腹腔内転移癌を対象としたHB-EGFを分子標的とするがん治療薬BK-UMの第2相試験

文献情報

文献番号
201411048A
報告書区分
総括
研究課題名
腹腔内転移癌を対象としたHB-EGFを分子標的とするがん治療薬BK-UMの第2相試験
課題番号
H25-実用化(がん)-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岩本 亮(大阪大学 微生物病研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 目加田 英輔(大阪大学 微生物病研究所)
  • 澤 芳樹(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 富山 憲幸(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 沖 英次(国立大学法人九州大学)
  • 前原 喜彦(国立大学法人九州大学)
  • 宮本 新吾(福岡大学)
  • 山下 裕一(福岡大学)
  • 篠崎 大(東京大学医科学研究所)
  • 安井 寛(東京大学医科学研究所)
  • 江見 泰徳(社会福祉法人恩賜財団済生会支部福岡県済生会福岡総合病院)
  • 室 圭(愛知県がんセンター)
  • 楠本 哲也(独立行政法人国立病院機構九州医療センター)
  • 江崎 泰斗(九州がんセンター)
  • 石塚 賢治(福岡大学)
  • 辻 晃仁(神戸市立医療センター中央市民病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
109,410,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
増殖因子HB-EGFは卵巣癌、胃癌等において強く発現し、癌細胞の増殖や悪性化に深く関わっている分子である。BK-UMはCRM197を有効成分とする癌治療薬であり、HB-EGFに結合し、HB-EGFの増殖因子活性を阻害する作用がある。これまでに、進行・再発卵巣癌を対象としたBK-UMの第1相臨床試験を医師主導治験として福岡大学で実施し完了している。第1相臨床試験では、開発の障害となる有害事象は認められず、一部の症例で腫瘍マーカーの減少や腫瘍の縮小が認められ、今後の開発が期待されている。本研究の目的は、HB-EGFの発現が高く、現在有効な治療法がない腹腔内転移を来した胃癌を対象にBK-UMの第2相試験を実施し、その有効性を調べることである。そこで今年度は、第2相試験を実施するにあたり必要な非臨床試験、臨床試験実施計画書の作成、PMDAとの薬事戦略相談、治験実施予定施設での治験実施体制の整備を実施した。
研究方法
研究方法は各分担研究者の報告書に記載の方法にて実施した。
(倫理面への配慮)
 動物実験に関しては「動物の保護および管理に関する法律」(昭和48年法律第105号)および「実験動物の飼育及び保管に関する基準」(昭和55年総理府公示第6号)の法律および基準の他、「大学等における実験動物について」(文部科学省国際学術局長通知、文学情第141号)の通知を踏まえつつ、動物実験が有効かつ適切に行われるよう配慮して実施した。遺伝子組み換え実験においては「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(平成15年法律第97号)を遵守して実施した。今後の治験実施にあたっては、ヘルシンキ宣言の精神に基づき、薬事法及び「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」ならびに関連通知を遵守して実施する。
結果と考察
研究結果
(非臨床試験、臨床研究)
(1)胃がんでのHB-EGF発現を今後より詳しく調べるためにに、パラフィン包埋組織でHB-EGFの染色ができる抗体の探索を行い、パラフィン切片を染色できる候補抗体を得た。
(2)雄性動物に対する腹腔内投与による反復投与毒性試験(GLP準拠)を実施した。その結果、すでに実施済みの雌性動物での腹腔内投与による反復投与毒性試験と同程度の毒性が認められ、BK-UMの毒性に雌雄差は認められないことが明らかとなった。
(3)ヌードマウス皮下に接種したヒト胃癌細胞に対するパクリタキセル(静脈内投与)とBK-UM(腹腔内投与)併用薬効試験を実施し、併用投与の有効性を確認した。
(4)ハムスターを用いてパクリタキセル(静脈内投与)とBK-UM(腹腔内投与)併用毒性試験を実施した。その結果、併用による特別な毒性上昇は認められなかった。
(5)ハムスターを用いた生殖発生毒性試験(GLP準拠)を実施するための予備試験に着手した。本試験を実施するためにはBK-UMを全身に暴露する必要があるが、ハムスターでは反復全身投与するための投与経路確保が難しいこと、全身反復投与した場合の毒性試験が未実施であることから、今年度「反復頸静脈内及び皮下投与毒性検討試験」「ハムスターにおける14日間反復頸静脈内投与毒性検討試験」試験を実施し、本試験を実施するに必要なデーターを取得した。

(薬事、行政対応)
(1)PMDAと医薬品戦略相談対面助言を平成26年10月16日に実施した。その結果、計画している臨床試験を実施するために必要な非臨床試験の充足性に関して問題ないとの回答を得た。また、提示した臨床試験デザインに対して、一定の合意が得られた。

(治験実施準備、治験体制の整備)
(1)治験実施計画書の作成
  PMDAとの対面助言をもとに、治験計画のブラッシュアップをはかり、平成25年度に作成した第2相試験のための治験実施計画書を改訂した。
(2)上記と並行して治験薬概要書、同意説明文書の改訂を行った。
(3)予定されている治験実施施設での医師主導治験実施体制の整備(必須文書、手順書の確認等)を行った。

考察
今年度行った非臨床試験、臨床試験実施計画書の作成、PMDAとの薬事戦略相談、治験実施体制の整備によって医師主導治験実施に向けての準備を完了した。今後は臨床試験をできるだけ早期に実施・完了し、BK-UMの実用化を図りたい。
結論
今年度の研究成果に基づき、今年度末からの治験実施準備が整った。予定されている試験はパクリタキセルとBK-UMの併用を単アームの多施設共同非盲検試験として行う。予定症例数は、第1相試験部分が3-12例、第2相試験部分が30例である。本試験を実施することで、BK-UMの胃癌腹膜播種症例に対する有効性を見積もることが可能となり、BK-UMの実用化に向けて大きな前進が見込まれる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201411048Z