膵癌に対する術後再発予防のための2方向性新規ペプチドワクチン療法の開発

文献情報

文献番号
201411034A
報告書区分
総括
研究課題名
膵癌に対する術後再発予防のための2方向性新規ペプチドワクチン療法の開発
課題番号
H23-実用化(がん)-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山上 裕機(和歌山県立医科大学医学部 外科学第2講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山雄 健次(愛知県がんセンター中央病院 消化器内科部)
  • 真口 宏介(医療法人渓仁会手稲渓仁会病院 消化器内科)
  • 石井 浩(公益財団法人がん研究会有明病院 消化器内科)
  • 宮澤 基樹(和歌山県立医科大学医学部 外科学第2講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
116,370,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
膵癌の術後再発予防において、がんペプチドワクチン療法を世界に先駆けて開発するため、膵癌細胞と腫瘍新生血管増殖因子レセプターに対して免疫応答を惹起する2方向性新規ペプチドワクチン(OCV-C01)を用いた第II相臨床試験を医師主導治験として実施し、その有効性と安全性を探索的に評価することを目的とした。
研究方法
治験薬OCV-C01は1mL中に有効成分としてOTS102[VEGFR-2ペプチド]を2mg、OCV-101[VEGFR-1ペプチド]を2mg、OCV-105[KIF20Aペプチド]3mgを含有する。対象は肉眼的に治癒切除が得られた膵癌患者30例(HLA-A*24:02陽性患者に限る)で、術後補助療法としてOCV-C01とゲムシタビン(GEM)を併用して投与した。OCV-C01は週1回、1mLの皮下投与で、4週を1コースとし、計12コース、GEMは週1回、1000mg/m2の点滴静注で、3週投与、1週休薬の4週を1コースとし、計6コース投与した。主要評価項目は無病生存期間(disease-free survival、DFS)とした。副次評価項目は全生存期間(overall survival、OS)、安全性、免疫学的解析(CTL解析、切除標本におけるKIF20A及びHLA-A発現解析)とした。また、外部比較対照として、同時期に肉眼的に治癒切除が得られた膵癌患者のうち、HLA-A*24:02陰性のため、本治験に登録できない患者を対象として、GEM単独の術後補助化学療法を行う臨床研究を実施した。
結果と考察
【平成23年度(初年度)】:治験実施体制の構築
治験実施体制に関してはGCPに準拠した医師主導治験を行うため、安全性情報、監査、品質管理、モニタリング、データマネジメント、統計解析の業務をContract Research Organization(CRO)に委託した。
【平成24年度(2年目)】:治験開始
全ての治験実施施設において治験審査委員会の承認を受けた上で、平成24年5月17日に治験計画届を提出した。First Patient Inは平成24年7月31日であった。
【平成25年度(3年目)】:症例登録完了
平成25年7月19日に30例の登録を予定通り完了した。同意取得者は63例でうちHLA-A*24:02陽性が33例(52.4%)であったが、3例はスクリーニング検査で他の適格基準を満たさず、登録除外となった。外部比較研究には16例を登録した。
【平成26年度(4年目)】:治験薬最終投与、転帰調査
治験の実施は順調に進み、平成26年6月24日治験薬の最終投与を行った。最終被験者の転帰調査は平成27年1月21日で終了した。平成27年2月に施設及びCRO監査を実施し、平成27年3月31日に治験終了届をPMDAに提出し、受領された。
【結果】
1.治験薬の安全性
治験期間を通じて、治験薬との因果関係が否定できない重篤な有害事象は間質性肺炎とアナフィラキシーであった。いずれも重篤性は入院を要したことであったが、速やかに回復し、退院となった。
2.治験薬の有効性
最終的な統計解析結果を待つ必要があるが、現時点(平成27年5月25日)のFAS解析では、主要評価項目である無病生存期間(DFS)の中央値が15.8カ月と、本治験の外部比較研究として実施したゲムシタビン単独群のデータ:12.0カ月、或は本邦におけるゲムシタビン単独の過去の治験データ:11.4カ月(JSAP-02試験)、11.2カ月(JASPAC-01試験)と比較しても約4カ月延長する非常に有望な結果を得た。
3.免疫学的解析
ペプチド特異的CTL活性をELISPOT assayにて解析した。KIF20A特異的CTL活性が誘導された群(N=15)では非誘導群と比較して有意にDFSが延長した(Log-rank p=0.011)。KIF20A及びHLA-Aの膵癌切除標本における発現について、全例で免疫組織化学染色を行った。HLA-Aは全症例で強発現していたが、KIF20Aの発現は30例中7例(23.3%)の発現に留まった。KIF20A発現はKIF20A特異的CTL活性と有意に相関関係があり(Pearson χ2 test p=0.039)、原発腫瘍においてKIF20Aが発現し、病理学的癌遺残のない手術が実施され、かつプロトコールに準拠した治療が行われた4例では、再発を認めず、非発現群と比較して有意にDFSを延長した(Log-rank p=0.011)。
結論
当初の予定通り切除後膵癌患者に対する新規ペプチドワクチンを用いた医師主導治験を実施した。原発腫瘍に標的抗原のKIF20Aが発現する膵癌切除症例に治験薬を投与することで、抗原特異的CTLが誘導され、術後の再発が予防されることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201411034B
報告書区分
総合
研究課題名
膵癌に対する術後再発予防のための2方向性新規ペプチドワクチン療法の開発
課題番号
H23-実用化(がん)-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山上 裕機(和歌山県立医科大学医学部 外科学第2講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山雄 健次(愛知県がんセンター中央病院 消化器内科部)
  • 真口 宏介(医療法人渓仁会手稲渓仁会病院 消化器内科)
  • 石井 浩(公益財団法人がん研究会有明病院 消化器内科)
  • 宮澤 基樹(和歌山県立医科大学医学部 外科学第2講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
膵癌の術後再発予防において、がんペプチドワクチン療法を世界に先駆けて開発するため、膵癌細胞と腫瘍新生血管増殖因子レセプターに対して免疫応答を惹起する2方向性新規ペプチドワクチン(OCV-C01)を用いた第II相臨床試験を医師主導治験として実施し、その有効性と安全性を探索的に評価することを目的とした。
研究方法
治験薬OCV-C01は1mL中に有効成分としてOTS102[VEGFR-2ペプチド]を2mg、OCV-101[VEGFR-1ペプチド]を2mg、OCV-105[KIF20Aペプチド]3mgを含有する。対象は肉眼的に治癒切除が得られた膵癌患者30例(HLA-A*24:02陽性患者に限る)で、術後補助療法としてOCV-C01とゲムシタビン(GEM)を併用して投与した。OCV-C01は週1回、1mLの皮下投与で、4週を1コースとし、計12コース、GEMは週1回、1000mg/m2の点滴静注で、3週投与、1週休薬の4週を1コースとし、計6コース投与した。主要評価項目は無病生存期間(disease-free survival、DFS)とした。副次評価項目は全生存期間(overall survival、OS)、安全性、免疫学的解析(CTL解析、切除標本におけるKIF20A及びHLA-A発現解析)とした。治験実施体制に関してはGCPに準拠した医師主導治験を行うため、安全性情報、監査、品質管理、モニタリング、データマネジメント、統計解析をCRO(Contract Research Organization)に委託した。症例報告書を電子的に収集し管理するEDC(Electrical Data Capturing)システムも採用した。また、外部比較対照として、同時期に肉眼的に治癒切除が得られた膵癌患者のうち、HLA-A*24:02陰性のため、本治験に登録できない患者を対象として、GEM単独の術後補助化学療法を行う臨床研究を実施した。
結果と考察
1.症例集積、症例検討
平成24年7月31日、第1例目を登録し、平成25年7月19日に予定どおり最終被験者を登録し、平成27年1月21日まで転帰調査を行った。
全症例の治験データのモニタリング、データマネジメントを行い、データを固定後、解析対象集団として最大の解析対象集団(FAS)、治験実施計画書に適合した解析対象集団(PPS)、及び安全性解析対象集団について、全班員で症例検討会を行った。その結果、30例中3例がPPS違反で、FAS、安全性解析対象集団には30例全例が適格であった。
2.治験薬の安全性
治験期間を通じて、治験薬との因果関係が否定できない重篤な有害事象は間質性肺炎とアナフィラキシーであった。いずれも重篤性は入院を要したことであったが、速やかに回復し、退院となった。
3.治験薬の有効性
現時点(平成27年5月25日)のFAS解析では、DFSの中央値が15.8カ月であり、本治験の外部比較研研究として実施したGEM単独群のDFS:12.0カ月、或は本邦におけるゲムシタビン単独の過去の治験のDFS:11.4カ月(JSAP-02試験)、11.2カ月(JASPAC-01試験)と比較して約4カ月延長する非常に有望な結果を得た。免疫学的解析に関して、ペプチド特異的CTL活性をELISPOT assayにて解析した。KIF20A、VEGFR1、VEGFR2特異的CTLの誘導率はそれぞれ、51.7%、58.6%、58.6%であった。KIF20A特異的CTL活性が誘導された群(N=15)では非誘導群と比較して有意にDFSが延長した(Log-rank p=0.011)。一方、KIF20A及びHLA-Aの膵癌切除標本における発現について、全例で免疫組織化学染色を行った結果、HLA-Aは全症例で発現していたが、KIF20Aの発現は30例中7例(23.3%)の発現に留まった。KIF20A発現はKIF20A特異的CTL活性と有意に相関関係があり(Pearson χ2 test p=0.039)、原発腫瘍においてKIF20Aが発現し、病理学的癌遺残のない手術が実施され、かつプロトコールに準拠した治療が行われた4例では、再発を認めず、非発現群と比較して優位にDFSを延長した(Log-rank p=0.011)。
結論
原発腫瘍に標的抗原のKIF20Aが発現する膵癌切除症例にOCV-C01を投与することで、抗原特異的CTLが誘導され、術後の再発が予防されることが示唆された。今回報告した内容は、現在最終統計解析を実施しており、2015年6月中に最終的な結果が得られる予定である。最終的な統計解析結果を踏まえて総括報告書を作成するとともに、最終的な成果を論文化して国際的に発信する。

公開日・更新日

公開日
2015-09-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201411034C

収支報告書

文献番号
201411034Z