育学部)
- 内藤 義彦(武庫川女子大学 生活環境学部)
- 丸山 徹(九州大学 基幹教育院)
- 米本 孝二(久留米大学 バイオ統計センター)
- 田中 喜代次(筑波大学 人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は,久山町住民を対象に客観的に評価された日本人の身体活動量・座位行動の実態およびその3年後の変化に関する実態調査および5年間の握力の変化が総・死因別死亡に及ぼす前向き研究に加え,ICTによる非対面型生活習慣改善プログラムおよび医療機関における対面型運動療法の成果に基づき,運動療法支援マニュアルを作成することである.
研究方法
課題①:客観的な評価に基づく身体活動・座位行動の変化:久山町研究
2009年度と2012年度の健診を受診した40歳以上の久山町住民のうち,1,424名が加速度計を用いた2回の測定に参加した.測定には3軸加速度計センサー活動量計(Active style Pro)を用い,2時点共に健診を受診した日から連続した7日間中4日以上、起床時から就寝時までの活動を測定した1123名を解析対象とした.
課題②:握力の経年変化が死亡リスクに与える影響:久山町研究
久山町住民を対象に、握力の経年変化が死亡リスクに及ぼす影響を検討した。対象者は、1988年に健診を受けた既往歴のない40歳以上の1,893名であった。握力の経年変化レベルは,1983年と1988年に測定した最大値の変化量を1年当たりに換算した.これを性・年齢階級別の4群ごとに3群に分類し対象集団を19年間追跡した.
課題③:ICTによる生活習慣改善プログラムの評価:糖尿病罹患者に対する介入研究
対象者は久留米大学病院に通院しインターネットにアクセス可能な糖尿病患者13名である.全員が糖尿病専門医である主治医の許可を受け,本研究に参加した.介入プログラムは「CPAスマートライフスタイルウェブ版」であり,週1回の専門家からの助言を受けながら12週間実践を続けた.
課題④:15年以上の長期に亘る運動習慣化支援が有疾患者の健康度に及ぼす影響
循環器系疾患専門病院において,高血圧,糖尿病,脂質異常症,心筋梗塞,パーキンソン病を有する患者20名に対して有酸素性・筋力・レクリエーション運動を中心とした運動教室を週1回通年に亘り開催した.そのうち,15年以上継続している3名に着目し長期的変化を観察した.
2009年度と2012年度の健診を受診した40歳以上の久山町住民のうち,1,424名が加速度計を用いた2回の測定に参加した.測定には3軸加速度計センサー活動量計(Active style Pro)を用い,2時点共に健診を受診した日から連続した7日間中4日以上、起床時から就寝時までの活動を測定した1123名を解析対象とした.
課題②:握力の経年変化が死亡リスクに与える影響:久山町研究
久山町住民を対象に、握力の経年変化が死亡リスクに及ぼす影響を検討した。対象者は、1988年に健診を受けた既往歴のない40歳以上の1,893名であった。握力の経年変化レベルは,1983年と1988年に測定した最大値の変化量を1年当たりに換算した.これを性・年齢階級別の4群ごとに3群に分類し対象集団を19年間追跡した.
課題③:ICTによる生活習慣改善プログラムの評価:糖尿病罹患者に対する介入研究
対象者は久留米大学病院に通院しインターネットにアクセス可能な糖尿病患者13名である.全員が糖尿病専門医である主治医の許可を受け,本研究に参加した.介入プログラムは「CPAスマートライフスタイルウェブ版」であり,週1回の専門家からの助言を受けながら12週間実践を続けた.
課題④:15年以上の長期に亘る運動習慣化支援が有疾患者の健康度に及ぼす影響
循環器系疾患専門病院において,高血圧,糖尿病,脂質異常症,心筋梗塞,パーキンソン病を有する患者20名に対して有酸素性・筋力・レクリエーション運動を中心とした運動教室を週1回通年に亘り開催した.そのうち,15年以上継続している3名に着目し長期的変化を観察した.
結果と考察
40歳以上の久山町地域住民の平均座位時間は3年間で有意に増加し,中高強度活動および歩数はいずれも減少した.座位行動時間・中高強度身体活動・歩数のいずれも40歳代,50歳代では2時点間に有意な差が認められなかったが,60歳代・70歳代では座位行動時間が有意に増加し,中高強度活動・歩数は減少していた.福岡県久山町の地域住民を対象に,5年間の握力の経年変化が死亡リスクに及ぼす影響を検討した.握力の経年低下レベルは循環器死亡およびその他の死亡との間に有意な正の関連を示したが,悪性腫瘍死亡および呼吸器死亡との間に明らかな関連はなかった.
糖尿病患者を対象とした本プログラムの介入効果およびユーザビリティーは,現在介入途中であるため評価できていないが,参加者のリクルートの状況を考慮すると,ICT経由の生活習慣改善プログラムに対するバリアは高くはないと推察できた.その理由として,インターネットにアクセス可能な患者で研究の説明を行うことができた19名の6割強が研究参加に同意したからである.しかし,本研究の対象者が大学病院に通院する患者であり,糖尿病の合併症予防に対する意識やモチベーションの高さが今回の研究参加率を高めた可能性がある.また研究協力者で糖尿病専門医である医師からの勧奨が研究参加率を高めた可能性も考えられる.今後の研究でも,治療中の患者をリクルートする場合には,可能な範囲で主治医の勧奨を行うのが望ましいと考えられた.
医療機関における対面型運動療法における運動習慣化の健康利益は1年以内など比較的速やかに現れること,長期間続けることで,常に暦年齢を下回ることが示唆された.また,長期間運動教室に参加することで,加齢に伴う全身持久性体力の自然低下を抑制できる可能性が示唆された.
糖尿病患者を対象とした本プログラムの介入効果およびユーザビリティーは,現在介入途中であるため評価できていないが,参加者のリクルートの状況を考慮すると,ICT経由の生活習慣改善プログラムに対するバリアは高くはないと推察できた.その理由として,インターネットにアクセス可能な患者で研究の説明を行うことができた19名の6割強が研究参加に同意したからである.しかし,本研究の対象者が大学病院に通院する患者であり,糖尿病の合併症予防に対する意識やモチベーションの高さが今回の研究参加率を高めた可能性がある.また研究協力者で糖尿病専門医である医師からの勧奨が研究参加率を高めた可能性も考えられる.今後の研究でも,治療中の患者をリクルートする場合には,可能な範囲で主治医の勧奨を行うのが望ましいと考えられた.
医療機関における対面型運動療法における運動習慣化の健康利益は1年以内など比較的速やかに現れること,長期間続けることで,常に暦年齢を下回ることが示唆された.また,長期間運動教室に参加することで,加齢に伴う全身持久性体力の自然低下を抑制できる可能性が示唆された.
結論
地域住民において3年間であっても60歳以降で有意に身体活動が減少し,座位行動が増加していた.勤労者世代において,余暇時の身体活動の意識付けを行うことが重要であると思われた.地域住民における握力の経年低下は,総死亡および循環器死亡の独立した危険因子であった.
糖尿病患者を対象としたICT環境下で展開される本プログラムは60歳代までの男性の参加者が多かったことから,性や年齢の影響を受けにくいプログラムへと改善すべきであると考えられた.医療機関における対面型運動療法参加者の運動習慣化の健康利益は1年以内など比較的速やかに現れること,長期間続けることで常に暦年齢を下回ることが示唆された.また,長期間運動教室に参加することで加齢に伴う全身持久性体力の自然低下を抑制できる可能性が示唆された.
糖尿病患者を対象としたICT環境下で展開される本プログラムは60歳代までの男性の参加者が多かったことから,性や年齢の影響を受けにくいプログラムへと改善すべきであると考えられた.医療機関における対面型運動療法参加者の運動習慣化の健康利益は1年以内など比較的速やかに現れること,長期間続けることで常に暦年齢を下回ることが示唆された.また,長期間運動教室に参加することで加齢に伴う全身持久性体力の自然低下を抑制できる可能性が示唆された.
公開日・更新日
公開日
2015-09-11
更新日
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