特定健診・保健指導におけるメタボリックシンドロームの診断・管理のエビデンス創出に関する横断・縦断研究

文献情報

文献番号
201412011A
報告書区分
総括
研究課題名
特定健診・保健指導におけるメタボリックシンドロームの診断・管理のエビデンス創出に関する横断・縦断研究
課題番号
H22-循環器等(生習)-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
門脇 孝(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 島本 和明(札幌医科大学附属病院 )
  • 清原 裕(九州大学大学院医学研究院環境医学分野)
  • 大門 真(弘前大学大学院医学研究科 )
  • 中尾 一和(京都大学大学院医学系研究科メディカルイノベーションセンター )
  • 伊藤 千賀子(医療法人グランドタワーメディカルコート )
  • 磯 博康(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 伊藤 貞嘉(東北大学大学院医学系研究科)
  • 横手 幸太郎(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 野田 光彦(独立行政法人国立国際医療研究センター)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学医学部 衛生学公衆衛生学)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病センター予防健診部)
  • 木山 昌彦(大阪がん循環器病予防センター)
  • 島袋 充生(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 中川 秀昭(金沢医科大学医学部 )
  • 斉藤 功(愛媛大学大学院医学系研究科 看護学専攻 )
  • 山田 美智子(公益財団法人放射線影響研究所)
  • 高本 偉碩(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
16,370,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
心血管疾患の高リスク者のスクリーニングという観点から,メタボリックシンドロームの診断基準の検討と特定健診・特定保健指導の最適化に必要なエビデンスを創出する.
研究方法
北海道端野・壮瞥町,山形県舟形町,福岡県久山町,京都職域(MONKS),広島健診受診者集団,茨城県筑西市協和地区,大阪府八尾市南高安地区,大阪府吹田市,沖縄県豊見城市検診集団,富山職域,愛媛県大洲市,広島県地域コホートの計12コホートが参加し,全国規模の調査・解析を行った.
結果と考察
先行研究での集団を対象とした縦断研究では,わが国の診断基準に従ってメタボリックシンドロームを診断した場合,メタボリックシンドローム群の非メタボリックシンドローム群に対する心血管イベントのハザード比は,男性1.66,女性1.54であった.仮にウエスト周囲長の基準値を80~90cmの間で変化させても,常にメタボリックシンドローム群で有意にハザード比は高く,概ね1.5~1.7程度で大きな変化はないことが示された.海外の診断基準に準拠して,仮にウエスト周囲長の基準を必須としない場合の,メタボリックシンドローム群の非メタボリックシンドローム群に対する心血管イベントのハザード比を検討すると,ハザード比に大きな変化はなかったものの,PAFは上昇していた.また,ウエスト周囲長(臍レベル)の基準値を男性85cm,女性90cmとする現行の特定保健指導の階層化基準で選定された群の心血管疾患発症のリスクは,コントロール群より高いことが示された.また,BMIとウエスト周囲長の基準値をともに満たさない情報提供レベル群の場合でも,リスクファクターが0の者と比較すると,リスクファクターが存在あるいは集積している者では心血管疾患発症のリスクが上昇していた.
さらに,2010年前後にベースラインを設定した集団を対象とした縦断研究では,保健指導レベル別にみた心血管疾患発症・死亡のリスクに関して検討したところ,女性では,BMIとウエスト周囲長の基準値をともに満たさない情報提供レベル群と比較して,動機づけ支援レベル群・積極的支援レベル群で全循環器疾患発症+死亡のハザード比の上昇傾向が認められたが,全循環器疾患発症+死亡数が少ないため,統計学的には有意ではなかった.今後とも各コホートで継続的な追跡調査を実施し,解析可能対象者数が増加した段階で,改めて統合的な解析を行う機会が得られることが期待される.
結論
メタボリックシンドロームの診断基準,ならびに特定健診・保健指導におけるウエスト周囲長の位置付けと基準値の設定,保健指導対象者の抽出アルゴリズムに関しては,横断研究ならびに縦断研究における検討で示された本研究のエビデンスに加えて,社会的な保健医療資源も勘案しながら,予防医学的見地から検討すべきものである.

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201412011B
報告書区分
総合
研究課題名
特定健診・保健指導におけるメタボリックシンドロームの診断・管理のエビデンス創出に関する横断・縦断研究
課題番号
H22-循環器等(生習)-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
門脇 孝(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 島本 和明(札幌医科大学附属病院)
  • 清原 裕(九州大学大学院医学研究院環境医学分野)
  • 大門 真(弘前大学大学院医学研究科)
  • 中尾 一和(京都大学大学院医学系研究科メディカルイノベーションセンター)
  • 伊藤 千賀子(医療法人グランドタワーメディカルコート)
  • 磯 博康(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 伊藤 貞嘉(東北大学大学院医学系研究科)
  • 横手 幸太郎(千葉大学大学院医学研究院)
  • 野田 光彦(独立行政法人国立国際医療研究センター)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学医学部 衛生学公衆衛生学)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター予防健診部)
  • 木山 昌彦(大阪がん循環器病予防センター循環器病予防健診部)
  • 島袋 充生(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 中川 秀昭(金沢医科大学医学部 公衆衛生学)
  • 斉藤 功(愛媛大学大学院医学系研究科 看護学専攻 )
  • 山田 美智子(公益財団法人放射線影響研究所 臨床研究部)
  • 高本 偉碩(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
心血管疾患の高リスク者のスクリーニングという観点から,メタボリックシンドロームの診断基準の検討と特定健診・特定保健指導の最適化に必要なエビデンスを創出する.
研究方法
北海道端野・壮瞥町,山形県舟形町,福岡県久山町,京都職域(MONKS),広島健診受診者集団,茨城県筑西市協和地区,大阪府八尾市南高安地区,大阪府吹田市,沖縄県豊見城市検診集団,富山職域,愛媛県大洲市,広島県地域コホートの計12コホートが参加し,全国規模の調査・解析を行った. 横断研究では,ベースラインを2010年前後に設定して新たにデータを収集した.特に,国際比較を可能とするべく,アジア諸国を含め海外で一般的とされている中点レベルでもウエスト周囲長の測定を実施し,特定健診・保健指導の対象となる40~74歳の男性20,591人,女性17,901人のデータに関して解析を行った.縦断研究では,先行研究での集団(男性14,068人,女性17,039人)について,引き続き心血管疾患発症をフォローするとともに,新たに2010年前後にベースラインを設定した集団についても心血管疾患発症の追跡調査を行い,保健指導レベル別にみた心血管疾患発症のリスクに関して検討した.
結果と考察
横断研究において,測定位置の違いによるウエスト周囲長の対応関係は,中点レベル(cm)→臍レベル(cm)の順に,男性では75→76.5,80→81.1,85→85.7,90→90.3とほぼ同等であったが,女性では75→79.6,80→83.9,85→88.3,90→92.6と無視できない差異が存在することが明らかとなった.次に,ウエスト周囲長とメタボリックシンドロームのリスクファクター(血糖高値・脂質異常・血圧高値)の関連をみると,ウエスト周囲長の増加に伴い,メタボリックシンドロームの平均リスクファクター数・リスクファクター集積者の割合は増加した.平均リスクファクター数が1を超えるウエスト周囲長(臍レベル)のカテゴリーは,男性では85-90cmから,女性では90-95cmからで,男女差が認められた.また,リスクファクター集積(2つ以上)を予測するウエスト周囲長に関して検討すると,ROC曲線解析で感度と特異度の和を最大にするカットオフ値は, 臍レベルでは男性85~87cm,女性82~84cmであったが,中点レベルでは男性84~86cm,女性78~80cmと算出された.現在,国際糖尿病連合(IDF)は日本を含むアジア地域におけるウエスト周囲長(中点レベル)の基準値として,男性90cm,女性80cmを提唱しているが, ROC曲線解析で得られたカットオフ値と比較すると,女性では一致したものの,男性ではおよそ5cm小さい値となることが明らかとなった.
縦断研究では,先行研究での集団を対象とした検討では,わが国の診断基準に従ってメタボリックシンドロームを診断した場合,メタボリックシンドローム群の非メタボリックシンドローム群に対する心血管イベントのハザード比は,男性1.66,女性1.54であった.海外の診断基準に準拠して,仮にウエスト周囲長の基準を必須としない場合の,メタボリックシンドローム群の非メタボリックシンドローム群に対する心血管イベントのハザード比を検討すると大きな変化はなかったものの,PAFは上昇していた.また,ウエスト周囲長(臍レベル)の基準値を男性85cm,女性90cmとする現行の特定保健指導の階層化基準で選定された群の心血管疾患発症のリスクは,コントロール群より高いことが示された.また,BMIとウエスト周囲長の基準値をともに満たさない情報提供レベル群の場合でも,リスクファクターが0の者と比較すると,リスクファクターが存在あるいは集積している者では心血管疾患発症のリスクが上昇していた.さらに,2010年前後にベースラインを設定した集団を対象とした検討では,女性において,情報提供レベル群と比較して動機づけ支援レベル群・積極的支援レベル群で全循環器疾患発症+死亡のハザード比の上昇傾向が認められたが,イベント数が少ないため,統計学的には有意ではなかった.今後とも各コホートで継続的な追跡調査を実施し,解析可能対象者数が増加した段階で,改めて統合的な解析を行う機会が得られることが期待される.
結論
メタボリックシンドロームの診断基準,ならびに特定健診・保健指導におけるウエスト周囲長の位置付けと基準値の設定,保健指導対象者の抽出アルゴリズムに関しては,横断研究ならびに縦断研究における検討で示された本研究のエビデンスに加えて,社会的な保健医療資源も勘案しながら,予防医学的見地から検討すべきものである.

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201412011C

収支報告書

文献番号
201412011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,000,000円
(2)補助金確定額
18,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,255,167円
人件費・謝金 3,562,341円
旅費 1,635,760円
その他 2,920,126円
間接経費 1,630,000円
合計 18,003,394円

備考

備考
利息 148円、自己資金 3,246円

公開日・更新日

公開日
2015-10-16
更新日
-