進行非小細胞肺癌を対象としたエルロチニブとYM155の分子標的治療薬併用第I相試験

文献情報

文献番号
201411039A
報告書区分
総括
研究課題名
進行非小細胞肺癌を対象としたエルロチニブとYM155の分子標的治療薬併用第I相試験
課題番号
H24-実用化(がん)-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中川 和彦(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鶴谷 純司(近畿大学 医学部 )
  • 清水 俊雄(近畿大学 医学部 )
  • 金田 裕靖(近畿大学 医学部 )
  • 田中 薫(近畿大学 医学部 )
  • 岩朝 勤(近畿大学 医学部 )
  • 西尾 和人(近畿大学 医学部 )
  • 坂井 和子(近畿大学 医学部 )
  • 千葉 康敬(近畿大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
99,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
EGFR陽性進行非小細胞肺癌患者を対象に、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)エルロチニブに併用するサバイビン阻害薬YM155の推奨投与量の設定、及び用量制限毒性(DLT)を明らかにし、推奨投与量における安全性と抗腫瘍効果および効果に関わるバイオマーカーを探索する。
研究方法
分子標的治療薬併用第Ⅰ相臨床試験(医師主導治験)として、進行非小細胞肺癌に対する化学療法を受ける患者を対象にエルロチニブとYM155併用投与の両薬剤推奨投与量の設定、用量制限毒性(DLT)および最大耐用量(MTD)を明らかにし、両分子標的治療薬の推奨投与量における安全性と抗腫瘍効果について検討する。
結果と考察
抗腫瘍効果に関わるバイオマーカー探索研究として、治験薬投与前後(YM155投与前および2サイクル目投与期間中)の腫瘍組織採取(気管支鏡下肺生検もしくは転移病巣からの経皮的腫瘍針生検等)が採取施行可能例には被験者の同意取得のもとに実施されており、抗腫瘍効果に関わるバイオマーカーの探索として1)YM155投与前後における腫瘍組織中のサバイビン蛋白質量の測定(Survivin IHC、Survivin RT-PCR)とアポトーシス誘導の有無を確認、2)肺癌組織の体細胞変異解析にあたり、LungCarta Panel、Ion Ampliseq Panel (NGS:次世代シーケンサー)、Luminex Panel(血漿タンパク質解析)等のマススクリーニングパネルを用いた半網羅的体細胞変異解析を施行した。腫瘍組織中のサバイビン蛋白発現に関しては免疫組織染色(Survivin IHC)においてYM155投与前後において有意にサバイビン蛋白発現が低下する傾向を認めた。血液検体を用いたLuminex Panel(血漿タンパク質解析)においては抗腫瘍効果判定においてNon-PD(Progressive disease)群はPD群と比較してDay7以降のIL-1Ra, IL-2, IL-7,IL-12, IL-13, G-CSF, TNF-αが高値を示す傾向が認められた。効果予測因子となりうる血清バイオマーカーに関してEGFR阻害薬エルロチニブに関しては治療前のHGFおよびVEGF-A高値が、併用薬YM155に関しては治療前のIL-10, IL-12およびVEGF-A高値が予後不良と相関性傾向を示した。臨床的に長いPFSを示した群においては抗アポトーシスケモカイン及びVEGFが低値を示し、抗アポトーシスが弱い腫瘍細胞においては、YM155によるアポトーシス易誘導可能性が示唆された。
結論
今後も適切な症例選択に基づくサバイビン阻害薬によるEGFR阻害薬耐性克服メカニズム可能性に関してバイオマーカーを含めた更なる探索が求められる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201411039B
報告書区分
総合
研究課題名
進行非小細胞肺癌を対象としたエルロチニブとYM155の分子標的治療薬併用第I相試験
課題番号
H24-実用化(がん)-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中川 和彦(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鶴谷 純司(近畿大学 医学部 )
  • 清水 俊雄(近畿大学 医学部 )
  • 金田 裕靖(近畿大学 医学部)
  • 田中 薫(近畿大学 医学部)
  • 岩朝 勤(近畿大学 医学部)
  • 西尾 和人(近畿大学 医学部)
  • 坂井 和子(近畿大学 医学部)
  • 千葉 康敬(近畿大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
EGFR陽性進行非小細胞肺癌患者を対象に、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)エルロチニブに併用するサバイビン阻害薬YM155の推奨投与量の設定、及び用量制限毒性(DLT)を明らかにし、推奨投与量における安全性と抗腫瘍効果および効果に関わるバイオマーカーを探索する。
研究方法
分子標的治療薬併用第Ⅰ相臨床試験(医師主導治験)として、進行非小細胞肺癌に対する化学療法を受ける患者を対象にエルロチニブとYM155併用投与の両薬剤推奨投与量の設定、用量制限毒性(DLT)および最大耐用量(MTD)を明らかにし、両分子標的治療薬の推奨投与量における安全性と抗腫瘍効果について検討する。
結果と考察
現況として当初の治験実施計画規定に基づく第1コホートレベル~第4コホートレベル迄の合計4段階用量漸増計画のうち、同事業完了時点において現在引き続き当施設に於いて残る最終の第4コホートレベルの被験者に対して治験薬を投与中であり、同医師主導治験完遂まで実施予定である。併用第Ⅰ相臨床試験の第3コホートレベル終了時までにおける研究結果として、
(1)安全性に関する評価に関しては第1コホートレベルから第3コホートレベルにおいては用量制限毒性(DLT)発現は全12症例中1症例のみに認められ、治験薬休薬中止にて可逆的に完全回復した。治療との因果関係が否定出来ない毒性に関してNCI CTC-AEグレード3以上の毒性に関してはYM155 第2コホートレベルにおいて1例のみ(下痢:グレード3)を認めたのみであり、最も高頻度の毒性に関しては皮疹、疲労、下痢、尿中β2-ミクログロブリン上昇、尿中NAG上昇)、血清クレアチニン上昇、ヘモグロビン低下、蛋白尿、発熱、低Na血症、味覚異常であり、全般的に忍容性は良好であった。
(2)有効性に関する評価に関しては全12症例中2症例において(それぞれYM155 第1コホートレベルおよび第3コホートレベル)6か月間以上の画像上の病勢安定および腫瘍縮小効果が認められた。
(3)抗腫瘍効果に関わるバイオマーカー探索研究として、治験薬投与前後(YM155投与前および2サイクル目投与期間中)の腫瘍組織採取(気管支鏡下肺生検もしくは転移病巣からの経皮的腫瘍針生検等)が採取施行可能例には被験者の同意取得のもとに実施されており、抗腫瘍効果に関わるバイオマーカーの探索として1)YM155投与前後における腫瘍組織中のサバイビン蛋白質量の測定とアポトーシス誘導の有無を確認、2)肺癌組織の体細胞変異解析にあたり、マススクリーニングパネルを用いた半網羅的体細胞変異解析を施行した。腫瘍組織中のサバイビン蛋白発現に関しては免疫組織染色(においてYM155投与前後において有意にサバイビン蛋白発現が低下する傾向を認めた。血液検体を用いたLuminex Panel(血漿タンパク質解析)においては抗腫瘍効果判定においてNon-PD(Progressive disease)群はPD群と比較してDay7以降のIL-1Ra, IL-2, IL-7,IL-12, IL-13, G-CSF, TNF-αが高値を示す傾向が認められた。効果予測因子となりうる血清バイオマーカーに関してEGFR阻害薬エルロチニブに関しては治療前のHGFおよびVEGF-A高値が、併用薬YM155に関しては治療前のIL-10, IL-12およびVEGF-A高値が予後不良と相関性傾向を示した。
同医師主導治験実施期間中に治験薬供給元であるアステラス製薬株式会社において他の開発品との優先度等を総合的に勘案し製薬企業側の戦略的観点から、治験薬YM155の今後の開発中止が決定された旨の報告を受けた。既に合計3回の外部委員による効果安全性委員会開催が施行されており、また治験薬に関する安全性・有効性以外の製薬企業理由による薬剤開発中止を受けた後における医師主導治験実施継続に関する妥当性に関してPMDA審査マネジメント部・アステラス製薬株式会社より問題はないものとの回答を得ており、当施設倫理委員会にての審議承認を経て、治験実施計画書に準じて予定通り最終コホートレベルである第4コホートレベルにおいて現在も医師主導試験実施中である。治験薬の安定性試験結果に基づいた予定治験薬使用期限である平成27年9月末までに最終コホートレベルである第4コホートレベルを終了完結すべく現在も同内容に関して被験者へ十分なインフォームドコンセントを行ったうえで医師主導治験を実施中である。
結論
今後も適切な症例選択に基づくサバイビン阻害薬によるEGFR阻害薬耐性克服メカニズム可能性に関してバイオマーカーを含めた更なる探索が求められる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201411039C

収支報告書

文献番号
201411039Z