母子感染の実態把握及び検査・治療に関する研究

文献情報

文献番号
201410021A
報告書区分
総括
研究課題名
母子感染の実態把握及び検査・治療に関する研究
課題番号
H25-次世代-指定-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 知行(東京大学大学院 医学部附属病院女性診療科・産科)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 秀人(神戸大学大学院医学系研究科・産婦人科学)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院医学薬学研究部・産婦人科)
  • 鮫島 浩(宮崎大学医学部・産婦人科学)
  • 増崎 英明(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・産婦人科)
  • 金山 尚裕(浜松医科大学産婦人科学)
  • 川名 敬(東京大学医学部附属病院・女性外科)
  • 井上 直樹(岐阜薬科大学 感染制御学研究室)
  • 錫谷 達夫(福島県立医科大学・微生物学)
  • 木村 宏(名古屋大学大学院医学系研究科・ウィルス学)
  • 峰松 俊夫(愛泉会日南病院疾病制御研究所)
  • 森内 浩幸(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染病態免疫学・小児科学)
  • 吉川 哲史(藤田保健衛生大学医学部・小児科学)
  • 岡 明(東京大学医学部附属病院・小児科)
  • 古谷野 伸(旭川医科大学・小児科)
  • 森岡 一朗(神戸大学大学院医学系研究科・小児科学)
  • 小林 廉毅(東京大学大学院医学系研究科・公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
61,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
CMVとトキソプラズマの母子感染についての包括的な医療体制の基盤となる医療技術の開発、特にCMVの感染児尿DNA診断法の確立と妊婦での血清学的なハイリスク診断であるAvidity検査法の有用性の検証と標準的診断薬としての開発、また、母子感染リスク評価法およびフォロー体制の確立を研究の目的とした。
研究方法
(1)新生児CMV診断開発と中央検査体制については、参加企業を決定し、検査法の諸条件の再検討を行い、リスク新生児の前向き試験を開始した。また、新生児CMV診断の相談を受け、検査行う体制を作り、受付を開始した。(2)妊婦診断開発と中央検査体制については、参加企業を決定した。保存検体を用いて検査法の標準化を行い、CMVのAvidity検査開発では、妊娠経過中にIgG陽転が確認された初感染の妊婦血清を用いて、トキソプラズマのAvidity検査開発では、妊娠経過中にIgM陽性が確認された初感染の妊婦血清を用いて、各検査の臨床的有用性等の評価を行うため、前向き研究として、臨床検体収集を開始した。また、研究班としてAvidity検査の相談を受けた症例に対し、検査を行った。(3)感染児レジストリ・治療薬開発・コホート調査については、先天性感染児のレジストリを開始し、また新生児スクリーニング検査で診断されたコホート群の経過を観察した。分担研究者施設で、経口抗ウイルス剤による治療でのウイルス学的および聴覚に関する有効性について解析した。(4)CMVとトキソプラズマの母子感染の国内相談体制については、感染の可能性がある妊婦に情報提供を行なう医師向けの指針を作成し、また、母子感染予防についての一般向けパンフレット原案を作成した。
結果と考察
(1)新生児CMV診断開発と中央検査体制
CMVスクリーニング検査法について、新生児尿採取用濾紙選定の再検討を行い、基材を変更するとともに食品添加物として登録された着色料で着色した濾紙の試作品を完成させた。リスク新生児をスクリーニングし、80検体中6検体(7.5%)でCMV陽性を確認した。この検査結果をもとに、臨床性能試験に用いる液体尿を、親権者の同意をとって採取した。対照群児(母親(IgM陽性等)、胎児(FGR等)、出生児(血小板減少等)があり先天感染が疑われるが非感染例)について、58例を登録した。先天性CMV感染疑い症例に対するDNA診断サービスについて、ウェブベースの依頼で無料の検査を行い、依頼主治医に結果報告するシステムを構築した。
(2)妊婦診断開発と中央検査体制
CMVのAvidity検査については、前向き研究として、妊娠経過中にCMV IgG陽転が確認された初感染の妊婦血清の収集を進めている。妊娠初期IgG陰性は5989例中、1775例( 29.6 % )であり、内1317例が妊娠中IgGフォローの対象となった。また、IgM陽性は、4387例中、387例 (8.8 % )であった。 内Avidity検査を229例に実施、Low Avidityは37例(16.2 %)であった。以上より、妊娠初診の段階で、妊婦の1.4%が妊娠初期あるいは妊娠直前の初感染を起こしていることが推定された。また、トキソプラズマのAvidity検査開発については、保存検体を用い、検査法・検査キットの標準化を実施した。また、前向き研究として、トキソプラズマに対するIgM陽性妊婦を対象に妊婦血清の収集を進めている。妊娠初期IgM検査を1930例に実施し、IgM陽性者52例( 2.7 % )を登録した。内30例にAvidity検査を実施し、Low Avidity は4例 (13.3 %)であった。感染疑い妊婦の中央検査体制として、CMV IgG、IgMともに陽性の858例に対しAvidity検査を行い、Low Avidityは96例( 11.2 % )であった。
(3)感染児レジストリ・治療薬開発・コホート調査
先天性感染児のレジストリは様式、項目などを整理し、先天性感染症事務局(東大病院小児科内) HPに掲示した。また、先天性CMV感染の新生児スクリーニング検査で診断されたコホート群の経過を観察中である。分担研究者施設で、経口抗ウイルス剤による治療のウイルス学的および聴覚に関する有効性について解析した。
(4)CMVとトキソプラズマの母子感染の国内相談体制:
医師のための指針を作成し、国内の全産婦人科医師約17000名に配布した。パンフレット中に相談窓口となる分担研究者の連絡先を記載した。感染予防に向けた妊婦への予防啓発パンフレットを研究班としてまとめ、業者を決定した。

結論
CMVおよびトキソプラズマ母子感染の実態把握及び検査・治療に関する本研究の重要性が再確認された。次年度、さらに研究を継続する必要性が示された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201410021Z