文献情報
文献番号
201412008A
報告書区分
総括
研究課題名
1型糖尿病の疫学と生活実態に関する調査研究
課題番号
H26-循環器等(政策)-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田嶼 尚子 (東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 雨宮 伸(埼玉医科大学 小児科)
- 浦上 達彦(日本大学病院 小児科)
- 川村 智行(大阪市立大学大学院医学研究科 発達小児医学)
- 横谷 進(国立成育医療研究センター 生体防御系小児科)
- 杉原 茂孝(東京女子医科大学東医療センター 小児科)
- 菊池 信行(横浜市立みなと赤十字病院 小児科)
- 菊池 透(埼玉医科大学 小児科)
- 西村 理明(東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科)
- 中島 直樹(九州大学病院 メディカルインフォメーションセンター)
- 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
- 門脇 孝(東京大学大学院医学系研究科 代謝・栄養病態学)
- 緒方 勤(浜松医科大学小児科 小児科)
- 岡田 美保子(川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部 医療情報学科・医療情報学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1型糖尿病はインスリン必須の稀な疾患で生活上の困難さもあるが、国内の有病者数や発症率、血糖管理・合併症の状況、生活実態に関する統一した見解はない。特に、成人発症1型糖尿病に関する疫学調査は乏しい。その実態を調査し糖尿病の医療や福祉サービスの向上に資することを研究の目的とした。
研究方法
1.疫学的診断基準の作成
小児1型糖尿病の国際的な疫学的診断基準として一般的に使用されてきた基準では2型糖尿病との鑑別が困難で、特に成人における症例を正確に把握できない。そこで本研究では、臨床的な視点を踏まえて、①医師診断による病名(1型糖尿病、IDDM、インスリン依存型糖尿病)、②自己抗体測定(GAD抗体、IA-2抗体)、③インスリン治療、④C-peptide測定、⑤除外基準(二次性糖尿病、糖尿病合併妊娠、膵癌術後、SU薬の使用)などの項目を暫定的な診断基準に盛り込み、その精度を検討する。
2.有病者数と有病率・発症率の把握
小児期発症1型糖尿病については、小児慢性特定疾患研究事業による既存のデータベースを解析し、16歳未満発症例の有病者数を推定し、有病率と年間発症率を算出する。成人発症例については、複数の大規模研究データベースを対象に、暫定的診断基準を用いて基準を満たす症例を抽出する。
抽出された症例を他の臨床情報等と比較し、各データベースにより把握された患者数及び作成した診断基準の妥当性を検討する。
3.C-R法を用いた実証研究
全数調査に代わる標本調査であるCapture-recapture(C-R)法を用いる。独立した複数の情報源間で重なって把握された数値等を数式に当てはめ、性、生年月、郵便番号により、個人を標識し、これにより、真の有病者数を推定する。
平成26年度は、C-R法に関する文献的考察ならびに過去における大阪府での調査研究から、本研究にC-R法をどのように適応するかを検討する。
4.治療・管理と生活の実態に関する調査
患者の基礎データ、診断時の症状、血糖等の管理状態、合併症の有無とその病期に加えて診療や通院の費用等の経済的負担及び就学・就労への影響等を明らかにするためアンケート調査票を作成する。実施については倫理委員会の承認を得る。予備調査として小児インスリン治療研究会第3次コホートを含め、1型糖尿病を多数診療している14施設宛てに調査票を送付する。対象は、発症年齢16歳未満、かつ平成26年4月1日現在20歳以上の1型糖尿病患者である。
小児1型糖尿病の国際的な疫学的診断基準として一般的に使用されてきた基準では2型糖尿病との鑑別が困難で、特に成人における症例を正確に把握できない。そこで本研究では、臨床的な視点を踏まえて、①医師診断による病名(1型糖尿病、IDDM、インスリン依存型糖尿病)、②自己抗体測定(GAD抗体、IA-2抗体)、③インスリン治療、④C-peptide測定、⑤除外基準(二次性糖尿病、糖尿病合併妊娠、膵癌術後、SU薬の使用)などの項目を暫定的な診断基準に盛り込み、その精度を検討する。
2.有病者数と有病率・発症率の把握
小児期発症1型糖尿病については、小児慢性特定疾患研究事業による既存のデータベースを解析し、16歳未満発症例の有病者数を推定し、有病率と年間発症率を算出する。成人発症例については、複数の大規模研究データベースを対象に、暫定的診断基準を用いて基準を満たす症例を抽出する。
抽出された症例を他の臨床情報等と比較し、各データベースにより把握された患者数及び作成した診断基準の妥当性を検討する。
3.C-R法を用いた実証研究
全数調査に代わる標本調査であるCapture-recapture(C-R)法を用いる。独立した複数の情報源間で重なって把握された数値等を数式に当てはめ、性、生年月、郵便番号により、個人を標識し、これにより、真の有病者数を推定する。
平成26年度は、C-R法に関する文献的考察ならびに過去における大阪府での調査研究から、本研究にC-R法をどのように適応するかを検討する。
4.治療・管理と生活の実態に関する調査
患者の基礎データ、診断時の症状、血糖等の管理状態、合併症の有無とその病期に加えて診療や通院の費用等の経済的負担及び就学・就労への影響等を明らかにするためアンケート調査票を作成する。実施については倫理委員会の承認を得る。予備調査として小児インスリン治療研究会第3次コホートを含め、1型糖尿病を多数診療している14施設宛てに調査票を送付する。対象は、発症年齢16歳未満、かつ平成26年4月1日現在20歳以上の1型糖尿病患者である。
結果と考察
1.暫定的疫学的診断基準の適応と妥当性の検討
臨床的診断基準に含まれる基本項目と除外項目を組み合わせた暫定的疫学的診断基準を複数組作成した。これらを用いて、九州大学病院データベースに格納された約30万症例から1型糖尿病推定症例364人を抽出した。確かな症例を疫学調査で把握するのは困難であるが、医療ID制の確立を視野に入れ、1型糖尿病の疫学的診断基準を策定し、症例把握と有病者数を明らかにしたい。
2.有病者数と発症率の把握
小児慢性特定疾患治療研究事業に登録された糖尿病症例(16歳未満)のデータ(平成22年~24年)を解析した結果、1型糖尿病の年間発症率(対10万人年)は2.64だった。過去約15年間、日本では年間発症率の大幅な増加は認めないこと、発症率のピークは思春期にあることがわかった。
3.C-R法を用いた実証研究
C-R法を用いた実証研究として、過去に行った大阪市内の小児期発症1型糖尿病のC-R法による有病率の推定研究を検証した。平成22年12月、3つの情報源を用いて有病率を算出した結果、大阪市内における16歳未満の人口は34万人であり、1型糖尿病患者の有病率は、それぞれの情報源を用いた場合において、14.7/10万人と16.7/10万人だった。
4.治療・管理と生活の実態に関する調査
治療と症状管理状態、並びに経済的負担及び就学・就労への影響等を含めた生活実態を明らかにするため、アンケート調査票を作成した。予備調査として1型糖尿病を多数診療している14施設宛てに調査票を送付した。
稀有でしかも慢性の経過を取り、完治しない疾患を持つ人々の生活実態を把握し、その福祉対策を講ずることは、行政にとって極めて重要であるため、調査票の項目や回収率については十分検討しており、次年度は標本数を増やすよう努力する。
5.班会議の開催
全体班会議に加え、疫学的診断基準分科会、治療・管理と生活実態分科会と2分科会を設けた。
臨床的診断基準に含まれる基本項目と除外項目を組み合わせた暫定的疫学的診断基準を複数組作成した。これらを用いて、九州大学病院データベースに格納された約30万症例から1型糖尿病推定症例364人を抽出した。確かな症例を疫学調査で把握するのは困難であるが、医療ID制の確立を視野に入れ、1型糖尿病の疫学的診断基準を策定し、症例把握と有病者数を明らかにしたい。
2.有病者数と発症率の把握
小児慢性特定疾患治療研究事業に登録された糖尿病症例(16歳未満)のデータ(平成22年~24年)を解析した結果、1型糖尿病の年間発症率(対10万人年)は2.64だった。過去約15年間、日本では年間発症率の大幅な増加は認めないこと、発症率のピークは思春期にあることがわかった。
3.C-R法を用いた実証研究
C-R法を用いた実証研究として、過去に行った大阪市内の小児期発症1型糖尿病のC-R法による有病率の推定研究を検証した。平成22年12月、3つの情報源を用いて有病率を算出した結果、大阪市内における16歳未満の人口は34万人であり、1型糖尿病患者の有病率は、それぞれの情報源を用いた場合において、14.7/10万人と16.7/10万人だった。
4.治療・管理と生活の実態に関する調査
治療と症状管理状態、並びに経済的負担及び就学・就労への影響等を含めた生活実態を明らかにするため、アンケート調査票を作成した。予備調査として1型糖尿病を多数診療している14施設宛てに調査票を送付した。
稀有でしかも慢性の経過を取り、完治しない疾患を持つ人々の生活実態を把握し、その福祉対策を講ずることは、行政にとって極めて重要であるため、調査票の項目や回収率については十分検討しており、次年度は標本数を増やすよう努力する。
5.班会議の開催
全体班会議に加え、疫学的診断基準分科会、治療・管理と生活実態分科会と2分科会を設けた。
結論
本研究の結果は、わが国における小児・成人1型糖尿病の疫学に関する新知見を提供し、1型糖尿病とともに生きる患者の社会参加の促進のための施策に反映することができる。今後とも研究者間で緊密な連携をとり、関連学会の強力な支援のもとに一丸となって遂行する
公開日・更新日
公開日
2015-09-09
更新日
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