小児がん経験者に対する長期的支援の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201411011A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がん経験者に対する長期的支援の在り方に関する研究
課題番号
H26-がん政策-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 隆(独立行政法人国立成育医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本 純一郎(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 井口 晶裕(北海道大学病院・小児科学・小児血液腫瘍学)
  • 笹原 洋二(東北大学病院小児科)
  • 荒川 ゆうき(埼玉県立小児医療センター・血液腫瘍科)
  • 松本 公一(独立行政法人 国立成育医療研究センター・小児腫瘍学)
  • 金子 隆(東京都立小児総合医療センター・血液腫瘍科)
  • 後藤 裕明(神奈川県立こども医療センター血液・再生医療科)
  • 高橋 義行(名古屋大学大学院・医学系研究科成長発達医学・小児科学)
  • 堀 浩樹(三重大学医学部付属病院・小児科)
  • 足立 壮一(京都大学医学研究人間健康科学系専攻・血液腫瘍学)
  • 細井 創(京都府立医科大学・大学院医学研究科・小児発達医学)
  • 井上 雅美(大阪府立母子保健総合医療センター血液・腫瘍科)
  • 藤崎 弘之(大阪市立総合医療センター)
  • 小阪 嘉之(兵庫県立こども病院・小児血液腫瘍疾患)
  • 小林 正夫(広島大学大学院医歯薬保健学研究院)
  • 田口 智章(九州大学医学研究院・小児外科)
  • 小原 明(東邦大学医学部)
  • 前田 美穂(日本医科大学小児科小児血液腫瘍学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児がん経験者とその家族の不安や治療による合併症、二次がんなどに対応できる長期フォローアップ体制の確立や社会環境整備のあり方を明確にすることを目的とする。

研究方法
全国15か所の小児がん拠点病院からなる小児がん診療ネットワークの中で、①小児がん経験者や家族の実態調査、②小児がん経験者を長期にフォローし支援する仕組みの検討、③小児がん経験者の長期支援に必要な社会基盤に係る検討、を行った。
結果と考察
①小児がん経験者や家族の実態調査では調査票の作成を完了した。小児がん経験者のうち20歳以上で調査への協力に同意した者を対象として、アンケート調査を行う計画とし、アンケート内容は、以前に実施された類似の調査である「小児がん病院のあり方調査事業」の分析結果を参考とし、調査項目の作成を行った。なお、今回の調査は一回限りのものとせず、継続的に実施することにより小児がん経験者の実態をより正確に把握し、その実態に基づいて支援の方策を立てることが可能になると考えられる。そこで、小児がん拠点病院に設置されている相談支援センターの機能を活用し、医師と相談支援センターが連携して実態調査に取り組む仕組みを計画している。これによって、1)医師と相談支援センターとの間で小児がん経験者の情報共有が可能となる、2)相談支援センターが継続的に小児がん経験者と一対一で対応できる、等の効果も期待できる。
②小児がん経験者を長期にフォローし支援する仕組みの検討では、小児がん拠点病院における教育環境に関する調査を行った。学校・学級の区分の調査では、特別支援学校による教育支援は11施設、公立小中学校による特別支援教室が4施設であった。なお、北海道大学は現在、公立小中学校の特別支援教室であるが、小児がん拠点病院として選定されたことをきっかけに札幌市教育委員会に交渉し、平成27年度から特別支援学校の分校になることが決定したとの報告があった。ベッドサイド授業は、13施設で何らかの形で行われていた。高校教育については、何らかの形で専属の教員が担当している施設は4つに限られており十分な体制ではないことが判明した。公立小中学校の特別支援教室ではそもそも高校教育は対象外であるため制度的に不可能であることも明らかになった。その他、退院前に患者および家族、院内学級教員、前籍校教員、医療関係者等が参加して復学をスムーズにする試み、入院時にも同様の取り組みを行うこと、入院中から医療関係者と教員が話し合う場の定期開催、AYA世代専用居室の設置、自治体への啓発講演会の実施と公立高校生入院患者への訪問学習制度の開始、等先進的な取り組みが行われていることが明らかになった。
③小児がん経験者の長期支援に必要な社会基盤に係る検討については、小児がん経験者が将来、自身の診療記録を確かめたいときにどのような仕組みを考えればよいかについて現行の保険医療の枠組みで実施可能かについて検討した。そのためには、定型的な情報提供書を開発し、電子カルテから容易に作成できるものが望ましいこと、それを診療情報提供書として発行し、小児がん拠点病院に紹介する段階、さらには小児がん拠点病院から小児がん中央機関に再び紹介する仕組みが有効に機能する可能性が提案された。保険診療の中では上記の作業では経費が生じるとともに書類の受け取りのみで診療IDが作成できるか否かという課題はあるものの、うまく機能すれば長期にわたる情報蓄積には好都合な仕組みである。
結論
国の事業として設置された15の小児がん拠点病院における小児がん経験者の実態調査を行う準備を始めた。また、院内学級の教育環境についての実態調査の結果、ベッドサイド授業やIT活用の活発化、関係者による情報共有と復学支援、自治体への交渉による特別支援学校の分校への格上げ等進んだ取り組みも見られたが、高校教育体制の未整備、教員数やスペースの不足など課題も多く浮かび上がった。小児がん経験者を長期のフォローする仕組みとして保険診療の枠内で実施可能な仕組みを提案した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

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公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201411011Z