脳卒中や心筋梗塞に関する医療連携構築に関する研究

文献情報

文献番号
201412003A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中や心筋梗塞に関する医療連携構築に関する研究
課題番号
H25-心筋-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
横田 裕行(日本医科大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 織田  順(東京医科大学救急・災害医学分野)
  • 行岡 哲男(東京医科大学救急・災害医学分野)
  • 高橋 眞冬(青梅市立総合病院神経内科)
  • 小池 城司(福岡市医師会成人病センター)
  • 嶋津 岳士(大阪大学大学院医学系研究科救急医学)
  • 石見  拓(京都大学環境安全保健機構附属健康科学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 救急車要請数と救急医療機関数のバランスが崩れて行く中、救急現場から適切な救急医療機関へ迅速に搬送する体制構築が困難な状況となっている。地域の社会資源としての救急医療システムを有効に運用するためは救急現場(病院前)から救急医療機関、回復期、維持期の医療機関、介護施設、そして在宅医療への密接な医療連携の推進が必要である。本研究では病院前から急性期、回復期、維持期医療機関への医療連携に関して検討することを目的とした。
研究方法
 上記の目的を達成するために典型的な救急疾患である脳卒中や心筋梗塞での医療連携のあり方を以下の視点で検討した。
1)救急医療機関への医療連携問題の背景
 都内救命救急センターに症例を対象とし、転院に関する問題点を患者の病態や患者背景とうの因子を総合的に判断する指標を用いて検討した。
2)急性心筋梗塞の医療連携分析
 福岡市を対象に急性心筋梗塞地域連携パスにおける課題を検討した。データベースから「福岡市医師会方式急性心筋梗塞地域連携パス」の運用の現状、課題について検討した。
3)脳卒中医療の連携分析
 都内で積極的に脳卒中地域連携パスを導入している西多摩2次医療圏(人口40万人、救急医療機関7施設、回復期4施設、介護医療療養型10施設)を対象に、脳卒中の医療連携についての課題を検討した。
4)プレホスピタルでの医療連携
 病院選定や病病連携、病診連携のための情報通信技術(ICT)システムの導入現状、理想的なシステムについて全国の248地域MC協議会にアンケート調査を行った。また、病院前における、現病歴・神経学的観察評価・心電図等の傷病者情報の有益な共有のあり方について検討し、救急隊が記録する病院前の救急活動記録と、最終診断、集学的治療開始までの時間や生存転帰などの病院到着後情報を突合し、病院前後での情報連携の効果を科学的に検討するとともに、その課題を明らかにした。
5)病病連携のICT
 大阪の高度救命救急センターと外部の救急医療施設(大阪府下の二次・三次救急医療機関、計9施設(平成24年度))を高解像度(HD)ビデオ会議によって結び、遠隔医療支援を行うICTシステムの有用性と課題を検討した。
結果と考察
 地域の社会資源としての救急医療システムを有効に運用するためは病院前から救急医療機関、回復期、維持期の医療機関、介護施設、そして在宅医療への密接な医療連携の推進とICT(情報通信技術)技術を利用したシステムの活用は重要であると結論された。本研究では病院前から急性期、回復期、維持期医療機関への医療連携に関して脳卒中や心筋梗塞等の典型的な救急疾患で医療連携のあり方を連携パスやICT活用を検討した。
1)救急医療機関への医療連携問題の背景
 救命救急センターは地域の最終的な救急医療機関として機能している。効率的な病床運用のためには、重症な状態を脱した時点で速やかに病床調整を行うことが必要であることが指摘されたが、非救急の患者と異なり患者背景が多様で、かつ重症度が高いためメディカルソーシャルワーカー(MSW)ではなく、医師が直接転院交渉しなければならない場面が多いこと、社会的弱者が多く、福祉的なサポートに時間を要し、転院が急には進まない傾向が明らかになった。
2)急性心筋梗塞の医療連携分析
 急性心筋梗塞の地域連携パスの実態を検討した結果、利用度が低いことが明らかになった。脳卒中や大腿骨頸部骨折と異なり、診療報酬上の保険点数が算定されいないことが理由の一つとして指摘された。また、地域連携パスが急性期病院の視点から作成され、それ回復期、維持期の医療機関では使いづらい点も指摘された。
3)脳卒中の医療連携分析
 脳卒中に罹患した患者が地域医療資源を有効に利用するために,急性期以降の療養支援チームは療養場所や患者家族の状況に合わせた対応が必要であることが明らかになった。
4)プレホスピタルでの医療連携
 救急医療のICTシステムは、救急現場において病院選定のために導入されたケースが多く、病院選定に関して選定作業のムダの解消や時間の短縮に関して大きな効果があった。一方で、人口規模や救急病院が限定されている地域では病院選定の必要性が少ないなどの理由から、病院選定の機能を有するICTシステムの必要性を感じていないという地域もあり、地域MCの実情に合わせたICT導入の必要性が判明した。
5)病病連携のICT
 ICTによる遠隔医療支援は、特に三次救急医療施設に対して、偏在する専門医資源を補完する可能性が明らかになった。
結論
 現在導入されている医療連携パスを、病院前情報も連結した患者個人の情報が一括に集約され、それらの情報を救急隊員、急性期医療機関の医療スタッフ、そして回復期、維持期のスタッフや支援者が共有できるシステム開発と導入が期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201412003Z