がん対策における緩和ケアの評価に関する研究

文献情報

文献番号
201411022A
報告書区分
総括
研究課題名
がん対策における緩和ケアの評価に関する研究
課題番号
H25-がん臨床-指定-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 雅志(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センターがん医療支援研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 森田 達也 (聖隷三方原病院 緩和支持治療科 )
  • 木澤 義之 (神戸大学大学院医学研究科・先端緩和医療学分野・緩和医療学 )
  • 宮下 光令 (東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野・緩和ケア看護学 )
  • 中澤 葉宇子 (国立がん研究センター がん対策情報センター がん医療支援研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
19,100,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関名称変更 研究代表者:加藤 雅志 所属機関名: 旧)独立行政法人   国立がん研究センター( 平成27年3月31日迄) 新)国立研究開発法人 国立がん研究センター(平成27年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の主な目的は、がん対策推進基本計画(以下、基本計画)で定められた「全てのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上」の達成を目的とする施策による変化について評価することである。具体的には、1)患者・家族・医療者等からみたがん医療現場の変化と、その変化の発現にいたる理由について定性的に明らかにする。2)1)の結果に基づく緩和ケアの変化について、医療者からみた変化を定量的に明らかにする。また、3) 昨年度研究班が開発した緩和ケア施策の目標達成を評価するための15の指標のうち、拠点病院に関する2つの指標について測定することを検討し、拠点病院の緩和ケアの提供体制に関するPDCAサイクルの確保への活用に示唆を得ることである。
研究方法
1) 基本計画策定後の患者や医療者からみた緩和ケアの変化に関する質的研究
本研究デザインは、半構造化インタビューによる質的観察研究である。対象者は理論サンプリングを用いて医師・看護師・薬剤師・MSW・患者・家族等50名を対象とした。インタビュー結果について内容分析を行った。
2) 基本計画策定後の患者・家族・医療者からみた緩和ケアの変化に関する量的研究
本研究デザインは、横断調査と先行研究結果との前後比較調査である。対象者は医師14,000名,看護師9,000名とした。
3) 拠点病院における緩和ケアの評価に関する研究
昨年度開発した緩和ケア施策の目標達成度を評価するための15の指標のうち、拠点病院に関する2指標【専門的緩和ケアサービスの利用状況】【地域多職種カンファレンスの開催状況】について測定を試みた。
結果と考察
1) 基本計画策定後の患者や医療者からみた緩和ケアの変化に関する定性的研究
内容分析の結果、緩和ケアの変化は17カテゴリーにまとめられた。《A.社会全体への緩和ケアの浸透》《B.緩和ケアに関する情報を得る機会の増加》《C.緩和ケアに関する医療従事者の教育機会の増加》《D.医療従事者の緩和ケアに対する認識の変化》《E.患者・家族の緩和ケアに対する認識の変化》《F.緩和替えに関する医療資源・人的資源の増加》《G.都道府県内の緩和ケア提供体制の整備》《H.拠点病院の緩和ケア提供体制に整備》《I.医療従事者の緩和ケアに取り組む姿勢の変化》《J.緩和ケアの専門家が活動する場の確立》《K.医療従事者が提供する緩和ケアの変化》《L.医療従事者のコミュニケーションと意思決定支援の向上》《M.多職種・多診療科によるチーム医療アプローチの充実》《N.緩和ケアチームの利用の増加》《O.患者・家族の相談支援体制の充実》《P.地域連携機能の強化》《Q.緩和ケア利用者への影響》。
2) 基本計画策定前後の医療者からみた緩和ケアの変化に関する定量的研究
 調査の結果、医師4,814名(回答率34%)、看護師3,850名(回答率43%)から回答を得た。2008年と比較して、医療者の緩和ケアに関する知識・困難感は改善し、この3年間での自身の緩和ケアに関する変化を感じている医療者は多かった。特に、緩和ケアは拠点病院の医師・看護師により浸透していた。その要因は、がん拠点病院制度の整備やそれに基づく緩和ケアチーム等の専門家の配置、緩和ケアに関する研修の機会の増加等によるものと考えられた。拠点病院では、専門家サービスの充実については一定の目標が達成されたと考えられる。
一方で、拠点病院と他の施設で比較すると、拠点病院以外では、専門家からの支援が得がたいことが明らかになった。その要因としては、拠点病院の機能や専門家の相談先を知らないことなどが考えられる。また、地域連携について変化を感じている医療者が全体的に少ないことからも、他の領域に比べて地域連携の取り組みが遅れていることが考えられる。今後は、地域単位で専門家サービスへのアクセスを充実することや、地域の特性に適した地域連携を促進するためのシステムの整備が課題である。
3) 拠点病院における緩和ケアの評価に関する研究
 専門的緩和ケアサービスの利用状況は年間新規診療症例数56,655(H25)、緩和ケア外来の年間新規診療症例数21,109(H25)、地域多職種カンファレンスの開催状況は、地域の他施設が参加する多職種連携カンファレンス開催回数1,799(H26)であった。
結論
2008年と比較して、医療者の緩和ケアに関する知識・困難感は改善していた。さらに、この3年間での自身の緩和ケアに関する変化を感じている医療者は多かった。今後は、地域単位で専門家サービスへのアクセスを充実することや、地域の特性に適した地域連携を促進するためのシステムの整備が課題である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201411022B
報告書区分
総合
研究課題名
がん対策における緩和ケアの評価に関する研究
課題番号
H25-がん臨床-指定-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 雅志(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センターがん医療支援研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 森田 達也 (聖隷三方原病院 緩和支持治療科 )
  • 木澤 義之(神戸大学大学院医学研究科・先端緩和医療学分野・緩和医療学 )
  • 宮下 光令(東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野・緩和ケア看護学 )
  • 中澤 葉宇子(国立がん研究センター がん対策情報センター がん医療支援研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
所属機関名称変更 研究代表者:加藤 雅志 所属機関名: 旧)独立行政法人   国立がん研究センター( 平成27年3月31日迄) 新)国立研究開発法人 国立がん研究センター(平成27年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、がん対策推進基本計画(以下、基本計画)で定められた「全てのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上」の達成を目的とする施策による変化について評価することである。具体的には、1)患者や医療者からみたがん医療現場の変化について質的に明らかにする。2)1)の結果に基づく緩和ケアの変化について、医療者からみた変化を量的に明らかにする。3) がん対策における「緩和ケア」の進捗状況を管理するための評価指標を開発する。また。開発した指標と併せて、既存のデータの推移を把握し、緩和ケアの変化を検証する。4) 3)の指標のうち、拠点病院に関する指標の測定を検討し、拠点病院の緩和ケアの提供体制に関するPDCAサイクルの確保への活用に示唆を得る。
研究方法
1) 患者や医療者からみた緩和ケアの変化に関する質的研究
本研究デザインは、半構造化インタビューによる質的観察研究である。対象者は医療者・患者・家族等50名を対象とした。
2) 医療者からみた緩和ケアの変化に関する量的研究
本研究デザインは、横断調査と先行研究結果との前後比較調査である。医師・看護師を対象にアンケート調査を実施した。
3) 緩和ケア施策の進捗管理指標の開発と測定、緩和ケアに関する既存のデータの推移に関する研究
本研究は、修正デルファイ法を用いて指標を開発し、測定を行うとともに、緩和ケアに関する既存データも含めて推移を検証した。
4) 拠点病院における緩和ケアの評価に関する研究
3)で開発した指標のうち、拠点病院に関する指標【専門的緩和ケアサービスの利用状況】【地域多職種カンファレンスの開催状況】について現況報告を用いた測定を試みた。
結果と考察
1) 患者や医療者からみた緩和ケアの変化に関する定性的研究
内容分析により緩和ケアの変化は17カテゴリーにまとめられた。《A.社会全体への緩和ケアの浸透》《B.緩和ケアに関する情報を得る機会の増加》《C.緩和ケアに関する医療従事者の教育機会の増加》《D.医療従事者の緩和ケアに対する認識の変化》《E.患者・家族の緩和ケアに対する認識の変化》《F.緩和替えに関する医療資源・人的資源の増加》《G.都道府県内の緩和ケア提供体制の整備》《H.拠点病院の緩和ケア提供体制に整備》《I.医療従事者の緩和ケアに取り組む姿勢の変化》《J.緩和ケアの専門家が活動する場の確立》《K.医療従事者が提供する緩和ケアの変化》《L.医療従事者のコミュニケーションと意思決定支援の向上》《M.多職種・多診療科によるチーム医療アプローチの充実》《N.緩和ケアチームの利用の増加》《O.患者・家族の相談支援体制の充実》《P.地域連携機能の強化》《Q.緩和ケア利用者への影響》。
2) 医療者からみた緩和ケアの変化に関する定量的研究
 調査の結果、医師4,814名(回答率34%)、看護師3,850名(回答率43%)から回答を得た。2008年と比較して、医療者の緩和ケアに関する知識・困難感は改善し、この3年間での自身の緩和ケアに関する変化を感じている医療者は多かった。特に、緩和ケアは拠点病院の医師・看護師により浸透していた。その要因は、がん拠点病院制度の整備やそれに基づく緩和ケアチーム等の専門家の配置、緩和ケアに関する研修の機会の増加等によるものと考えられた。拠点病院では、専門家サービスの充実については一定の目標が達成されたと考えられる。一方で、拠点病院以外では、専門家からの支援が得がたいことや、地域連携について変化を感じている医療者が少なかった。
3) 緩和ケア施策の進捗管理指標の開発と測定、緩和ケアに関する既存のデータの推移に関する研究
 デルファイ法を用いて48名のパネルメンバーの意見を集約し、11カテゴリー15の指標が設定された。併せて測定を行った。
4) 拠点病院における緩和ケアの評価に関する研究
 専門的緩和ケアサービスの利用状況は年間新規診療症例数56,655(H25)、緩和ケア外来の年間新規診療症例数21,109(H25)、地域多職種カンファレンスの開催状況は、地域の他施設が参加する多職種連携カンファレンス開催回数1,799(H26)であった。
結論
2008年と比較して、医療者の緩和ケアに関する知識・困難感は改善していた。また、この3年間で緩和ケアに関する変化を感じている医療者は多かった。今後は、地域単位で専門家サービスへのアクセスを充実すること、地域の特性に適した地域連携促進のためのシステムの整備が課題である。また、指標の開発によってがん対策の目標達成度を評価することが可能となった。設定された指標が継続的に測定できる体制を整備し、施策への改善に役立てていくことが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201411022C

収支報告書

文献番号
201411022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
21,000,000円
(2)補助金確定額
20,862,000円
差引額 [(1)-(2)]
138,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,276,403円
人件費・謝金 8,493,661円
旅費 29,034円
その他 8,163,344円
間接経費 1,900,000円
合計 20,862,442円

備考

備考
実支出額は20,862,442円ですが、厚労省へ報告する場合千円未満は切り捨てのため補助金確定額は20,862,000円となり、残金138442円のうち138,000円は厚労省へ返納、端数442円は研究者負担としています。

公開日・更新日

公開日
2017-04-10
更新日
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