若年乳がん患者のサバイバーシップ向上を志向した妊孕性温存に関する心理支援体制の構築

文献情報

文献番号
201411017A
報告書区分
総括
研究課題名
若年乳がん患者のサバイバーシップ向上を志向した妊孕性温存に関する心理支援体制の構築
課題番号
H26-がん政策-一般-017
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 直(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大須賀 穣(東京大学 医学部)
  • 小泉 智恵(独立行政法人国立成育医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,930,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、若年乳がん患者のサバイバーシップにおいて最も重要な課題の一つである妊孕性温存に関する心理支援体制の構築を志向した多施設共同臨床研究である。本研究では、若年乳がん患者のサバイバーシップに重要な将来の妊娠・出産に関して、がん告知時期に妊娠希望に関する夫婦心理教育プログラムを開発する。具体的には多施設合同臨床研究を実施し、実施後1年までの効果の評価を行う。それらを踏まえて、全国のがん患者の妊娠希望に対する心理支援体制を整備する事を目的とする。
研究方法
30歳台の女性がんの罹患率トップである乳がんに焦点を絞り、若年乳がん患者のサバイバーシップ向上に重要な課題である将来の妊娠・出産に関する支援体制構築を目指して、がん告知時期に妊娠希望に関した夫婦心理教育プログラムを開発する。
1年目としては、初発がん患者を対象としてコーピングスキルトレーニングの構造的な短期心理教育的介入(Fawzy, 1994)、がん患者夫婦の関係性の改善のためのカップルセラピー(McLean, 2007)、ストレスコーピングやリラクゼーションを含めた包括的な不妊心理教育プログラム(Domar, 2000)、日本人夫婦を対象とした心理教育プログラム(平木, 2006)を参考に、若年乳がん患者とその配偶者を対象とした「がんと妊娠をめぐるストレスコーピングと夫婦関係の向上を目的とした、構造的な短期心理教育プログラムを開発する。プログラム実施可能な力量のある心理士に研究協力を依頼し、十分なトレーニングを行い、高い一致率を得る。
結果と考察
夫婦心理教育プログラムO!PEACE therapy (Oncofertility!Psycho Education And Couple Enrichment therapy)のプログラムを開発した。O!PEACE therapyとは、若年乳がん患者ががん告知を受けてから実際に治療が開始されるまでの間に全2回(各70分程度)行われる、対面式の夫婦心理療法である。一方、平成26年11月に、NPO法人日本がん・生殖医療研究会(JSFP)が主催する「がん・生殖医療導入に向けた精神的サポート体制構築について検討する」を東京で共催した。本邦において、初めて若年がん患者に対する妊孕性温存など生殖医療に関わる精神的サポートに関する議論が展開された中で、特に、がん・生殖医療での精神的サポートを考えていく上でその困難な患者の意思決定に対する「シェアードディシジョンメイキング」の観点が、大事な考え方の1つとして提起された。さらに平成27年3月には、JSFPの「がんと生殖に関するシンポジウム~がん患者妊孕性支援スキルアップセミナー」(東京)を共催し、看護師や心理士、また遺伝カウンセラーの立場からの若年乳がん患者の妊孕性支援の現状を議論した。
結論
がん・生殖医療に携わる心理士を中心として、O!PEACE therapyのプログラム開発のための会議を重ね、プログラムの内容を詳細に渡って検討し作成した。そして、実際に臨床の場でO!PEACE therapyのプログラムを提供する4名の経験豊富な心理士(臨床心理士でありかつ生殖心理カウンセラー)による、ロールプレイを16セッション施行し、臨床の場での実施に向けて訓練を繰り返した。研修終了時にロールプレイをVTR撮影し、心理士2名によって各心理士が均質に正しく実践しているかVTRを視聴して評定した結果、その一致率は91%であった。以上より、夫婦心理教育プログラムO!PEACE therapyは心理療法の臨床試験として均質な心理療法が行えると判断した。得られた結果をもとに、本研究事業で計画した多施設合同臨床研究を実施する目的で、まずは申請者の所属する施設(聖マリアンナ医科大学病院)の倫理審査に申請し臨床試験としての承認を受けた(承認番号 第2874号)。同時にUMIN登録を施行し、さらに聖マリアンナ医科大学病院内のキックオフを終え、2年目の平成27年6月1日以降臨床試験を開始する予定である。今後は、既に研究協力を打診している東京慈恵会医科大学の産婦人科ならびに乳腺科、亀田総合病院の産婦人科ならびに乳腺科より、各施設における本臨床試験の倫理委員会審査を進める予定である。さらに、平成27年度においてもJSFPと若年がん患者の心理支援に関する心理士を対象としたシンポジウムを共催する予定である。その際に、夫婦心理教育プログラムO!PEACE therapyの進捗状況ならびに途中経過に関する提供を行う。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201411017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
9,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 717,621円
人件費・謝金 763,389円
旅費 2,281,322円
その他 3,192,311円
間接経費 2,070,000円
合計 9,024,643円

備考

備考
当該研究に必要なため購入。超過額分は自己資金 24,643円で補填。

公開日・更新日

公開日
2015-10-21
更新日
-