がん診療ガイドライン普及促進とその効果に関する研究及び同ガイドライン事業の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201411026A
報告書区分
総括
研究課題名
がん診療ガイドライン普及促進とその効果に関する研究及び同ガイドライン事業の在り方に関する研究
課題番号
H26-がん政策-指定-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
平田 公一(北海道公立大学法人札幌医科大学 医学部・消化器・総合、乳腺・内分泌外科)
研究分担者(所属機関)
  • 今村 将史(札幌医科大学消化器・総合、乳腺・内分泌外科)
  • 今村 正之(関西電力病院)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 岡本 高宏(東京女子医科大学医学部内分泌外科)
  • 沖田 憲司(札幌医科大学消化器・総合、乳腺・内分泌外科)
  • 片渕 秀隆(熊本大学大学院生命科学研究部・産婦人科学分野)
  • 菊田 敦(福島県立医科大学附属病院・小児腫瘍科)
  • 桑野 博行(群馬大学大学院・病態腫瘍制御学講座)
  • 國土 典宏(東京大学医学部医学系研究科・肝胆膵外科)
  • 今野 弘之(浜松医科大学外科学第二講座・消化器外科)
  • 佐伯 俊昭(埼玉医科大学国際医療センター・乳腺腫瘍科)
  • 杉原 健一(東京医科歯科大学)
  • 中村 清吾(昭和大学医学部乳腺外科)
  • 原    勲 (和歌山県立医科大学泌尿器科)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院)
  • 藤原 俊義(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 古川 俊治(慶應義塾大学院法務研究科)
  • 三木 恒治(京都府立医科大学泌尿器科学)
  • 宮崎 勝(千葉大学大学院臓器制御外科学)
  • 山口 幸二(産業医科大学医学部・膵臓病先端治療講座)
  • 山口 俊晴(癌研究会有明病院)
  • 横井 香平(名古屋大学大学院呼吸器外科学)
  • 渡邉 聡明(東京大学大学院腫瘍外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究はがん診療ガイドライン普及の観点から、各提示責任学会においてその普及・浸透の基本的データベースとなる臓器・組織がん登録の推進を図り、データに基づいて医療の質向上を図るための研究を行なうとともに、がん登録の検証体制の整備の為に今、何を成すべきかを抽出することにある。そのことにより、診療動向と治療成績の変化に関する研究を行ない、その公表により本邦におけるがん診療の質向上の実際へ寄与させることを目標とするものである。また、本邦におけるこれらの統括体制の在り方を提案することも目的とした。
研究方法
 本研究は、がん診療に関わる治療法を示したがん診療ガイドラインを公開する学会(研究会を含む)を代表とする方々を研究分担者とした。各専門領域におけるがん種において上記目的の実現を図る目的で具体的なガイドラインを対象とするとともに、データベース体制、診療内容に対する検証論文についても対象とした。
 本研究の具体的な研究課題項目としては、[A]がん診療ガイドライン普及の検証、[B]臓器・組織がん登録状況の課題とその解決策および登録推進、[C]臓器・組織がん診療動向の変化の把握、[D]臓器・組織がん診療ガイドライン推奨医療行為とそのアウトカム向上に関する研究、[E]がん診療ガイドライン事業の在り方に関する研究、の5点とし、これらについて、当該領域の将来構想について総論・各論的に検討していただき、その結果を分担研究別に提示いただくこととした。
結果と考察
 医療の質向上を目指す一貫として、関係学会は専門的・学術的な立場からがん診療ガイドラインを作成・更新には多大な尽力を払っており、その組織体制の整備、学会間の認識の差の解消、成果物の表現の差の解析、などに連携をとってきた。その一層の充実化へと財務的基盤が整うことで、世界に冠たるデータを示すことのできる体制が整いつつある。併せてガイドライン推奨医療行為教育により浸透が図られ、一般医療現場における浸透に伴ない、医療の質向上を目指した意識は共通化している。がん診療ガイドラインの普及により、その後の診療動向の変化やアウトカム変化を正確に研究すべきとの考えは、これまでの研究により明らかな動きとして示されている。
 しかし、現状ではまだ十分に機能しているとは断言できぬ領域も多い。一層の普及と解決を図ることにより、臨床に疫学的科学をもって展開していくことが重要と考えられた。推奨医療行為の検証を合目的に行ない、検証行為を継続的に繰り返し、正しい診療成果分析データを公表し、それに基づいて次の新しい展開提案を築くことが次代へ有用となる。今後は、日本国民に対してはもとより世界へ向けて信頼の高い診療内容さえも分析し、診療効果としての治療成績、すなわちアウトカムの改善効果の有無を検証する研究体制の確立、International Harmonization of Criteria(IHC)に基づいた第三者組織の構築が待たれている。がん診療ガイドラインを提案する学術団体を代表する分担研究者の参加により、以下の討論の充実が図られた。可能な限りの臓器がん登録の推進とその正確さの重要性、全国がん登録データを基礎とした信頼性の高いがん診療情報のデータベースの構築と学術的評価体制の確立について、その確実な展開を牽引することを今後の研究の第一歩とすべきであろうとの一致を得た。
結論
 本年度の研究では、がん診療のデータベースとしていくつかの領域でNCDとの連携を強化しつつ分析しようとする現状が報告された。しかし、その進展度やNCDへの依頼程度などは領域ごとに格差があった。また小児領域や皮膚癌などNCD登録を考慮していない領域でのデータベース構築の在り方、悉皆性やデータの正確性という意味における非手術症例の拾い上げの在り方など、多くの問題も指摘された。また、「がん登録等の推進に関する法律」の研究上での取り扱いの在り方は非常に重要な課題であることも確認された。診療動向の変化に関しては、多くの領域でQuality Indicatorを用いたパイロットスタディが行われていた。その方法論としては、新たに調査を行う方法とNCDから抽出する方法が報告されたが、新たに調査を行うにあたっては、その労力の大きさと調査対象機関が限定されることが課題として指摘された。一方NCDからの抽出では、調査項目が限定される、などの問題が指摘され、適切な調査方法に関しては更なる検討が必要であることが確認された。 
 今後はがん登録とNCDにおいて、「がん登録等の推進に関する法律」との連携のあり方、膨大なデータをがん診療ガイドライン推奨内容・評価に反映させる方法論およびシステム構築に関する検討が必要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201411026C

収支報告書

文献番号
201411026Z