文献情報
文献番号
201411024A
報告書区分
総括
研究課題名
がん対策における進捗管理指標の策定と計測システムの確立に関する研究
課題番号
H25-がん臨床-指定-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
若尾 文彦(独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
研究分担者(所属機関)
- 東 尚弘(独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
- 高山 智子(独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
- 宮田裕章(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター医療品質評価学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
13,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国のがん対策は、がん対策推進基本計画(平成24年6月)により、様々な施策が実行されてきたが、施策が成果をあげてその目標が達成されているのかはわかっておらず、早急の指標設定と、その測定体制の構築が必要である。本研究はがん対策を評価するための指標の設定とともに計測システムの確立を目的とする。
研究方法
策定された指標を測定するために以下のデータ源を用いて、計測を実施した。
1. 患者体験調査、2.がん診療連携拠点病院の現況報告、3.院内がん登録(予後調査、DPCとのリンクデータ)、4.各種行政統計、研究班報告書等(国民生活基礎調査、国民健康・栄養調査、労働安全衛生調査、地域保健・健康増進事業報告、市区町村におけるがん検診の実施状況調査、平成23年度肝炎検査受検状況実態把握事業報告書、厚生労働科学研究「未成年者の喫煙・飲酒状況に関する実態調査」、厚生労働科学研究「肝炎ウイルス感染状況・長期経過と予後調査及び治療導入対策に関する研究」、厚生労働科学研究 「本邦における HTLV1感染及び関連疾患の実態調査と総合対策」、厚生労働科学研究「市区町村におけるがん検診チェックリストの使用に関する実態調査」、「厚生省健康危機管理基本方針」 に基づく健康危機情報についての調査、二次医療圏のがん相談支援センターの設置状況に関する調査)
1. 患者体験調査、2.がん診療連携拠点病院の現況報告、3.院内がん登録(予後調査、DPCとのリンクデータ)、4.各種行政統計、研究班報告書等(国民生活基礎調査、国民健康・栄養調査、労働安全衛生調査、地域保健・健康増進事業報告、市区町村におけるがん検診の実施状況調査、平成23年度肝炎検査受検状況実態把握事業報告書、厚生労働科学研究「未成年者の喫煙・飲酒状況に関する実態調査」、厚生労働科学研究「肝炎ウイルス感染状況・長期経過と予後調査及び治療導入対策に関する研究」、厚生労働科学研究 「本邦における HTLV1感染及び関連疾患の実態調査と総合対策」、厚生労働科学研究「市区町村におけるがん検診チェックリストの使用に関する実態調査」、「厚生省健康危機管理基本方針」 に基づく健康危機情報についての調査、二次医療圏のがん相談支援センターの設置状況に関する調査)
結果と考察
患者体験調査について、参加施設総数は134施設で。有効回答は7,404人(回収率53%)であり、そのうち、がん患者の回答は6,729名(86.7%)であった。これらの回答から、各指標に対応して回答が得られているものを分母として算出した。
医療の進歩を実感しているなど、医療に関した質問については、8割以上の回答者が良い方向に回答していた。一方、「がんの様々な相談ができる環境がある」と感じている回答が他に比べて低く(67%)、また家族に介護負担をかけていると感じているものが42% あるのに対して、家族をサポートするサービスがあると思う回答は37% にとどまっていた。また、拠点病院の患者を対象としているにもかかわらず、 がん相談支援センターを「知っている」と答えた回答が 57% にとどまっていることからも、より周知を徹底する必要があると考えられる。
セカンドオピニオンの説明を受けた、との回答は40%にとどまっている。また、「がん告知について研修の実施やマニュアルの整備がある」、「医師以外が必ず同席することになっている」と回答した拠点病院はそれぞれ56%、47%と低かった。
妊孕性温存の処置ができる拠点病院は62%、40歳未満の患者で実際に情報提供を受けた患者の割合は40%と、ともに改善の余地は大きいと考えられる。また、それだけでなく病院側と患者側の乖離についても検討を要する。
チーム医療の基本は適切な人材が適切な業務を行うことである。抗がん剤のミキシングはほぼ薬剤師が行うとの実態が明らかになったものの、転移再発がんに対する化学療法を内科医が担当していると回答した拠点病院は27.4%にとどまった。
ドラッグラグ、デバイスラグ、開発着手ラグなど海外との差が問題視されることが多いが、ドラッグラグについては海外よりも我が国で先に申請された薬物の存在なども手伝って以前より大幅に改善していることが確認された。
小児がんは数が少ないために小児がん拠点病院が指定されているものの、それらの施設への集約化はそれほど進んでいない。また、集約化を進めるのかどうかについても、方針は定かではない。明確な方針を打ち出し、着実に体制の整備を図る必要がある。
社会からの偏見を感じた、という患者が10%存在する。この数値自体は少ないものの問題であると考えられる。
偏見を感じる患者が少なからず存在したということは、その内容について詳細に検討し、一般の教育・啓発を通じて偏見をなくしていくことを目標にして具体的な施策を立てていく必要があると考えられる。
希望者の復職率を算定したところ、休職しても一度は復職したとの回答は84%(指標 C14) であったが、一旦退職したものの後に新規就労を希望している者のうちそれが可能であったのは47%であり、低くとどまっていた。
医療の進歩を実感しているなど、医療に関した質問については、8割以上の回答者が良い方向に回答していた。一方、「がんの様々な相談ができる環境がある」と感じている回答が他に比べて低く(67%)、また家族に介護負担をかけていると感じているものが42% あるのに対して、家族をサポートするサービスがあると思う回答は37% にとどまっていた。また、拠点病院の患者を対象としているにもかかわらず、 がん相談支援センターを「知っている」と答えた回答が 57% にとどまっていることからも、より周知を徹底する必要があると考えられる。
セカンドオピニオンの説明を受けた、との回答は40%にとどまっている。また、「がん告知について研修の実施やマニュアルの整備がある」、「医師以外が必ず同席することになっている」と回答した拠点病院はそれぞれ56%、47%と低かった。
妊孕性温存の処置ができる拠点病院は62%、40歳未満の患者で実際に情報提供を受けた患者の割合は40%と、ともに改善の余地は大きいと考えられる。また、それだけでなく病院側と患者側の乖離についても検討を要する。
チーム医療の基本は適切な人材が適切な業務を行うことである。抗がん剤のミキシングはほぼ薬剤師が行うとの実態が明らかになったものの、転移再発がんに対する化学療法を内科医が担当していると回答した拠点病院は27.4%にとどまった。
ドラッグラグ、デバイスラグ、開発着手ラグなど海外との差が問題視されることが多いが、ドラッグラグについては海外よりも我が国で先に申請された薬物の存在なども手伝って以前より大幅に改善していることが確認された。
小児がんは数が少ないために小児がん拠点病院が指定されているものの、それらの施設への集約化はそれほど進んでいない。また、集約化を進めるのかどうかについても、方針は定かではない。明確な方針を打ち出し、着実に体制の整備を図る必要がある。
社会からの偏見を感じた、という患者が10%存在する。この数値自体は少ないものの問題であると考えられる。
偏見を感じる患者が少なからず存在したということは、その内容について詳細に検討し、一般の教育・啓発を通じて偏見をなくしていくことを目標にして具体的な施策を立てていく必要があると考えられる。
希望者の復職率を算定したところ、休職しても一度は復職したとの回答は84%(指標 C14) であったが、一旦退職したものの後に新規就労を希望している者のうちそれが可能であったのは47%であり、低くとどまっていた。
結論
前年度、策定したがん対策推進基本計画(平成24年6月)の進捗管理指標について、がん診療連携拠点病院を対象に患者体験調査を実施し、134施設7,404人回答を得て、がん対策推進基本計画の第2、第3の全体目標の評価を行うとともに、分野別施策の各指標について測定を実施した。本来は、ベースラインをとった上で、進捗の評価を行うべきものであるが、今回の計測は、初めてのものであり、今回の計測値について、分析するとともに、継続的に計測する体制を整備することが重要であると考える。
公開日・更新日
公開日
2016-05-13
更新日
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