AADC欠損症に対する遺伝子治療の臨床研究

文献情報

文献番号
201410016A
報告書区分
総括
研究課題名
AADC欠損症に対する遺伝子治療の臨床研究
課題番号
H25-次世代-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山形 崇倫(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 村松 慎一(自治医科大学 医学部 )
  • 水上 浩明(自治医科大学 医学部 )
  • 中嶋 剛  (自治医科大学 医学部 )
  • 渡辺 英寿(自治医科大学 医学部 )
  • 竹内 護 (自治医科大学 医学部 )
  • 加藤 光広(山形大学 医学部)
  • 小坂 仁(自治医科大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
55,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究班の目的は、(1) AADC欠損症に対する遺伝子治療臨床研究実施、(2)AADC欠損症の早期診断法の確立と診断・治療ガイドライン作成、(3)他の難治性神経疾患の遺伝子治療法開発、である。治療には神経移行が良好で非病原性のアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターを用いる。 
 AADC欠損症は、dopamineやserotoninの合成低下により、筋緊張低下、oculogyric crisis、ジストニア等を呈し、生涯臥床状態である。台湾でAAV 2型ベクターを用いた遺伝子治療が実施され、運動機能が改善し、臥床状態から立位可能になった患児もある。診断は、髄液中カテコールアミン、セロトニン代謝関連物質の測定によるが、早期診断には簡便な診断法の確立が必要である。
 GLUT1欠損症は、神経系のグルコーストランスポーターGLUT1(SLC2A1遺伝子)欠失により、神経細胞のエネルギー不足から、難治性てんかんや知的障害を来し、ケトン食治療が有効だが効果は限定的で、根本的な治療法の開発が待たれる。
 遺伝子治療法開発により、患者の症状の改善と共に、小児神経疾患に対する治療の確立が期待される。
研究方法
(1)AADC欠損症対する遺伝子治療用ベクターの確認と臨床研究実施体制の確認
 対象は日本人AADC欠損症患者5名。手術、麻酔、術前後の管理、治療効果評価法等を検討した。タカラバイオ社と共同でGMPレベルのベクターを作製し、検証した。
(2)AADC欠損症スクリーニングと診断方法の確立
乾燥ろ紙血を用いたスクリーニング法、酵素活性測定と遺伝子診断方法を検討した。
(3) GLUT1欠損症の遺伝子治療法開発
 SLC2A1発現ベクターを作成し、発現解析、糖取り込み能解析法を開発した。SLC2A1 cDNA挿入した治療用AAVベクターを作製し、GLUT1 KOマウス腹腔内に注入し、脳での発現を確認した。
結果と考察
(1)AADC欠損症対する遺伝子治療用ベクターの確認と臨床研究実施体制の確認
 対象患者5例は全例臥床状態で、髄液中L-dopaと5-HT高値、dopamineとserotoninの代謝産物が低値である。ベクターの両側被殻への注入法を検討。専用カニューレと刺入針の先端位置をX線透過装置で確認する専用インジケーターを製作し、先端位置の可視化に成功した。周術期の管理体制を確認した。ベッドサイドで認知機能を評価するeye trackingシステムを開発した。
 ベクター品質は良好で、ウィルスゲノムコピー数は1.95x1012vector genome/mlと基準以上で、ドパミン定量試験で32nmol/mlと生物学的活性が確認された。マウス脳に注入しDopamine増加を検出、臨床使用が可能な事を確認した。
 GMPレベルのベクターが十分量得られ、実施体制も確認し治療実施可能である。厚生労働省の実施認可が得られ次第実施する。
(2)AADC欠損症スクリーニングと診断方法の確立
 乾燥ろ紙血で、蓄積したl-dopaの代謝産物3-O- methyldopaを質量分析計で測定するスクリーニング法を確認した。AADC欠損症は診断困難で未診断例もあると考えられ、ろ紙血を用いたスクリーニング法開発は重要である。また、患者血清にL-dopa添加し、HPLCでdopamine産生確認する酵素活性測定法を確立。AADC遺伝子の直接シークエンスにより患者遺伝子変異を検出した。
(3)GLUT1欠損症の遺伝子治療法開発
 変異導入したSLC2A1発現ベクターを培養細胞に導入し糖取り込みを解析。wild type、ミスセンス変異、フレームシフト変異の順に糖取り込み能が低下した。免疫組織学的発現検出とともに、解析系を確立した。
 AAV9に、神経細胞特異的synapsin I promoterとSLC2A1-tag(myc/DDK)を挿入したベクターを作製。GLUT1 KO マウスのヘテロ体腹腔内に1.8×1011 vgを投与し、脳での発現を免疫組織学およびRT-PCR法で確認した。このベクターは、末梢や髄腔内投与で神経細胞へ移行する。今後は脳室内投与による治療法を開発する。
 さらに、ライソゾーム病等に対する遺伝子治療法開発も検討中である。
結論
 日本人AADC欠損症患者への遺伝子治療臨床研究実施の準備が出来た。GLUT1欠損症の遺伝子治療用ベクターを作製、マウス腹腔内に投与し、神経細胞で発現を確認した。今後、髄腔内投与による、効率がいい治療法を開発する。他の難治性神経疾患に対する遺伝子治療法も開発していく。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201410016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
70,000,000円
(2)補助金確定額
70,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 28,888,224円
人件費・謝金 4,547,943円
旅費 1,769,578円
その他 19,794,255円
間接経費 15,000,000円
合計 70,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-04-28
更新日
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