HTLV-1キャリアとATL患者の実態把握、リスク評価、相談支援体制整備とATL/HTLV-1感染症克服研究事業の適正な運用に資する研究

文献情報

文献番号
201411006A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1キャリアとATL患者の実態把握、リスク評価、相談支援体制整備とATL/HTLV-1感染症克服研究事業の適正な運用に資する研究
課題番号
H26-がん政策-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学系研究科)
  • 末岡 榮三朗(佐賀大学 医学部)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院 医学薬学研究部 )
  • 森内 浩幸(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 渡邊 清高(帝京大学 医学部)
  • 佐竹 正博(日本赤十字社 中央血液研究所)
  • 塚崎 邦弘(国立がん研究センター 東病院)
  • 岩永 正子(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 飛内 賢正(国立がん研究センター 中央病院)
  • 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院)
  • 石塚 賢治(福岡大学 医学部)
  • 野坂 生郷(熊本大学)
  • 今泉 芳孝(長崎大学 大学院)
  • 戸倉 新樹(浜松医科大学 医学部)
  • 下田 和哉(宮崎大学 医学部)
  • 伊藤 薫樹(岩手医科大学 医学部)
  • 友寄 毅昭(琉球大学 大学院)
  • 渡邉 俊樹(東京大学 大学院)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学 医学部)
  • 岩月 啓氏(岡山大学 大学院)
  • 足立 昭夫(徳島大学 大学院)
  • 金倉 譲(大阪大学 大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 岩永正子 東京慈恵会医科大学(平成26年4月1日~26年11月16日)→ 長崎大学大学院(平成26年11月17日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は3つのグループにより以下の課題につき研究することを目的とする。ATL患者・HTLV-1キャリア相談支援グループでは、キャリア・患者、相談対応する側などのニーズを明らかにし、相談対応システムの実効的な機能に必要な対策を明らかにする。全国実態調査グループでは、先行研究のATLの病型分類見直し、ガイドラインの統合的検討、そして第11次調査を踏まえて、全国調査の継続と適切な診療体制の確立を目指す。総括班グループでは、「HTLV-1関連疾患研究領域」の各研究事業の進捗状況の把握と評価を行い、戦略的かつ総合的な観点から評価して総合的かつ効率的な研究体制の提言を行う。また、「ATL発症リスクの告知の指針」策定を目指し検討を進める。
研究方法
ATL患者・HTLV-1キャリア相談支援グループは、キャリアの実態に関する大規模データを得るためのキャリア自身による自主登録システムの構築を行う。登録を促進するためのインセンティブなどシステム構築の要件につき検討する。また、献血、妊婦検診などおもな感染判明経緯ごとに日赤における相談対応、都道府県母子感染対策協議会などの実態調査を行う。全国実態調査グループは、第11次調査で初診時情報を集積した約1000例の治療内容の解析と予後調査を行う。また、第12次調査としてあらたにATL患者の全国調査を行う体制の検討を行う。院内がん登録、日本血液学会血液疾患登録などのデータベースも活用して前向き調査の体制の構築を試みる。併行してATL患者自身によるindolent ATL登録システムの構築を検討する。総括班グループでは、HTLV-1関連疾患研究事業の各班会議に参加しての評価書の作成、シンポジウムの開催や各種研究会支援を通じて、国内外の研究の現状と課題を整理した年次報告書を作成する。リスク告知の指針検討委員会をHTLV-1関連疾患専門家、遺伝相談、医療倫理の専門家と患者・キャリアの代表で構成し「ATL発症リスク告知の指針」策定を目指して検討する。
結果と考察
HTLV-1キャリアの現状とニーズを大規模に調査することを念頭に置いたHTLV-1キャリア自主登録システム「キャリねっと」を、集計データの登録者への紹介、メールマガジンなど登録促進のためのインセンティブなどを検討した上で構築を行った。現在最終評価中で、間もなく運用開始予定であり重要なデータが得られることが期待される。日赤の調査の結果、献血で判明したキャリアは日赤の相談窓口をほとんど利用しておらず、その動向の分析が必要である。妊婦キャリア対策の面では相談体制の構築が都道府県母子感染対策協議会の重要な役割の一つであることを明確にすることが必要であるとともに、分娩後のフォローの充実のために保健所が重要な役割を果たすと考えられた。これらの相談体制が機能するためには一定の拠点化が必要であると考えられた。
全国実態調査グループでは、第11次ATL全国実態調査へ既登録症例の治療法・予後解析のために、第11次調査で集積したATL約1000例の治療内容と予後を解析する予後調査研究計画書(予後調査票を含む)を作成し、主幹施設の臨床研究倫理審査委員会で2015年1月に承認され調査を開始する。第12次ATL全国実態調査については、院内がん登録と日本血液学会血液疾患患者登録のデータの二次利用のため日本血液学会倫理委員会、国立がん研究センターデータ利用審査委員会と協議を行った。今後これらのがん登録情報をベースとしたWeb登録を導入し、患者自身の登録によるシステムも構築する。
総括班グループでは、第1回日本HTLV-1学会学術集会を共催し、同時期にアジアの研究者を招待し「国際シンポジウム:アジアにおけるHTLV-1感染の現状」を開催し情報交換と議論を行った。また、平成26年9月30日開催「第7回HTLV-1対策推進協議会」に参加し情報交換と議論を行った。関係学会・研究会における発表内容の調査を行うとともに、HTLV-1関連疾患研究事業の評価書の作成を行い、研究代表者にも送付したが、第三者的な立場からのコメントは各事業の適正かつ効率的な運用に資するものと考えられる。研究補助金による研究の領域分布の検討も行い、研究事業の現状の俯瞰と評価を行った。リスク告知の指針検討委員会については、今年度は本研究グループの専門家による情報収集と評価・検討までにとどめ、次年度に検討委員会を組織し議論を開始することとした。
結論
HTLV-1キャリア・ATL患者の現状の大規模調査データをもとに実態を明らかにし、相談支援体制の構築が可能となることが期待される。またHTLV-1関連疾患研究領域の現状の俯瞰的な評価により、本領域の研究を戦略的に推進することが可能となった。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201411006Z