文献情報
文献番号
201411019A
報告書区分
総括
研究課題名
胃がん予防のための感染検査と除菌治療を組み込んだ成人および中高生に対するピロリ菌感染対策のガイドライン作成
課題番号
H26-がん政策-一般-019
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 元嗣(北海道大学病院 光学医療診療部)
研究分担者(所属機関)
- 菊地 正悟(愛知医科大学 公衆衛生講座)
- 神谷 茂(杏林大学 感染症学教室)
- 奥田 真珠美(兵庫医科大学 地域医療学)
- 伊藤 秀美(愛知がんセンター研究所)
- 藤森 研司(東北大学 社会医学・医療管理学講座)
- 吉原 正治(広島大学 保健管理センター)
- 井上 和彦(川崎医科大学 総合臨床医学)
- 中島 滋美(滋賀医科大学 消化器・血液内科)
- 間部 克裕(北海道大学 がん予防内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
成人および中高生に対するピロリ菌感染検査と除菌治療を組み込んだ胃がん予防対策を構築して、胃がん撲滅の実現化を推進する。成人、若年者、次世代への予防システムを考えている。
成人:1.さなざまな健診・検診でHp陽性者を拾い上げる。2. 医療機関への受診の勧め。3. 内視鏡検査で胃炎の確診後、感染者に除菌治療を施行。4. 除菌成功後胃癌リスクによって1-3年ごとに画像スクリーニング施行。
若年者:中学高校在学中にHp感染診断と陽性者に除菌治療。
次世代への感染防止:1.Hp陽性の母親は第1子妊娠前または出産直後に除菌。2. 他の世帯員は第1子出生前に検査して陽性なら除菌。
以上の実現のため以下の5項目を研究する。1)胃がんリスク分類の基準値の検討と評価、2)画像を用いた胃がんリスク分類の検討、3)未成年者への除菌治療の具体策作成、4)小児への感染防止策の実施に向けた具体案作成、5)胃癌予防効果の評価。
成人:1.さなざまな健診・検診でHp陽性者を拾い上げる。2. 医療機関への受診の勧め。3. 内視鏡検査で胃炎の確診後、感染者に除菌治療を施行。4. 除菌成功後胃癌リスクによって1-3年ごとに画像スクリーニング施行。
若年者:中学高校在学中にHp感染診断と陽性者に除菌治療。
次世代への感染防止:1.Hp陽性の母親は第1子妊娠前または出産直後に除菌。2. 他の世帯員は第1子出生前に検査して陽性なら除菌。
以上の実現のため以下の5項目を研究する。1)胃がんリスク分類の基準値の検討と評価、2)画像を用いた胃がんリスク分類の検討、3)未成年者への除菌治療の具体策作成、4)小児への感染防止策の実施に向けた具体案作成、5)胃癌予防効果の評価。
研究方法
胃がんリスク分類の基準値の検討と評価では、Hp抗体・PG値の結果と地域がん登録データをレコードリンケージしたデータセットを作成する。これを用いて、胃がんリスク分類の最適な基準値と、胃がん罹患予測精度を計算する。画像を用いた胃がんリスク分類の検討では、X線造影データとHp抗体・PG値を対応させ、X線造影の背景粘膜リスク評価の精度を求める。自動判定装置を用いて検診受診者を対象にリスク分類を行い、この成績を踏まえて企業とタイアップして検診現場に導入する。小児の感染防止策の実施に向けた具体案作成では、自治体(篠山市、福島町)と協力して20-39歳成人、出産見込み世帯の成人にHp検査と陽性者の除菌を勧奨する。この過程で具体的な勧奨方法に関する課題を抽出して、小児への感染防止のガイドラインを完成する。未成年者への除菌治療の具体策作成では、中学生を対象に尿素呼気試験を基準とした尿中抗体の精度を評価する。小児除菌例のデータ分析、学会との共同で未成年者除菌の登録制度を作成して、中高生に適した除菌法と安全性を検討する。自治体から事業運営の情報を入手し、中高校生対策のマニュアルを作成する。企業とタイアップして除菌薬の未成年者の適用拡大を申請する。胃癌予防効果の評価では、厚労省のNDB(認可済)を用いて、除菌治療、胃がんの内視鏡的治療、外科切除、化学療法を指標として、それぞれの実数を集計する。Hp診療の実態を解明して胃がん予防効果を評価する。
結果と考察
Hp除菌による胃がん予防システムを構築して、胃がん撲滅の実現化を推進する。1)胃がんリスク分類の基準値の検討と評価:検診と地域がん登録胃がん罹患データのレコード・リンケージを行うため、がん登録データ使用手続を進めた。リスク分類のA群に含まれる偽A群(Hp感染群)は、病院受診者(1649例)を対象とした血清ペプシノゲン値で真A群78.9%,偽A群89.2%が正しく判別された。2)画像を用いた胃がんリスク分類の検討:X線造影の背景粘膜リスク評価に有用な客観的項目の確定後、自動判定装置によるリスク分類を検診対象に前向き検討した。3)未成年者への除菌治療の具体策作成:10箇所の自治体で、医療従事者、住民、行政を対象の説明会後に本事業を実施した。中高生の感染率は4.3-11.9%で、尿素呼気試験を対照として中高校生における尿中抗体の精度は、741例の検討で偽陰性はなく偽陽性は37%に認めた。中高校生に対する除菌の副作用についてのレジストリーシステムを構築した。4)小児への感染防止策の実施に向けた具体案作成:篠山市、福島町で行政や医師会の協力で本事業を実施した。この実績を基に実施方針や予算の計上を行い、参加の自治体を募る。福島町では、20-39歳の636人を対象とすると150万円、篠山市では5年計画でこの年代と同居家族を除菌するとして初年度500万円が必要となる。5)胃癌予防効果の評価:厚労省のNDB(認可済)を用いて、除菌治療、胃がんの内視鏡治療、外科治療、化学療法の実数集計のため、臨床実態に近い適切な抽出の方法を検討した。
結論
Hp除菌による胃がん予防システムの構築がされ、その実現化は可能なものである。
公開日・更新日
公開日
2015-09-07
更新日
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