希少がんの定義と集約化に向けたデータ収集と試行のための研究

文献情報

文献番号
201411021A
報告書区分
総括
研究課題名
希少がんの定義と集約化に向けたデータ収集と試行のための研究
課題番号
H26-がん政策-一般-021
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
東 尚弘(国立がん研究センター がん対策情報センターがん政策科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 川井 章(国立がん研究センター希少がんセンター)
  • 成田 善孝(国立がん研究センター中央病院 脳脊髄腫瘍科)
  • 佐々木 毅(東京大学医学部附属病院・病理部・診断科)
  • 関本 義秀(東京大学生産技術研究所)
  • 中村 文明(東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,930,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、第2期がん対策推進基本計画で記載が盛り込まれた希少がんに関して、その定義と集約化の議論に資するために、現時点でのがん臨床医の意見や、医療の実態、また一般人の考え方を明らかにすることを目的とする。
研究方法
 本年度は各研究分担が担当して主として以下の調査を行った。
1.がん臨床医の意見をあきらかにするためには、がん薬物療法専門医、がん治療認定医、日本癌治療学会会員、病理専門医に対するアンケート調査
2.一般人インターネット調査会社への集約化に関しての意見を問うアンケート調査を行った。
3.医療の実態をあきらかにするためには、院内がん登録とDPCのリンクしたデータベースを利用した軟部肉腫の診療パターンの分析や、薬物の使用状況から見た脳腫瘍の集約化の現状
4.希少がん患者の初回治療を受けた施設への通院距離の分布
結果と考察
1.臨床医の希少がんの定義に関する意見を聞いたところ、がん患者100~200人に一人という回答と1000人に一人という回答が多かった。これはそれぞれ人口10万人あたり年間3~5例、および0.5例発生に相当するが、実際に、様々な頻度のがん種に関して、希少がんと思うか否かを問い、院内がん登録全国データに基づく推定罹患率と関連させたところ、人口10万人あたり3~4例を超えると、希少がんと思う回答者の割合が激減して安定することが判明した。病理医のアンケートでは、10万人あたり5例程度が境界であるとの回答が最多であった。
2.インターネット調査によるアンケートでは、大半の回答者が希少がん診療に都道府県レベルでの格差があると回答し、何らかの集約化が必要であると考えていることが明らかになり、これは内閣府のがん対策に関する調査で集約化が必要と多数が答えたことと一貫していた。診療に関するネットワーク化が達成されて、もし非専門施設でも専門家の指導を受けながら診療が可能な体制が整備されたとしても、専門施設を受診したいという回答が過半数であった。
3.診療パターンについては、同じ組織型の軟部肉腫においても、第一選択の化学療法薬剤などが、婦人科系の肉腫と整形外科系の肉腫で診療パターンが異なることが明らかになった。これは臨床試験のエビデンスが個別に集積されていることも一因と考えられるが、今後、最善の治療方針の検討が必要かもしれない。脳腫瘍についても、使用薬剤の頻度は非常に多くの施設で少数例に対して脳腫瘍治療薬が使われていることが明らかである。集約化のない状況での、今後の検討は必要である。
4.希少がんの患者においても特に集約化をするための体制は無いことから、様々な施設で治療がなされている。そのためか、5大がんの患者と通院距離の分布はほとんど変わらず、大半の患者が自宅から非常に近い施設で受診している一方、非常に遠方に受診する患者は希少がんの方がわずかに多いという実態が明らかになった。
結論
本研究においては、様々な診療実態、医療体制、臨床医の意見が明らかになった。今後公式な場における希少がん診療提供体制の検討において参考となる資料が作成されたと考える。今回の情報収集は特に意見調査において希少がんをひとまとめにして調査を行ったが、希少がんは実際は様々ながん種の集合であり、その予後や頻度などについても大きくばらつきがある。それを反映して調査においても、「ひとまとめでは回答がしづらい」「個別に考えるべきである」との意見も自由記載欄に数多く見られた。施策の大まかな方向性を考える上では、ひとまとめにした意見収集も必要であるが、実際の施策を進めるには、個別の専門領域、がん種におけるより深いデータの収集を行った上で検討する必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201411021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
8,995,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,751,486円
人件費・謝金 1,197,636円
旅費 43,210円
その他 2,933,554円
間接経費 2,070,000円
合計 8,995,886円

備考

備考
自己資金 886円

公開日・更新日

公開日
2015-10-21
更新日
-