がんによる生涯医療費の推計と社会的経済的負担に関する研究

文献情報

文献番号
201411008A
報告書区分
総括
研究課題名
がんによる生涯医療費の推計と社会的経済的負担に関する研究
課題番号
H26-がん政策-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
濱島 ちさと(独立行政法人国立がん研究センター がん予防・検診研究センター検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田俊也(国際医療福祉大学)
  • 福田 敬(国立保健医療科学院)
  • 五十嵐 中(東京大学大学院・薬学系研究科)
  • 白岩 健(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
7,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
【研究目的】
高齢化や医療技術の進歩により、がん関連医療費は増加する可能性がある一方で、がん患者のライフサイクル転換は疾病負担にも変化をもたらしている。限られた医療資源を有効に活用しがん対策を推進するには、がん患者の生涯を通じた社会的経済的検討を行う必要がある。がん対策に影響する新たな要因を考慮し、がん患者の生涯医療費を検討し、がん患者のライフサイクル転換に伴う社会的経済的負担を明確化した上で、医療技術の進展に伴うがん対策を医療経済学的観点から検討する。
研究方法
基本プラン
 限られた医療資源配分の最適化を検討するために、長期的な視野に基づくがん医療費を検討し、今後のがん対策への影響を医療経済学的観点から検討する。従来、cost of illness法によるがん医療費が推計されてきたが、この内訳は、直接医療費、がん死亡による損失、がん罹病による損失により構成されていた(下図、「従来型のがん医療費」に相当)。
がん対策基本計画の推進により、がん診療の質向上や科学的根拠に基づくがん検診受診率の向上、禁煙対策の普及により、がん死亡による生産性損失の減少、特に若年者の死亡の回避が改善される可能性がある。しかし、がんサバイバー増加により、がん治療以外の医療費や介護費用の増加、健常時に比べ生産性が低下することや新たな医療費の増加が必要となる(下図、「追加されるがん医療費」)。また、予防対策もがん検診や禁煙対策だけでなく、ワクチンなどの介入による予防対策費の増加を招く可能性がある。本研究では、今後予想される新たな予防対策の導入やがん生存者増加が医療費にもたらす変化を推計する。その結果に基づき、がん患者の生涯医療費を検討し、その社会的経済的負担を明らかにし、診断・治療のみならず、予防対策やがんサバイバーへの支援対策を医療経済学的観点から検討する。
結果と考察
研究結果の概要
1)がんの生涯医療費の推計
がん医療費の算出方法について、文献的検討を行なった。国内研究では診療報酬ベースの医療費算出方法が多かった。諸外国におけるがん医療費(cost of illness)算主方法をも必ずしも標準化されていなかった。がんサバーバーを識別したcost of illnessの算出は行われていなかった。しかし、がんサバイバーの労働市場への影響が指摘されていることから、我が国におけるがん医療費算出方法の開発を検討する。
2)がん検診の費用効果分析
国内で実施されたがん検診の費用効果分析の文献レビューを行った。がん検診の費用効果分析固有の問題点を明らかにした。各種検診戦略の費用対効果評価のモデルケースとして、大腸がん自然史モデルを使った種々の大腸がん検診戦略の費用対効果を評価した結果のレビューを行った。
3)医療資源の活用
 新たながん検診の方法として今後実施され値可能性の高い、胃内視鏡検診についてその供給量を検討した。内視鏡供給には地域格差があり、政令指定都市・中核市での実施可能性は高いが、2次医療圏単位では実施可能性のある地域が限定される。また、胃がん検診の受診率を増加させるためには、さらなる内視鏡件数の増加が必要となる。
結論
研究により得られた成果の今後の活用・提供
サバイバーの増加と労働市場への影響については、米国・北欧を中心として研究がすすみつつあるが、我が国においてはサバイバー関連の医療費に関する研究はほとんどなかった。がん診療に変革をもたらす予防対策や、がんサバイバー増加などの変化を踏まえ、新たな局面におけるがん対策を検討する必要がある。がん患者の生涯医療費を推計し、疾病負担を社会的経済的観点から明らかにした上で、診断・治療のみならず、予防対策やがんサバイバーへの支援対策を医療経済学的観点から検討していく。
がん検診の費用効果分析の必要性が認められながら、その方法が標準化されておらず、政策決定への応用が進んでいない。これまで行われた我が国のがん検診の費用効果分析の問題点が明らかしたことで、次年度以降は標準化された方法を用いて対策型検診として行われているがん検診の費用効果分析を行う予定である。
また、新技術がもたらす医療資源の再配分について、胃内視鏡検診を例に検討することにより、予防対策の効率運用を図るための検討を行った。これらの成果を踏まえ、長期的な観点から、がんの予防・診断・治療における適切な医療資源配分を行うための政策提言に資する検討を進める。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201411008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,908,000円
(2)補助金確定額
12,908,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 464,324円
人件費・謝金 3,126,270円
旅費 2,139,170円
その他 5,078,281円
間接経費 2,100,000円
合計 12,908,045円

備考

備考
自己資金 45円(集計データ量が予定していたよりも多くなった為。)

公開日・更新日

公開日
2015-10-21
更新日
-